賃金水準は1,000円、高卒初任給は1,500円の引き上げで決着/電機連合中闘組合の回答結果

2019年3月15日 調査部

[労使]

電機連合(野中孝泰委員長)に加盟する大手電機メーカーの賃上げ交渉は13日、開発・設計職基幹労働者(30歳相当)の個別ポイントの賃金水準を1,000円引き上げることで決着した。6年連続の水準引き上げとなったが、引き上げ額は昨年実績の1,500円を下回った。組合側が4,000円の引き上げを迫った高卒初任給は、1,500円の引き上げで労使が合意した。

6年間で累積1万円の水準引き上げ

電機連合では、大手メーカーの13労組で中闘組合を構成し、要求から妥結まで足並みを揃える産別統一闘争のスタイルをとっている。中闘組合は、パナソニック、日立製作所、富士通、東芝、三菱電機、NEC、シャープ、富士電機、村田製作所、沖電気工業、安川電機、明電舎、パイオニアという顔ぶれだが、パイオニアは経営再建中のため今次闘争では統一闘争に参加しなかった。

中闘組合は事前にスト権を確立。開発・設計職基幹労働者(30歳相当)の個別賃金水準の引き上げについては、回答額が1,000円を下回った場合には闘争行動(無期限の時間外・休日出勤拒否)を決行することを11日に決め、13日の統一回答日に臨んだ。最終的に歯止め基準のとおり、1,000円の水準引き上げで決着した。中闘組合が水準引き上げを獲得したのはこれで6年連続。6年間の累計の引き上げ額は1万円となった。

日立、富士電機などは一時金増加

一時金は12組合のうち、日立製作所、三菱電機、富士電機、沖電気工業の6組合が交渉方式で回答を引き出した。それ以外の組合は業績連動算定方式となっている。交渉組合の回答結果をみると、日立は「6.15カ月+特別加算0.15カ月」(要求6.4カ月)、三菱電機が5.89カ月(同6.43カ月)、富士電機が5.6カ月(同5.9カ月)、沖電気工業が4.6カ月(同5.0カ月)で、三菱電機以外は昨年実績を上回った。

企業内の賃金のミニマム協定である産業別最低賃金(18歳見合い)では4,000円の引き上げを要求していたが、現行の協定額を1,000円引き上げて16万3,000円とすることで各労使が合意した。

現行水準から4,000円引き上げて16万7,500円以上とするよう要求していた高卒初任給については、賃金や産業別最低賃金の引き上げ額を500円上回る1,500円の回答を引き出した。2,000円引き上げを求めていた大卒初任給については1,000円引き上げで妥結した。

「働く者の生活に直結するのは賃金」(野中委員長)

13日、金属労協本部で行われた会見で野中委員長は、「経営側は、過去5年間、連続して賃金水準を改善してきており、昨今の厳しい経営環境を踏まえれば、賃金水準の更なる上積みについては極めて慎重であるべき、また、人への投資の重要性に対する認識に違いはないが、月例賃金などの金銭的処遇の改善にとどまらず各社労使で柔軟に決定すべきだということをずっと繰り返し、交渉は難航した」と交渉の厳しきを振り返ったうえで、賃上げ結果について「月例賃金の水準引き上げの流れを継続できた、組合員の期待に十分応えうる水準である、電機労使として社会的責任を果たしうる回答である、という評価している」とコメント。「人への投資」の方策を賃金以外にも検討すべきとの経営側の主張に対しては「働く者にとって一番生活に直結しているのは賃金だ」と強調し、統一闘争で議論する項目として月例賃金は譲れないとの考えを示した。