JR連合、JR総連が前年と同水準の賃上げ要求を決定

2019年2月6日 調査部

[労使]

JRグループの主力労組であるJR連合とJR総連は、それぞれ2月上旬に中央委員会を開き、2019年の春闘方針を決定した。JR連合は、月例賃金総額6,000円以上の引き上げを求め、そのうち3,000円については「純ベア統一要求」とする。一方、JR総連は、定期昇給の確保を前提に「6,000円」を統一ベア要求するとした。ともに要求額は前年と同水準となっている。

JR連合は月例賃金総額6,000円以上、うち純ベア3,000円を統一要求

JR連合(松岡裕次会長、8万3,000人、2018年6月現在)は5日、静岡市で中央委員会を開き、「2019春季生活闘争方針」を決定した。JR東海ユニオン、JR西労組などJR各単組は、「中期労働政策ビジョン」(2014年から18年の運動方針)に基づき、定期昇給相当分(賃金カーブ維持分)の完全実施を求めたうえで、諸手当を含む月例賃金総額6,000円以上の引き上げを要求する。そのうち、純ベア統一要求として3,000円を求めるとしている。

純ベア統一要求以外の諸手当を含む賃金要求項目については、「総合生活改善や格差是正の観点に立って各単組において判断する」としている。また、JR各社労組以外にJR連合が組織する93のグループ会社の単組について、定期昇給制度のある単組はJR各社と同様の月例賃金総額6,000円以上(純ベア統一要求として3,000円を目安)、定期昇給制度がない場合は月例賃金総額の1万500円以上引き上げを目安(うち4,500円を定期昇給相当分、3,000円を目安に純ベア統一要求分)とするとした。

JR連合が毎年実施している賃金実態調査をもとに示した今春闘でベースとなる賃金水準(2018年9月25日現在)は、個別賃金引上げ方式の場合、平均基準内賃金が29万7,500円(35歳、男子・高卒・標準労働者層・回帰値)。平均賃金引上げ方式の場合は、平均基準内賃金が30万3,167円(36.4歳、定昇相当分込み) となっている。

非正規労働者に関しては、時間給について連合が掲げる「誰もが時給1,000円」の実現を目指すとともに、「40円を目安に引き上げを求める」としている。また、「雇用形態間における不合理な待遇差の是正、均等待遇に向けた取り組み」のもと、「昇給ルールの導入・明確化」を進めるなどとしている。

なお、JR連合の基本的な賃金政策については、2019~23年をカバーする「新中期労働政策ビジョン」策定に向けて検討を重ね、今年6月の定期大会で提起するとしている。

日程は、JR各単組の要求提出期限を2月13日とし、グループ労組も可能な限り同月28日に要求書を一斉提出する。JR各社の交渉のヤマ場は、連合が設定する3月11~15日の先行組合回答ゾーンを念頭に置きつつ、JR連合執行委員会で決定する。グループ労組については、連合の3月23~31日の月内決着集中回答ゾーンを念頭に取り組む。

JR総連は統一ベア要求として月額「6,000円」を求める

JR総連(榎本一夫委員長、4万2,000人、2018年6月現在)は1日、都内で定期中央委員会を開催し、2019春季生活闘争方針を決定した。

賃上げ要求は、前年と同様、統一ベア要求としている。JR東労組など定期昇給分(賃金カーブ維持分)の算定が可能な組合は、定昇分を確保し、生活維持・改善分として、6,000円を統一ベア要求する。定期昇給分の算定が困難な組合は、定昇・賃金カーブ維持分を含めて1万500円を要求する。ともに「待遇改善分」は必要に応じ各単組で設定する。

非正規労働者については、前年と同様、JRグループ内外までを視野に入れた組織化を打ち出している。連合方針を踏まえ「誰もが時給1,000円」を目指し、「劣悪な雇用・労働条件の抜本的な改善」に取り組む。有期契約労働者については、「労働契約法第18条の無期転換ルールの適正適用」に向けて、該当する労働者への周知、運用状況の確認を行うとしている。

労働時間については、36協定の適切な締結、順守を軸に取り組む。労働時間面では、① 年間所定労働時間2,000時間を上回る組合をなくす ② 時間外労働を1カ月45時間以下に抑えることを基本とし過労死につながる長時間労働を根絶する ③ 特別条項付36協定の適切な上限設定・適用にあたっての事前労使協議と原則11時間の勤務間インターバル規制の導入――などを掲げている。

あいさつした榎本委員長は、昨年のJR東労組の春闘交渉とその間の組合員大量脱退問題に触れ、「2018年の東労組の方針が十分に総括されていない」と指摘。「要求が前進したのか」「組織は強化されたのか」「次なる運動の展望が開けたのか」などの視点で改めて総括する必要性を強調した。榎本氏によると、現在東労組の組合員は前年の4万7,000人から1万2,000人程度へと減少している。

今春闘の要求提出日は、原則として2月中とし、回答指定日は連合方針を踏まえて、最大のヤマ場を3月13日に設定した。JR各単組が対象となる「第1先行組合回答ゾーン」は、同月11~15日としている。