正社員の賃上げ回答は昨年水準を維持/UAゼンセンのヤマ場回答

2019年3月15日 調査部

[労使]

繊維、化学、小売・流通や食品などの幅広い産業をカバーするUAゼンセン(松浦昭彦会長)では、14日10時時点で賃上げ回答の第一のヤマ場を終了した。同時点までに、正社員組合員の賃金について115組合が本部の妥結承認を受けた。定期昇給分などの制度昇給にベアや賃金改善分などを合せた賃上げ全体の妥結額は単純平均で6,992円(2.39%)。比較可能な組合で前年同期と比べると14円減で、水準をほぼ維持している。パート時給の一人あたり平均引き上げ率は2.84%で正社員の引き上げ率を4年連続で上回った。

「前年水準を意識して交渉」(木暮書記長)

115組合の賃上げ全体の妥結額単純平均を規模別にみると、300人以上が6,835円(2.33%)、300人未満が7,736円(2.66%)で、300人未満が300人以上を901円上回っている。

ベア・賃金改善分などの「引き上げ分」が明確となっている組合は69あり、この69組合の引き上げ分の単純平均をみると1,977円(0.68%)。規模別にみると、300人以上(64組合)が1,898円(0.65%)、300人未満(5組合)が2,981円(1.05%)で、引き上げ額・率とも300人未満が300人以上を上回る結果となっている。

比較可能な113組合で前年同期と比べると、賃上げ全体の妥結額は14円減(0.01%マイナス)とほぼ前年並み。うち68組合で集計した「引き上げ分」は64円増(0.02%プラス)となっている。

13日夜に本部で会見した木暮弘書記長は同時点までの妥結状況について「(今春闘の回答相場が)下げ気味のところをどうやって食い止めるか、昨日(12日)から本部で指導してきた。先行の金属共闘グループが厳しい交渉だったので、前年水準を意識して交渉し、好調なところは前年を上回れと指導した」と説明。後続グループのヤマ場に向けて「相場を下げ止まりさせ、後続のBグループ以下の労組の交渉につなげていきたい」と述べた。

化学素材大手は1,500円以上の引き上げ回答

個別の組合の妥結内容をみると、製造産業部門の化学素材大手の最終結果は、旭化成グループ労働組合連合会が引き上げ分2,220円(前年差マイナス180円)、全東レ労働組合連合会が同1,500円(同マイナス400円)、帝人労働組合が同2,000円(同100円)、東邦テナックス労働組合が同1,796円(同116円)で、全体でみればほぼ前年並みだった。松井健政策・労働条件局長は「世間相場が厳しいなかで1,500円以上の引き上げ分を確保し、全体平均では2018年の妥結額に及ばなかったものの、下げ幅を食い止め後続につなぐ役割を果たした」と評価した。

化学素材以外では、人手不足を背景に、外食で比較的高い賃上げを獲得する組合が目立った。餃子の王将ユニオンでは、組合の9,500円要求(賃上げ全体の組合員平均)を上回る1万2,677円(4.27%)を会社側が回答。丸亀製麺などを展開するトリドールでは、引き上げ分3,578円(1.47%、賃上げ全体では9,294円)で決着した。木曽路では、引き上げ分2,019円(0.70%、賃上げ全体では6,519円)で妥結した。

パート組合員もいる組合の7割が賃上げ率で正社員を上回る

一方、パートタイム組合員の妥結状況をみると、64組合で妥結しており、定昇などの制度昇給とベアなどをすべて合わせた時給の引き上げ額の単純平均は29.9円(2.97%)。前年と比較できる62組合の単純平均は前年を3.9円(0.29%)上回る。

パートタイマーと正社員の両方について妥結した組合は54組合あるが、正社員を上回る賃上げ率を獲得した組合が7割を超えており、前年同期の割合(55%)から大幅に増加している。組合員一人当たりの平均賃上げ率(加重平均)をパートタイマーと正社員とで比べると、パートの2.84%に対し正社員は2.39%となり、4年連続でパートが正社員を上回った。

ライフ労組は契約社員の子供手当を正社員と同水準に

均等・均衡処遇や働き方の改善にかかる取り組みでは、「契約社員、嘱託社員の子供手当を正社員と同水準(子女一人につき1万5,000円)で新設する」(ライフ労働組合)、「営業時間の短縮を51店舗で実施予定」(上新電機労働組合)、「60歳から65歳への定年延長に向け2019年度から労使協議開始(イズミヤ労働組合)、「育児時短勤務の子の対象を小学校3年生から小学校6年生まで延長」(すかいらーくグループ労連すかいらーく労働組合)、「ハラスメントの申し出に対応する管理者教育を計画」(マックスバリュ東海MYユニオン)、悪質クレーム対策として「未然防止、初動対応、継続対応全ての面で、被害に遭った従業員を守ることを基本として、本社が十分なサポートを行う」(ベスト電器労働組合)などの合意があった。