定年前後の人を採用する意向がある企業は約6割/リクルート

2019年3月29日 調査部

[労使]

リクルートワークス研究所と株式会社リクルート内の組織である「HR研究機構」は3月27日、定年前後(55~64歳)の転職者の採用・受け入れ実態に関するインターネット調査の結果を公表した。55~64歳の人を採用する意向がある企業の採用担当者は約6割。そうした企業では、採用担当者や同僚・上司も「周囲への良い影響」を評価していることがわかった。

採用意向のある企業は周囲に与える影響を評価

調査は、① 中途採用に関与している採用担当者704人 ② 転職者の同僚・上司1,028人 ③ 転職者本人1,075人―を対象に、今年1月下旬に実施した。

まず採用担当者に、定年前後の人に対する今後の採用意向を聞いたところ、全体の約6割(59.8%)が「採用意向がある(とてもそう思う・ややそう思う計)」と回答。「採用意向がない(あまりそう思わない・そう思わない計)」と回答をした人は1割以下(9.7%)にとどまった。採用意向は、企業規模が大きくなるに連れて高まる傾向にある。

今後も「採用意向がある」と回答した人に、定年前後の転職者が会社・事業へもたらす効果について聞いたところ、「周囲のメンバーの負担軽減」が38.1%で最も多く、次いで「新しい知識や物の見方を得られた」(28.3%)、「周囲のメンバーへのスキルアップに繋がっている」(24.8%)、「採用した55~64歳の人が活躍することで同年代への良いプレッシャーになっている」(23.4%)などが高かった。

また、採用意向のある担当者とない担当者で比べると、「職場の雰囲気が良くなった」や「採用した方が相談相手になってくれる」などの項目で両者の差が開いており、採用意向のある担当者は周囲のメンバーへ与える影響を評価していることもうかがえる。

その一方で、採用担当者は採用意向の有無にかかわらず、定年前後の転職者の受け入れに様々な課題を感じていることもわかった。具体的には、「健康状態や体力面に不安がある」、「仕事を覚えるのに時間がかかる」、「これまでの仕事のやり方を改められない」、「目標の設定が難しい」、「仕事を覚えてもすぐに定年を迎えてしまう」などの課題を感じている人の割合が高い。

職場の同僚・上司の受け入れ意向は約3割

次に、定年前後の転職者を受け入れた経験を持つ職場の同僚・上司に今後の受け入れ意向について尋ねたところ、受け入れ意向があるのは31.6%。採用担当者より低くなるものの、受け入れ意向なしの12.9%に比べると高い結果になった。

定年前後の転職者を受け入れたことへの効果については、「人材を確保できた」(46.8%)が一番高く、以下、「新しい知識や物の見方を得られた」(34.2%)、「自分自身、もっと今の仕事で頑張りたいと思うようになった」(20.9%)、「職場の雰囲気が良くなった」(20.6%)の順となっている。

転職者の約6割が転職に「満足」

一方、転職者に対して転職の満足度を聞くと、約6割(59.5%)が「満足」と回答。満足していないのは約1割で、残り3割は「どちらともいえない」としている。さらに、現在の業務(もしくは一番最後の業務)については、約半数(47.8%)が「未経験職種」に転職しているが、そうした人でも約6割(58.2%)が満足している。

こうした結果についてリクルートワークス研究所の大久保幸夫所長は、「転職者が上手く職場になじめている、活躍できている企業では、受け入れるにあたってのノウハウが定着し環境が整っているため、採用に積極的であるという好循環が生まれている」などと指摘している。