パート組合員の時給引き上げ額が過去最高に/UAゼンセンの3月末までの賃上げ回答状況

2019年4月10日 調査部

[労使]

組合員の半数以上をパートタイマーが占めるUAゼンセン(松浦昭彦会長、178万人)は5日、都内にある本部で会見し、2019年労働条件闘争の4月1日時点での妥結状況を発表した。4年連続で、パートの賃上げ率が正社員を上回っており、時給引き上げ額の単純平均は28.8円と過去最高の水準となった。

正社員のベアなどの賃上げ分の単純平均は1,510円

UAゼンセンでは、交渉を先行して回答を引き出す組合のグループを、早い順番からAグループ(大手組合や中核組合)、Bグループ(Aグループに準じる組合)、Cグループ(中堅・中小の相場牽引役)などと設定。3月末でCグループまでの回答が出揃った。

1日時点での回答集計の結果をみると、正社員の賃金については384組合、パートタイマーの賃金については184組合、契約社員の賃金については51組合で妥結。組合員数でみると、約55%にあたる91万8,000人の組合員の賃金引き上げが決着したことになる。

妥結状況を正社員からみていくと、賃金体系維持が明確な組合(191組合)の賃金引き上げ分(ベアなど)の単純平均は1,510円(0.54%)。前年と回答を比較することが可能で、賃金引き上げ分が明確な組合(183組合)の賃金引き上げ額を前年と比較するとマイナス111円で、率ではマイナス0.05%となっている。

賃金引き上げ分の単純平均を規模別にみると、300人以上が1,705円(0.59%)、300人未満が1,180円(0.45%)で、額、率ともに300人以上の方が高い。比較可能な組合での前年との比較では、300人以上が13円増(プラス0.00%)で、300人未満がマイナス319円(マイナス0.13%)だった。

UAゼンセンによると、制度昇給とベアなどを合わせた賃金全体の引き上げで、妥結額が前年に比べて大きく増加した業種は「スーパーマーケット」「専門店」「フードサービス」「ケータリング」だという。スーパーマーケット(47組合)は賃金全体の引き上げ額が6,581円(2.44%)で、前年差は額がプラス870円、率がプラス0.34%。専門店(14組合)は7,233円(2.76%)で前年差がプラス1,625円(プラス0.58%)。フードサービス(25組合)が7,409円(2.68%)で前年差がプラス738円(プラス0.30%)で、ケータリング(4組合)が6,370円(2.19%)で前年差がプラス885円(プラス0.29%)となっている。

パート時給引き上げ額は、半数以上の組合で前年を上回る

パートタイム組合員の妥結状況をみると、184組合の時間当たり賃金の妥結額(制度昇給、ベアなど込み)の単純平均は28.8円(2.93%)で、妥結額はUAゼンセンが結成された2012年以降で最高の水準を記録した。比較可能な組合(174組合)で前年と比べると、プラス3.9円(プラス0.32%)となっている。また、妥結済み組合の半数を超える107組合で、妥結額が前年を上回った。

パートタイマーと正社員の両方について妥結した128組合のなかで、パートタイマーが正社員を上回る賃上げ率(ベアなど)を獲得した組合は63%にあたる(前年同期は116組合で53%)。UAゼンセンによると、この割合はここ数年で最も高い数字だという。パート時給引き上げを加重平均でみると、額では26.8円、率では2.77%となり、引き上げ率は正社員(2.32%)を0.45ポイント上回った。パートタイマーが正社員を大きく上回る賃上げ率となったのはこれで4年連続だ。

「ふんばった状況にある」(松浦会長)

松浦会長はここまでの妥結状況について、「総じて言うと、正社員はまあ前年並み。パートタイマーは昨年をさらに上回る結果となった」と説明。「物価上昇や人手不足といった賃上げを押し上げるにあたっての前向きな要素もある一方、中国経済の減速懸念や停滞気味の日本経済など不安材料もあり、特に製造大手では少しマイナス基調のマスコミ論調のなかでの交渉となった。そのなかで中小を含めた前半戦の結果をみると、Aグループ、Bグループで前年並みを確保し、ふんばった状況にある」と評価した。松浦会長によると、中小でも前年並みか前年以上の賃上げを獲得した組合が半数を超えており、製造業の中小も必ずしもマイナス基調ではないという。

連合方針にも前面に掲げられた個別賃金の取り組みについては、「まだ、3分の2の組合が、ベアなどの賃金引き上げ分の区別がつかないのが実態であり、こうした組合のほとんどが組合員の賃金水準を把握できていない」「昨年は個別賃金の水準を産別に出せなかったが今年は出せた組合があった一方、その逆の組合もほぼ同じくらいあった」などと現状を説明。今年の状況を総括したうえで、今後の対策を検討していくという。