扶養手当の非正規雇用社員への適用と65歳定年制の実現を/JP労組中央委員会

2019年2月20日 調査部

[労使]

単一労組で国内最大の日本郵政グループ労働組合(JP労組、増田光儀委員長、約24万4,000人)は、2月14、15の両日、都内で中央委員会を開き、2019春季生活闘争方針を確認した。JP労組は「働き方改革に関する取り組み」について2018、2019の2年間の春闘で一定の方向性を見い出すこととしており、今春闘では扶養手当の非正規雇用社員への適用や65歳定年制などの18春闘で積み残された課題への対応に注力する構え。また、今春闘では一般職の処遇改善にも力点を置いて実現を目指すほか、正社員と非正規雇用社員の賃金改善についても、連合方針に則って要求を組み立てる。

18春闘で継続課題となった扶養手当と65歳定年制

JP労組は、働き方改革に関する取り組みについて、2018年・2019年の2年間の春闘で一定の方向性を見出すことを確認し、組織内議論を進めて労使交渉に臨んでいる。

18春闘では、5つの手当(扶養・住居・寒冷地・年末年始勤務・遠隔地)と3つの休暇制度(夏期・冬期・病気)について、非正規雇用社員への適用を要求。交渉の結果、年始手当や夏期・冬期休暇等等で非正規雇用社員の処遇の底上げが図られた。その一方で、制度上、転居を伴なう転勤のない働き方である一般職の住居手当の廃止を容認するなど、正社員の手当の部分的な引き下げにも至っている。

扶養手当に関しては、18春闘では会社側が「『経済の好循環の継続に向けた政労使の取組』(2014年12月合意)において、女性が働きやすい制度等への見直しとして、配偶者手当の検討を進めることで一致協力して取り組むとの認識を示していること等を踏まえ、あり方について検討したい」との回答を提示。65歳定年制に関しても、「19春闘において一定の整理が図られるよう取り組む」との回答が示されており、18春闘ではこの2点が継続課題として残された格好だった。

「優先順位を見定めながら着実に前進を図る」(増田委員長)

増田委員長はあいさつで、春闘での処遇改善の基本的な方向性について、「まずはしっかりと現状をおさえておく必要がある」としたうえで、 ① パートナー組合員のなかに、不本意ながら時給制などで働いている人が相当いる ② 法制化に先んじて実現してきた無期雇用化社員の年収水準が、フルタイムで働いても年収300万円を下回っている ③ 正社員割合を増やすために設けた一般職の年収水準が十分ではない ④ 消費税増税が想定されるなかで、すべての働く者の処遇を高めていく必要がある――ことを指摘。それ以外にも「取り組まなければならない課題は多くあり、だからこそ毎年の春闘でそれぞれの優先順位を見定めながら、着実に前進を図っていかなければならない」と述べた。

そして、「その基本は社会的に弱い立場にある仲間の処遇改善を優先する。また、一時的な改善ではなく、持続可能な処遇体系の構築を目指すことだ」と主張し、そうした観点からも「同一労働同一賃金や65歳定年制の実現に取り組んでいく必要がある」と強調した。

客観的合理性が高く持続的な処遇の実現を

そのうえで、「今春闘の大きな柱」として、 ① 18春闘からの継続課題である『扶養手当の非正規雇用社員への適用』の実現 ② 正社員登用の拡大を通じて正社員の数・比率の向上と一般職の処遇改善の実現 ③ 65歳定年制の実現と多様な働き方の実現に向けた制度の拡充――の3点を目指すことに言及したうえで、「全ての働く者にとって客観的合理性が高く、将来にわたって持続的な処遇のあり方を見い出し、その実現を目指していこう」と呼びかけた。

一般職の処遇改善と初任給およびミドル世代の引き上げを意識

2019春季生活闘争の当面の取り組みを見ると、正社員の基本賃金については、「連合方針に則った賃金の改善要求を組み立てる」こととし、交渉に当たっては、「一般職の処遇改善、特に初任給およびミドル世代の引き上げを意識する」考え。さらに、正社員登用者から「非正規雇用社員の時と比べると収入が低下してしまう」といった問題提起が出されていることなども踏まえ、「非正規雇用社員から一般職への登用者の給与引き上げについても意識して要求交渉を展開する」としている。

一時金は昨年水準からの上乗せを

正社員の一時金は、「昨年水準からの上乗せを目指した要求を掲げる」。方針は、「18春闘で4.3カ月との回答を引き出したものの、会社側から『来年度も同様の一時金を支給できる見通しが立つものではない』とのコメントが示されている状況にある」ことを明記したうえで、「できる限りの積み上げを目指す」と記述している。

扶養手当は正社員も含めた再構成の交渉も想定

非正規雇用社員の要求では、扶養手当について「非正規雇用社員に適用されていない現状は不合理との考えから、正社員と同様の適用を要求」することにこだわりつつ、「連合方針に則った月給制契約社員と時給制契約社員の賃金改善要求を組み立てる」。

なお、方針は18春闘での扶養手当の要求に対する会社側の回答として、「配偶者手当の見直しを投げかけられている状況を踏まえると、正社員も対象とする扶養手当の再構成に関する交渉が想定される」ことにも言及したうえで、「トータル的な処遇改善に向けて会社に所要原資の持ち出しを迫っていく」姿勢を打ち出している。

65歳定年制は現行の再雇用賃金をベースにした検討も視野に

一方、65歳定年制の実現に向けた交渉に当たっては、「60歳までのカーブを維持し、さらに積み上げていく方向では、それに要する財源との関係から賃金カーブ全体の引き下げにつながる可能性もあり、その困難性は極めて高いとの認識から、現行高齢再雇用の処遇(賃金)をベースに制度の検討を進める」。現行60歳の定年制を65歳に延長することを視野に入れて、「シニア層が安心して働くことができる職場環境を整備する観点から、多様な働き方が可能となる制度の拡充や長時間労働の是正なども求めていく」としている。