30歳、35歳ポイントとも、規模が小さい単組ほど高い改善額に/JAMの賃上げ要求状況
2019年3月6日 調査部
金属、機械関連の中小単組を多く抱える産別労組のJAM(安河内賢弘会長)は1日、本部で記者会見を開き、今春闘の賃上げ要求状況を公表した。個別賃金要求に取り組んでいる単組について、現行水準と要求水準の差である改善額の平均をみると、30歳ポイントは7,729円で、35歳ポイントは8,567円。両ポイントともに、規模が小さい組合ほど平均改善額が高くなっており、なかには9,000円以上の改善要求をしている単組も見られる。
個別要求額の平均は30歳が23万8,367円、35歳が26万9,289円
JAMは2月19日を統一要求日に設定していた。2月25日現在で何らかの要求を会社側に提出したのは、1,547ある交渉単組のうちの839単組で、そのうち768単組が賃金に関する要求を行った。
JAMは個別賃金要求の標準労働者として、30歳と35歳の2つのポイントを設定している。両ポイント、または片方のポイントで要求水準を会社側に明示したのは221単組で、昨年同期を12単組上回っている。
30歳ポイントで、現行水準を明示し、かつ要求水準を明示したのは182単組。現行水準の平均は23万638円で、要求水準の平均は23万8,367円となっており、その差である改善額の平均は7,729円となっている。改善額の分布をみると、改善額が9,000円以上となっている単組が40ある。改善額を組合規模別にみると、「1~299人」が8,361円、「300~999人」が6,940円、「1,000人以上」が4,192円で、規模が小さいほど改善額が大きい。
一方、35歳ポイントでみると、現行水準を明示し、かつ要求水準を明示したのは166単組。現行水準の平均は26万722円で、要求水準の平均は26万9,289円となっており、改善額の平均は8,567円となっている。35歳ポイントでは、改善額が9,000円以上となっている単組は39ある。改善額を組合規模別にみると、「1~299人」が9,329円、「300~999人」が7,745円、「1,000人以上」が4,694円で、30歳ポイントと同様、規模が小さいほど改善額が大きくなっている。
平均要求でも中小の改善分が大手を上回る
平均賃金を要求している748単組のうち、賃金構造維持分を明示している単組は584ある。そのうち、賃金改善分を要求しているのは523単組で、改善分の平均は昨年同期(4,878円)とほぼ同水準の4,717円だった。なお、JAMの今春闘方針における平均賃上げ要求基準は昨年と同じ6,000円。改善分の平均を規模別にみると、「3,000人以上」が4,273円、「1,000~2,999円」が4,241円なのに対し、「1~299人」は4,717円で、中小が大手を上回る格好となっている。
「連合方針、自動車総連の取り組みは追い風」(安河内会長)
安河内会長は今年の交渉について、「連合が絶対額にこだわる方針を掲げたことのほか、自動車総連においてサプライヤー労組がメーカー労組を超える賃上げの取り組みを強化していることが追い風になっている点が特徴だ」とし、個別賃金要求では、30歳ポイントでの要求水準について、「JAM一人前ミニマム基準として設定した24万円に近い水準で集約されてきている」と解説した。
中井寛哉書記長は「現行水準からいくら引き上げるかという絶対水準要求の取り組みに、いつかは特化したい」と述べるとともに、30歳ポイントの現行水準の平均で300人未満の組合と1,000人以上の組合で約4万円の差がある現状を指摘したうえで、「これを会社に示して交渉するから納得性がある。(今回の集計では)中小の改善額が大手の2倍となっているが、もし、それぞれが満額を獲得すれば中小と大手との格差が縮まることを意味する」とあらためて個別賃金の取り組みの重要性を強調した。
コマツは6,000円の賃金改善を要求
コマツや島津、NTN、日本精工、井関農機など大手労組の賃上げ要求は2月26日までに出そろった。コマツ労組は賃金改善分6,000円、島津は同分5,323円、井関農機は同分7,640円を求め、NTNは30歳ポイントで6,000円の改善、日本精工は35歳ポイントで4,000円の改善を要求した。