オークマ、NTNなどで昨年を上回る賃金改善分を獲得/JAMのヤマ場回答

2019年3月15日 調査部

[労使]

金属・機械関連の労組を束ねるJAM(安河内賢弘会長)の先行グループ組合では、13日午前10時までにオークマ、NTNなどが昨年を上回る賃金改善分を獲得した。回答組合全体でみた賃金改善分の平均回答額は1,707円で、組合員数300人未満(1,774円)の方が高い水準となっている。

マキノは初任給を1万円増

13日の金属労協集中回答日までに回答を引き出す「先行グループ」は、今年はオークマ、島津、アズビル、横河電機、ジーエス・ユアサ、NTN、日本精工、クボタ労連、コマツ、ヤンマー、井関農機の11組合。前年実績を上回る組合と下回る組合が混在する状況となっている。

大手工作機械メーカーのオークマは、組合側は賃金構造維持分6,300円に賃金改善分6,000円を乗せた1万2,300円の賃上げを会社側に要求した。大幅な賃上げを要求したのは「愛知にあるので、賃金水準の現状から自動車関連の他社に人材を奪われがちだった」(安河内会長)ことが背景。要求に対し会社側は、賃金改善分2,438円を含む8,738円(前年比918円増)を回答した。このほか2,000円以上の賃金改善分を獲得したのはアズビルとコマツで、アズビルは賃金改善分2,646円を含む7,084円、コマツは同2,000円を含む8,000円で決着した。

ベアリングメーカーのNTNでは、組合は30歳銘柄で1,200円の賃金改善分を獲得(前年比100円増)。横河電機(賃金改善分1,525円)も前年実績を上回った。一方、島津(1,000円+福利厚生カフェテリアプラン改善原資)、日本精工(35歳銘柄1,200円+住宅手当)、ジーエス・ユアサ(改善分・ベア+諸手当で1,000円)は昨年実績を下回った。井関農機では、組合側は要求していた賃金改善分(要求額7,640円)を獲得できなかったが、製造子会社で非正規社員から正社員に転換した社員の賃金水準を改善することで労使が折り合った。

先行グループ以外では、工作機械メーカーのマキノで、組合側が賃金改善分1,000円に加え、高卒初任給1万円引き上げ(16万5,000円から17万5,000円へ)とそれに伴う賃金カーブ是正原資を獲得した。

4,000円以上の賃金改善を獲得する中小も

JAM全体の12日までの要求・回答集計をみると、1,551ある交渉単位組合のうち、賃金について要求提出を終えているのは974単組(交渉単位組合比62.8%)で、うち116単組(同7.5%)で回答を引き出している。賃金構造維持分を明示しており、かつ賃金改善分を要求している単組のなかで回答を引き出したのは56組合で、賃金改善分の平均は1,707円。300人未満(45単組)の組合だけでみると1,774円、100人未満(24単組)では2,000円を超える2,112円で、ともに全体平均を上回る結果となっている。300人未満では、2,000円以上の賃金改善分を獲得した単組数が15にのぼり、4単組は4,000円以上の賃金改善分を獲得している。

安河内会長によると、「ここ数ヶ月で急激に景気が冷え込んでおり、受注が減ってきていることは間違いない」という。しかしJAM本部では、回答のヤマ場を前に各単組に対して「物価上昇分は1%あるのだから、特に中小はそれを睨んで賃金改善分を取り切るよう指示した」(安河内会長)。決算を控え、大手の受注先から根拠の乏しい値下げ要請も見られることから、取引の適正化など「バリューチェーンにおける付加価値の適正循環」の取り組みを引き続き強化するとしている。