3,500円以上を基本とする賃金改善方針を決定/基幹労連の中央委員会

2019年2月8日 調査部

[労使]

鉄鋼、造船重機、非鉄、建設などの労働組合で構成する基幹労連(神田健一委員長、約26万5,000人)は6日、都内で中央委員会を開き、今次労使交渉で賃金改善に取り組む組合の賃金改善分要求額について、3,500円以上を基本とする方針を決めた。加盟組合のうち、総合重工、非鉄総合各社などが賃金改善に向けた交渉に臨む。大手鉄鋼メーカーは2018年交渉で19年も含めた2年分の賃金改善について交渉し、決着しているため、一時金などが中心的取り組みとなる。

鉄鋼総合は決着済み、総合重工と非鉄が要求

基幹労連は、2年サイクルで労働条件改善(AP:アクションプラン)に取り組んでおり、賃金改善については、賃金改善要求を中心に取り組む年と位置づける「総合改善年度」に2年分の統一要求を掲げる形をとっている。

2018年が「総合改善年度」にあたり、「2018年度3,500円、2019年度3,500円以上を基本とする」との方針のもと、加盟組合が賃上げ交渉に臨んだ。ただ、2年サイクルとはいえ、部門や部会でまとまりをもって取り組むことを前提として、単年度ごとに賃金について要求・交渉することも可能としている。基幹労連では「総合改善年度」の翌年を「個別改善年度」と呼んでおり、「個別改善年度」では基本的に、一時金や格差改善を主要な項目として取り組むとしている。

大手では、新日鐵住金などの鉄鋼総合各社は2年分の賃金改善に取り組み、「2018年度1,500円、2019年度1,500円」で決着した。一方、三菱重工などの総合重工各社と、三菱マテリアルなどの非鉄総合各社は、2018年度分だけの交渉を行ったため、今次交渉で2019年度分の賃金改善を要求する。

「昨年の2019回答も見て結果にこだわりを」(神田委員長)

あいさつした神田委員長は、「個別改善年度」にも賃金改善に取り組める方針に見直した背景について「時々の環境や業種・業態の状況を見据え、個別に取り組むことが効果的と判断した場合に、柔軟性も取り入れ部門・部会のまとまりをもって取り組むことも互いに尊重し合うという解を見出したものだ」とあらためて説明。そのうえで、「したがって、今次取り組みで賃金改善に取り組む組合は、AP18春季取り組み方針で確認してきた『3,500円以上を基本とする』方針にもとづくものであることはもとより、すでに2019年度の回答を引き出している組織の状況も見ながら、部門・部会のまとまりを大切にし、結果にこだわった取り組みを求めたい」と強調した。

方針は企業の収益状況について、造船重機について「総合重工6社の2017年度決算については、プラント工事における採算悪化などが影響し、連結ベースで4社が減益となった」とし、通期見通しについては、5社が増益となっているものの、7割程度の利益水準だと説明した。非鉄については、「非鉄総合6社の2017年度決算は、前年同期に比べやや円安水準にあったことやベースメタル(銅、鉛、亜鉛)の国際価格が上昇し、国内建値も前年より高値にあったことなどから、売上高は全社で増収になったものの、期の途中から金属価格が下落したこともあり、経常利益ベースでは増益と減益が相半ばする形」とし、通期見通しの売上高はほぼ横ばいなどと説明した。

取り組みの基本的な考え方では、「『年間一時金』と『格差改善』を主要な取り組みとする。取り組むにあたっては、部門・部会のまとまりをもって、積極的な『人への投資』にむけた取り組みを展開する」とし、「職場全体の活力発揮にむけ、生活の安心・安定や働きがい・やりがいの向上に資する、賃金をはじめとしたトータルとしての魅力ある労働条件を求めていく」と強調した。

一時金は年間5カ月分以上を基本

具体的な要求内容をみると、賃金改善については「賃金改善に取り組む組合は、AP18春季取り組み経過や評価と課題(総括)にもとづき、要求額は2019年度3,500円以上を基本とし、部門・部会でまとまりをもって取り組む」とし、その成果が60歳以降の者にも適切に反映されるよう取り組むとした。

年間一時金については、金属労協の「年間5カ月分以上を基本」とする考え方を踏まえ、要求方式ごとに設定。要求方式を含めた基本的な考え方については、各業種別部会の検討にもとづき取り組みを進める。なお、業種別部会は、鉄鋼総合、総合重工、非鉄総合のほか、普通鋼、特殊鋼、フェロアロイ、二次加工、鉄鋼一般、鉄鋼関連、造船、機器、エンジニアリング、非鉄関連、建設、独立の15部会に分かれている。

一時金要求を組み立てる際の構成要素は「生活を考慮した要素」と「成果を反映した要素」に分けて検討。具体的な要求基準は、金額で要求する方式では、「生活を考慮した要素」を「120万円ないし130万円」、「成果を反映した要素」を世間相場の動向などを踏まえながら「40万円を基本」に設定するとした。「金額+月数」で要求する方式は、「40万円+4カ月」を基本とし、月数要求方式では5カ月を基本とする。業績連動型決定方式の場合は、中期ビジョン(2017年以降、10年を期間とする基本方針)の考え方を踏まえる。

格差改善に取り組む項目としては、月例賃金のほか、退職金、労働時間・休日・休暇、諸割増率、労災通災付加補償を掲げた。

65歳定年に向け、話し合いの場の設置を

2021年度に60歳に到達する者から年金支給開始年齢が65歳になることを踏まえ、2021年度から該当者に適用できる制度の導入を目指し、昨年の交渉では労使検討の場の設置などを会社側に求めた。結果として「多くの組合が話し合いの場を設定」(基幹労連本部)し、現在では、定年延長に向け、「具体的な制度導入を提案されている組合もある」(同)。まだ話し合いの場を設置できていない組合も一部あることから、今年の交渉でも引き続き話し合いの場の設置を積極的に求める。

神田委員長は「高技能長期蓄積型産業である基幹労連に関わる各企業においては、人材の確保・定着、技術・技能の伝承、働く者の意欲、さらには労務費など、そこに関わる様々な課題があることは承知のうえで、AP18春季取り組みの主要項目として取り組んだものだ。個別改善年度として交渉をもたない組織においても、女性や高齢者をはじめ、職場で働くすべての者の活躍が欠かせないとの考え方を再認識し、65歳定年延長という最終到達地点に向けた確実な取り組みをお願いする」と呼びかけた。

要求提出は、2月8日に集中して行うとし、要求提出ゾーンを同日~22日に設定。遅くとも2月末までに要求提出できるよう努める。

方針討議では、特殊鋼部会、普通鋼部会、川崎重工労組、三井金属労連から発言があり、特殊鋼部会と川崎重工労組は19年度の賃金改善要求を3,500円とすると表明した。三井金属労連は「企業の諸施策に懸命に協力・努力してきた組合員からの期待を受け止め、賃金改善の必要性を会社に訴えていきたい」と意気込みを語った。