3年連続でパートの賃上げ要求率が正社員を上回る/UAゼンセンの要求状況

2019年3月8日 調査部

[労使]

パートタイマー組合員が半数以上を占めるUAゼンセン(松浦昭彦会長)は7日、本部で記者会見を開き、4日時点の賃上げ要求状況を公表した。パート組合員の時給引き上げ要求額の単純平均は40円で、引き上げ率にすると4.08%。パート組合員一人平均を表す加重平均の引き上げ率は3.93%で、3年連続で正社員一人平均の引き上げ率(3.28%)を上回った。

時給引き上げ要求額の平均は40.0円

UAゼンセンの組合員数は公表ベースで、1月10日現在で178万8,456人となっており、うち短時間組合員(パートタイマーの組合員)は104万3,600人と半数以上を占めている。4日時点では、パートタイマーについては175組合(組合員47万9,316人)の状況を集約した。

制度昇給やベアなども含めた時給の引き上げ要求の単純平均は40.0円で、引き上げ率は4.08%となっている。組合員一人あたり平均(加重平均)では、引き上げ額が37.8円、率で3.93%となり、引き上げ率は3年連続で正社員の引き上げ率(3.28%)を上回った。

比較可能な165組合について前年と比べると、単純平均では額が0.1円減、率が0.12ポイント減、加重平均では額が0.6円増、率が0.01ポイント減と、全体的にみれば「ほぼ前年並み」(UAゼンセン本部)の状況となっている。

正社員の要求額は300人未満が300人以上を上回る

正社員については、要求を提出した469組合のうち、要求額が確認できる468組合(41万1,320人)について集計したところ、賃金改善やベアだけでなく、制度昇給分も含めた総引き上げ額の単純平均は9,297円で、率にすると3.55%。加重平均では9,219円で、率は3.28%となっている。単純平均の値を規模別にみると、300人以上(252組合)が9,142円、3.33%だったのに対し、300人未満(216組合)が9,477円、3.82%と、額・率とも300人未満が300人以上を上回った。

賃金体系維持分が明確になっている組合(182組合)について、賃金改善やベアなどの「引き上げ分」の単純平均をみると、額は4,164円、率は1.49%。規模別にみると300人以上(132組合)が3,913円、1.40%、300人未満(50組合)が4,826円、1.76%となっており、引き上げ分だけでみても300人未満が300人以上を上回っている状況は変わらない。

前年と比較可能な462組合で、総引き上げ額の単純平均を前年と比べると、額で96円、率で0.05ポイント、前年を上回っており、300人未満だけでみると額では165円増となっている。

84組合がインターバル勤務の導入・改善を要求

賃金以外の労働条件改善項目の要求状況をみると、勤務間インターバルではすでに100組合以上で導入が進んでいるものの、今次闘争でも84組合が制度導入や制度改善要求を行っている(製造産業部門6組合、流通部門68組合、総合サービス部門10組合)。定年制度の改定では、96組合が要求を行っており、このうち82組合(製造産業部門6組合、流通部門70組合、総合サービス部門6組合)が65歳定年を求めている。

均等・均衡処遇の取り組みについては、UAゼンセンは今次闘争では、手当について焦点を当てて「点検・見直し・新設の取り組みを行う」との方針を掲げた。全体で175組合が点検を行い、制度化も含めて何らかの要求を行った組合数は、パートタイマーについては一時金が68、退職金が23、家族手当が20、通勤手当が25、労災付加給付が25組合などとなっている。

このほかの労働条件については、職場のハラスメント対策の取り組みを行っている組合が124にのぼっている。

松浦会長は「中国経済が減速しているからといって、それに(賃上げの)数字が左右されてはいけない。少なくとも物価上昇率は昨年より高く、(賃上げが)昨年を下回ることはあり得ない。昨年を上回るということが組合のとって当然の帰結だ」との考え方を示すとともに、「しっかり前年以上の妥結を求めて交渉していきたい」と強調した。

繊維大手は1%で要求揃う

一方、大手中核労組の正社員組合員の賃上げ要求状況をみると、東洋紡績労働組合など製造産業部門の繊維部会の各組合は、揃って1%の「引き上げ分」の要求となっている。全東レなどの化学部会の組合もほぼ1%で足並みが揃った。流通部門では、セブン&アイ労連イトーヨーカドー労働組合が率にして1.13%、イオンリテールワーカーズユニオンが1.60%で、この2労組の短時間組合員の引き上げ率はイトーヨーカドー労組が4.30%(44.48円)、イオンリテールユニオンが2.68%(25.18円)となっている。

なお、会見の同日、製造産業部門化学部会のMCCユニテックユニオンが妥結第一号の承認を本部から受けた。妥結額は総引き上げ額で1万241円(4.08%、引き上げ分は5,090円・2.03%)となっている。