初任給引き上げと若年層対象の賃金改善が目立つ/私鉄大手の賃上げ状況

2019年3月29日 調査部

[労使]

私鉄総連(田野辺耕一委員長、11万6,000人)の大手13組合は、3月14日に賃上げ回答を引き出した。回答内容の特徴として、初任給の引き上げを実施するところが多く、若年層の賃金体系改善の流れが目立っている。一方、ベアについての回答は前年と似た状況で、前年実績のある企業でベアゼロ回答となったケースもみられる。

ベースアップは前年実績の確保がハードルに

今春闘で私鉄総連は、統一要求として月例基本給1人平均2.0%(定期昇給相当分)に加え、ベースアップ分として前年を1,600円上回る7,600円の賃金引き上げを求めていた。しかし実際にはベアに関する回答は前年実績確保が一つのハードルとなり、ベアゼロ回答や前年比で金額がマイナスとなったケースもみられる。

具体的なベア回答は、東武鉄道でベア「0.2%程度」(前年と同じ表現・金額では前年から200円マイナスの400円)、近鉄で「300円の賃金引上げ」(前年同)、京阪で「平均300円の賃金改善(前年は「平均500円」)、西鉄で「+1,100円」(前年「+1,000円」)など。東急(前年ベア1,500円)のようにベア回答がなかった(ただし一時金回答は「5.5カ月」と前年の「4.0カ月」から増加)ところもある。

初任給引き上げと賃金体系の見直しが特徴に

初任給の引き上げ(若年層の賃金改善を含む)に関する回答が、大手13組合中過半数の組合で出されている。東京地下鉄で「初任給について2,000円引き上げる」(および「それに伴う賃金表の書き換え」)、京王電鉄で「初任給額の改定ならびに正社員の賃金改善を実施」、京急で「初任基本給の引き上げについて協議する」、阪急で「初任基本給を改定」に加え「若年層への賃金改善(1,200人)・一律3,000円」、阪神で「初任給、全学歴一律3,000円引き上げ」、京阪で「初任給を2,000円引き上げ」などの回答が並ぶ。

また、前年に「高卒初任給4,000円の引き上げ」などの回答があった名鉄では、今年も「高卒初任給2,000円の引き上げ」「大卒(総合職)1,000円の引き上げ」および付随して「若年層および中堅層」の賃金改善が示された。前年に「高卒初任給2,000円引き上げ」を軸とする初任給改定のあった西鉄も、今年さらに「高卒初任給1,000円引き上げ」に加え大学院卒初任給引き上げや高専卒初任給新規設定などを示している。

中小組合の多くも解決に向かう

14日に回答を示された大手組合は、回答内容を機関会議に諮り、20日まですべて解決した。中小・ハイタク組合(統一闘争参加228組合)は25日時点で192組合が解決した模様だ。