賃上げで100人未満の単組が健闘/JAMの19春闘中間総括

2019年5月29日 調査部

[労使]

機械、金属関連の中小労組を多く抱える産別労組のJAM(安河内賢弘会長、約37万人)は24日、都内で中央委員会を開催し、2019年春季生活闘争の中間総括を確認した。100人未満の単組の賃金改善分の獲得額が、全体平均を200円以上上回る結果を引き出しており、「100人未満の単組が特に健闘している」と評価した。

賃金改善分の全体平均は昨年同水準の1,602円

賃金改善獲得額の平均は1,602円で、昨年(1,622円)とほぼ同様の水準となっている。ただ、獲得組合数は昨年の570組合から540組合へ減少した。規模別にみると、300人未満では1,673円、100人未満では1,868円と全体平均を上回っており、中間総括は「100人未満の単組が特に健闘している」と評価している。

また、300人未満と300人以上の単組の賃金改善獲得額を比べると、300人未満が300人以上(1,387円)を上回っており、300人未満が300人以上を上回るのはこれで4年連続だという。

今春闘のJAMの平均賃上げでの要求基準は、賃金構造維持分(平均4,500円)に賃金改善分の6,000円を加えた1万500円以上で、本部によると、100人未満の単組のなかには1万円以上の賃金改善分を獲得したところもあるという。

賃上げ交渉の進捗状況をみると、統一要求日(2月19日)時点の要求報告数の比率(交渉単位組合に対する比率)は42.7%と昨年(38.5%)を上回ったものの、3月末では68.5%と昨年(73.5%)を下回った。回答・妥結の進捗状況は、3月末時点で37.3%、4月末時点で64.0%となっており、昨年(3月末:40.9%、4月末:65.0%)と比べると遅れて推移している。

個別賃金水準開示の単組数は横ばい

JAMでは、賃金の絶対水準の引き上げを図ることによる中小の賃金格差の是正に力を入れており、個別賃金要求への移行を前面に掲げている。個別賃金の取り組みをみると、個別賃金に水準が開示されている単組数は、30歳現行水準で500組合、35歳現行水準で481組合などとなっており、昨年(ぞれぞれ513組合、519組合)からは横ばいとなっている。

平均賃上げについては、要求額の平均が8,381円で妥結額の平均が5,448円。300人未満でみると、要求額が8,176円で妥結額が5,275円、100人未満は要求額が8,071円で妥結額が5,153円となっており、要求額、妥結額ともに規模の大きい単組が高い額となっている。同一単組で昨年と比較すると、100人未満だけが要求額(178円増)、妥結額(87円増)ともに昨年を上回った。また、300人未満の回答額は過去最高となったとしている。

個別賃金回答組合の賃金改善分は平均で2,000円超

個別賃金水準をみると、回答・確定水準の平均は30歳が23万6,766円、35歳が26万7,279円で、JAMがミニマム達成基準として示している「JAM一人前ミニマム基準」(30歳が24万円、35歳が27万円)には届いていない状況になっている。中間総括によると、30歳、35歳ともに、6割弱の単組が同基準に到達していない。一方、ともに到達基準を超えている単組は1割強にとどまるとしている。

個別賃金の現行水準、要求水準、回答・確定水準が揃う単組で賃金改善額の平均を算出すると、30歳が2,220円、35歳が2,136円と2,000円を超えている。

企業内最低賃金(18歳以上対象最賃協定)については、協定額の平均が16万4,519円となり、「JAM一人前ミニマム基準」での18歳の基準額(16万2,000円)を超えた。

全数調査の継続・拡大とデータ開示の推進を

今後の課題について中間総括は、個別賃金の取り組みと格差是正に向けて、「納得性の高い賃金構造をめざし、個別賃金の取り組みを推進することにより、企業内における男女間、雇用形態間、世代間、中途入社との差などを分析した上で、是正につなげる必要がある」と指摘。個別賃金に取り組んでいる単組の賃金改善分の額が平均要求の単組よりも高い額となっている傾向を踏まえ、「地方JAMにおける単組のサポートの推進、組合員賃金全数調査の継続と拡大、水準データの開示の推進をはかる必要がある」としている。

日本経済の「自律的な成長」と「人への投資」という観点での今年の賃上げ結果については「賃金改善について一定の成果はあったものの連合が求めるマクロの要請としての2%からは乖離しており不十分である」と総括。また、「労働者へのマクロの分配については、物価変動を考慮した実質賃金の状況についても確認していく必要がある」などとまとめた。

「2020春闘では物価上昇も議論の俎上に」(安河内会長)

中央委員会で挨拶した安河内会長は、100人未満の単組の健闘について、「繁忙感が変わらず、歴史的な人手不足のなか、それぞれの単組が粘り強く交渉を重ねた結果であり、心から敬意を表したい」と評価する一方、「しかしながら、足下では物価上昇が1%あり、物価上昇分はとれていない。継続的な物価上昇のなかでのその分をとれないということは賃金制度が劣化するということを意味する。2020春闘は物価上昇をしっかりと議論の俎上にのせる必要がある」と強調した。