賃上げでは日産とマツダが要求満額を獲得/自動車総連の拡大戦術会議登録組合の回答結果

2019年3月15日 調査部

[労使]

自動車総連(髙倉明会長)の拡大戦術会議登録組合は13日、多くの組合が1,000円台の賃金改善分を獲得して決着した。日産とマツダの組合が要求に対する満額を獲得。一時金では長らく組合側が満額を獲得してきたトヨタでは、夏季分だけを妥結するという異例の展開となった。

トヨタは1万700円の原資獲得で決着

金属労協の集中回答日に回答を引き出す拡大戦術会議登録組合は、11の大手メーカー組合と、部品メーカーを代表する1組合の計12組合で構成する。大手メーカー組合は、トヨタ、日産、本田技研、マツダ、三菱自工、スズキ、ダイハツ、SUBARU、いすゞ、日野、ヤマハ発動機で、今年は部品メーカーを代表して日本特殊陶業が登録された。

賃上げ回答結果(平均賃上げ)をみると、トヨタは「賃金引き上げ・人への投資 全組合員一人平均1万2,000円」の組合要求に対し、経営側は「人への投資も含め、全組合員一人平均1万700円」を回答した。トヨタでは昨年交渉から賃金改善分を公表しないことにしたため、今年の正社員組合員の賃金改善分の金額は不明。

日産では、経営側が2年連続となる要求満額の「平均賃金改定原資9,000円」(賃金改善分としては3,000円)を回答。日産出身の髙倉会長は自動車総連の会見のなかで「みんなで頑張ろうという経営側のメッセージもあるのだろう」とのコメントを寄せた。

本田と三菱自工は1,400円のベア・賃金改善

本田技研は「ベースアップ3,000円」の要求に対し、経営側は「ベースアップ1,400円」を回答。ベア額は昨年を300円下回った。マツダは組合の「賃金・処遇改善原資9,000円」の要求に経営側は満額で応えた。トヨタと同様、賃金改善分の額は公表していない。三菱自工は組合側が「賃金改善分3,000円」を要求し、「賃金改善分1,400円」で妥結した。スズキ、ダイハツの軽自動車メーカーは1,500円の賃金改善で決着、スズキは前年マイナス900円、ダイハツは前年同額となった。

一時金をみると、トヨタでは組合側は夏3.7カ月、冬3.0カ月の年間6.7カ月を要求していたが、夏季分を120万円とし、冬季分については別途協議することになった。要求通りの月数を獲得したのは日産(5.7カ月)、本田技研(6.3カ月)、マツダ(5.2カ月)、三菱自工(5.7カ月)、ダイハツ(5.7カ月)、SUBARU(5.6カ月)、いすゞ(5.0カ月+0.1カ月)、日野(5.9カ月)で、スズキは要求より0.2カ月少ない5.9カ月、ヤマハ発動機は0.3カ月少ない6.0カ月、日本特殊陶業は0.1カ月少ない6.6カ月で妥結した。

6組合で当日朝まで交渉が長引く

髙倉会長は先行組合の交渉経過について「厳しい交渉環境を乗り越えるための人への投資及び、職場風土や働く環境、仕事の進め方など、広く働き方にかかわる必要性についての労使共通の理解が一定程度深まった」としながらも、「経営側は中長期の競争力に対する影響や最適な人への投資のあり方をぎりぎりまで見極めるべく、厳しい姿勢を最後まで崩さず、一時金要求に対しても第4四半期の収益環境の悪化やグループ会社との水準の乖離等を背景に強い懸念を示した」と振り返った。先行組合の回答結果については、「年明け以降、交渉環境が日増しに悪化するなか、自ら組み上げた要求根拠の正当性と、深刻な人手不足・産業の大転換を乗り越える組合員の決意をもって回答指定日ぎりぎりまで交渉を追い込んだ結果、各労組にとって最大限の回答を引き出すことができた」と評価した。

拡大戦術会議登録組合の交渉は実質的には回答指定日の前日に決着がつくことが多いが、今年は12組合のうち6組合で前日までに水準が詰まらず、当日の朝まで交渉が長引いた。

2019年総合生活改善の取り組み 【拡大戦術会議登録組合(12組合)】