やりがいは感じつつも処遇面の不満や健康不安が/全労連介護・ヘルパーネット調査

2019年4月26日 調査部

[労使]

介護施設や訪問介護で働く人が、仕事にやりがいを感じながらも、低賃金や仕事の繁忙、健康不安などに悩む実態が、全労連介護・ヘルパーネットが4月22日に発表した「介護労働実態調査」で浮かび上がった。記者会見した全労連副議長の岩橋祐治氏は、「早急な介護労働者の処遇改善と介護制度の見直しが必要」と指摘した。

訪問介護労働者の6割弱が人手不足を感じている

調査結果によると、施設で働く正規介護職の平均賃金は月額22.6万円、非正規介護職の平均時給は1,054円となる。一方、訪問介護労働者は、月額で正規22.3万円、パート12.1万円、登録ヘルパー6.5万円で、今の収入に、「満足している」は23.4%、「満足してない」は51.9%と過半数を占める。

また、訪問介護労働者に人手不足の状況を聞いたところ、「人手不足」(57.5%)と回答した割合が半数以上を占め、2人にひとりが人手不足と感じていることがわかった。人手不足感を雇用形態別に見ると、「正規」(82.7%)、「パート」(58.9%)、「登録」(46.8%)となり、正規の不足感が突出している。人手不足の影響としては、「ヘルパーが高齢化」(50.1%)、「予定外の訪問が入る」(37.6%)、「訪問に追われ他の事務的作業ができない」(27.1%)。人手不足の原因は、「賃金が低い」(52.4%)、「収入が安定しない」(33.2%)、「仕事がきつい」(27.9%)が挙げられている。

施設介護労働者の半数が健康不安を抱える

一方、施設介護労働者に対し、年次有給休暇の取得状況を聞いたところ、「全く取れない」(8.4%)と「1日~5日」(40.8%)をあわせて、施設介護労働者の半数以上が年休取得は5日以下にとどまる。年休取得を夜勤の有無で見ると、5日以下の取得は、「夜勤有」(59.1%)、「夜勤無」(36.9%)となり、夜勤のある施設の方が、年休を取りにくい状況。健康状態についても、「健康に不安」(44.9%)、「病気がち」(5.0%)となり、約半数が健康不安を抱え、体調面では、「肩こり」(53.1%)、「腰痛」(53.1%)、「倦怠感」(31.3%)に悩まされている。

施設介護労働者の3分の2が「辞めたい」と思うことがある

仕事のやりがいについては、施設介護労働者では、「やりがいがある」が65.3%(2013年の前回調査は67.8%)、「そうは思わない」が12.4%(同9.7%)、「わからない」が22.3%(同22.5%)となり、前回調査時よりも、やりがいを感じにくくなっているようだ。さらに、仕事を辞めたいと思うかに対しては、「ときどき」(53.7%)、「いつも」(10.8%)の合計が64.5%(同57.3%)となり、辞めたいと思う割合が3分の2近くを占めた。辞めたい理由は、「仕事がつらい・忙しすぎる・体力が続かない」(55.9%)、「賃金が安い」(39.9%)、「仕事の達成感・やりがいを感じられない」(21.6%)の順だった。

一方、訪問介護労働者には、今の仕事をやっていて「よかった」(82.4%)が圧倒的多数を占めた。働き続けられる介護職場にするために必要なことは、「賃上げ」(62.0%)、「人手不足の解消」(44.5%)が上位。働き方に関する不満は、「勤務と勤務の間の時間が使いにくい」(36.7%)、「収入が不安定で困る」(26.5%)、「移動時間の賃金が保障されていない」(20.4%)などが多い。

なお、組合未加入者に対して、労組の必要性をたずねたところ、施設介護労働者では、「労組は必要」(33.0%)、「必要でない」(4.3%)、「わからない」(62.7%)、訪問介護労働者では、「必要」(24.0%)、「必要でない」(8.1%)、「わからない」(67.9%)となった。施設介護労働者、訪問介護労働者いずれにおいても、「わからない」が3分の2近くを占めており、全労連では「未加入者に対する労組からの働きかけが必要」としている。

調査は、2018年10月1日から2019年1月31日に、① 施設(入所・通所)、居宅介護支援、② 訪問介護で働く労働者を対象に実施(施設介護は2013年以来5年ぶり、訪問介護は2012年以来6年ぶりの調査)。日本医労連などの全労連傘下の組合を通じて調査票を配布。施設介護労働者(3,920人)と訪問介護労働者(1,897人)の回答を集計したもの。