トヨタは全組合員平均で1万2,000円の原資増を要求/自動車各社が要求書提出

2019年2月15日 調査部

[労使]

トヨタ、日産、ホンダなど自動車大手各社の労働組合は13日、今春の賃上げ交渉に向けた要求書を一斉に経営側に提出した。自動車関連の労組を束ねる自動車総連(髙倉明会長)は同日、会見を開き大手各社11労組の要求内容を公表した。平均賃金要求で賃金改善分の金額を表示せずに要求を行ったのはトヨタ労組とマツダ労組の2組合で、トヨタ労組は賃金引き上げ・人への投資としての総額原資として「全組合員一人平均1万2,000円」を会社側に求めた。

賃金改善分前年同額の3,000円の要求が大勢

自動車総連は今春の賃上げ方針から、個別ポイントでの絶対水準要求を最前面に掲げ、産別としての賃金の上げ幅基準を示さないことにした。平均賃金要求については、「賃金カーブ維持分を含めた引き上げ額全体を強く意識」して要求するとした。

大手各社の要求内容をみると、平均賃金要求では、トヨタとマツダの2労組が賃金改善分の金額を単独で示さない方式での要求を行い、トヨタ労組は賃金引き上げ・人への投資としての総額原資として「全組合員一人平均1万2,000円」を要求した。なお、「全組合員」には、期間従業員やパートタイマーの組合員も含まれている。マツダ労組は賃金・処遇改善原資として9,000円を要求した。

この2労組以外の平均賃金要求をみると、表示内容は昨年から変わらず賃金改善分を明示する形となっており、賃金改善分の要求額は金属労協方針に準じた前年と同額の3,000円で足並みが揃った。日産労組が「平均賃金改定原資9,000円(内、賃金改善相当分3,000円を含む)」、本田技研労組が「ベースアップ3,000円」、三菱自工労組が「賃金改善分3,000円(賃金制度維持分は別途確認)」、スズキ労組が「賃金制度維持(昇給制度維持)+賃金改善分3,000円」などとなっている。

個別ポイント要求、トヨタ中堅技能職は38万3,310円

個別ポイント絶対水準要求では、各労組は産別方針に従い、「若手技能職」(30歳・高卒・勤続12年相当)と「中堅技能職」(35歳・高卒・勤続17年相当)の2つのポイントで絶対額要求を行った。主な労組の要求額は、トヨタ労組(要求基礎は38.6歳、勤続17.5年など)が「若手技能職」31万580円、「中堅技能職」38万3,310円、日産労組(同40.9歳、勤続17.4年など)が同じ順で31万6,600円と35万100円、本田技研労組(同42.7歳、勤続20.7年など)が30万1,600円と37万4,450円、三菱自工労組(同39.9歳、勤続15.2年など)が27万1,300円と32万8,700円、SUBARU労組(同37.7歳、16.0年など)が26万3,009円と29万2,007円、日野労組(同33.7歳、勤続12.0年など)が27万3,168円と28万8,628円などとなっている。なお、トヨタは独自に40歳相当の技能職銘柄も設定し、同ポイントで41万7,990円を求めている。これ以外の5労組は具体的な要求額を公表しなかった。

一時金要求、トヨタは増、日産は減

一時金をみると、トヨタは昨年要求を0.1カ月上回る6.6カ月、日産は0.1カ月少ない5.7カ月、本田技研は0.1カ月多い「5.0+1.3カ月」、マツダは0.2カ月少ない5.2カ月、三菱自工は0.2カ月多い5.7カ月などとなっている。6カ月以上の要求を行ったのはトヨタ、本田技研、スズキ(6.1カ月)、いすゞ(5.0+1.0カ月)、ヤマハ発動機(6.3カ月)の5労組。

「先行き不透明感が強まるなかでの交渉に」(髙倉会長)

髙倉会長は「先行き不透明感が強まるなかでの交渉となることが予想されるが、不透明感が強まるほど、取り巻く環境が厳しくなるほど、それらを一致団結して乗り越えていくための組合員のモチベーション向上、人への投資がたいへん重要になる」と話した。

金子晃浩事務局長は、「賃金改善分やベアを含めた賃金原資を勝ち取らないと、目標とすべき賃金水準に到達しない。(産別としての上げ幅要求基準を)言葉にしなくても、従来よりも改善分へのこだわりを意識した交渉になるだろう」とコメント。個別要求を前面に立てた交渉になるにもかかわらず、大手のなかで個別ポイント要求額を公表しない組合があることについては、「単年度で急に(これまでのやり方を)変えることは難しい。今回の方針案を議論し始める時からわかっていたこと」と単組への理解を示した。