働き方改革と人員確保、臨時・非常勤の処遇改善を課題に/自治労中央委員会

2019年2月1日 調査部

[労使]

地方自治体の職員などを組織する自治労(川本淳委員長、約78万5,000人)は1月30、31の両日、千葉県市川市で中央委員会を開き、「2019自治労春闘方針」を決めた。方針は、春闘を「1年のたたかいのスタート」と位置づけたうえで、2019春闘の主要課題として、 ① 賃金改善 ② 職場からの働き方改革と人員確保 ③ 臨時・非常勤職員の処遇改善 ④ 安心してくらし続けられる地域づくり――の4点を提示している。川本委員長は、「職場の課題を吸い上げ、課題解決に向けて取り組んでいこう」と訴えた。

春闘の位置付けを「1年のたたかいのスタート」に

地方自治体の職員の賃金改定は、人事院勧告を踏まえた都道府県等に置かれている人事委員会の勧告などをもとに年度後半期に決められる。2018年は8月10日に人事院が官民格差に基づき、月例給655円・0.16%、一時金0.05カ月引き上げる勧告を実施。その後、都道府県・政令市等人事委員会は、9月3日~10月29日の間に順次、勧告・報告を行った。

一方、自治労は「1年のたたかいのスタートは、春闘から」との位置づけを明確にしており、傘下の単組は自治労の方針に基づき春闘期(2~4月)に要求書を当局側に提出する。実際には、春闘時期に交渉が決着しないことが多く、人事院勧告や各団体の人事委員会勧告の内容が明らかになった秋以降、賃金確定闘争で再び要求提出を行い、最終的な回答引き出しに向けて当局側との交渉を追い込むことになる。

「組合員の意見を把握し要求・交渉できなければ強い組織になり得ない」(川本委員長)

2018自治体確定闘争の中間総括によると、2018闘争で要求書を提出した単組は1月17日現在で1,294単組79.2%と、昨年(1,206単組74.2%)を上回った。労使交渉を実施したのは1,085単組66.4%(昨年1,048単組64.5%)、合意(妥結)に至ったのは888単組54.4%(同794単組48.8%)で、集約途中段階でいずれも昨年を上回った。

しかし中間総括は、「2017年は衆議院の解散総選挙が行われたため、例年よりも国家公務員給与の改定作業が遅れ、それに伴い自治体における給与改定作業のスケジュールも後ろ倒しとなったことを一因として、確定闘争の取り組み状況については前年を下回る結果となった」点に言及。こうした事情のなかった2016年と比べると、「いずれの項目も3~7ポイント下回っており、取り組みが不十分と言わざるを得ない」とした。

 川本委員長はあいさつで、こうした2018確定闘争の決着内容について、「5分の1の単組が要求書すら出していないのは、問題だと言わざるを得ない」と指摘。職場の現状や組合員の意見を単組でしっかりと把握し要求・交渉をしていくことができなければ、強い組織にはなり得ない。職場の課題を吸い上げ、その課題の解決に向けて組合執行部が奮闘することを意識して取り組んでいこう」などと呼び掛けた

年齢ポイント賃金の到達目標を設定

方針は、2019春闘の基本設計として、 ① 賃金改善 ② 職場からの働き方改革と人員確保 ③ 臨時・非常勤職員の処遇改善 ④ 安心してくらし続けられる地域づくり――の4点を主要課題に設定した。

賃金改善については、「連合の掲げる『底上げ・底支え』『格差是正』の要求が2%程度であることを踏まえ、人勧期(6~8月)・確定期(9~11月)までを見据えた賃金改善をはかる」としたうえで、「具体的な賃金要求・運用改善につなげるためには、単組ごとに昇給・昇格ライン(賃金カーブ)の実態を明らかにすることが必要だが、それが十分に把握できていない単組が少なくない」と指摘。全単組で男女別や年齢ごとなどの賃金実態の点検を徹底し、近隣自治体・同規模自治体との昇給・昇格ラインと比較し、具体的な到達目標を設定するためのモデルラインを作成して改善に向けて取り組む。

なお、自治労では、すべての単組の到達目標として、 ① 30歳・24万8,775円 ② 35歳・29万3,807円 ③ 40歳・34万3,042円――の個別ポイント賃金を示している。

法改正を契機に働き方の点検と見直しを

労働基準法の改正により今年4月から時間外労働の罰則付き上限規定が導入されることに伴い、国家公務員については、改正法の施行にあわせて時間外労働の上限を人事院規則で定めることになっている。

働き方改革に関わる取り組みでは、「地方公務員においても条例・規則等による措置することが必要だ」と指摘。「今回の法改正等を契機として、改めて労働時間の適正な把握とともに、業務内容や必要な人員が配置されているか点検を行い、必要な措置や制度見直しなどについて交渉・協議を行わなければならない」とした。

人員確保についても、「人員削減により現場は限界に達している。通常業務に関しても十分な体制が確保されないなかで、この間の相次ぐ地震や水害などにより、被災自治体では復旧・復興業務にマンパワーを充てなければならず、長時間労働などの問題も引き起こしている」などと指摘。「緊急時における体制の確保も含め、公共サービスの維持・提供のために必要な人員確保・増員を求めていく必要がある」と訴えている。

単組主体で「会計年度任用職員」への対応を

地方公務員の臨時・非常勤等職員については、「特別職非常勤職員」「一般職臨時的任用職員」「一般職非常勤職員」の制度区分があるなか、2020年4月1日に施行される改正地方公務員法により特別職と臨時的任用職員の範囲を厳格化する一方、一般職としての「会計年度任用職員」が新たに設定された。「会計年度任用職員」の任用や勤務労働条件は、関係する職員団体や労働組合との協議を経て、議会で成立・決定することになっている。だが、2018年中に議会での条例化を行った自治体はほとんどなく、多くは2019年2,3月もしくは6月の議会での対応となることが想定されている。

方針は、「交渉については、当局の示すスケジュールを前提にするのではなく、時期、内容等に関し、単組として主体的に交渉を組み立てていくことが重要」などと指摘。2019年春闘期での交渉・協議を加速させる姿勢を求めている。あわせて、自治体単組が主体となって交渉を行う際には、組合員であるか否かにかかわらず、できるだけ多くの臨時・非常勤等職員の意見を集約して交渉に臨むことや、当事者が実際の交渉に参加できるように取り組むことが必要だとしている。

非正規労働者が団結の枠外に放置されないよう組織化を強化

一方、組織拡大について自治労は、2019年8月を期限とする「非正規労働者10万人組織化」の目標を掲げている。しかし、現状は「2018年9月現在の新規加盟組合員数1万4,013人」と「2017年組織基本調査での臨時・非常勤職員の組合員数3万5,588人」を足しても約5万人と、「実現に向けては厳しい状況」にある。

方針は、「会計年度任用職員制度の導入や働き方改革法制の整備を踏まえれば、今こそが組織化に向けた絶好のチャンスだ」と強調。「非正規労働者が労働者の団結の枠外に放置されることがないよう、改めて組織化を強化する」ことを明記している。

なお、安心してくらし続けられる地域づくりに向けては、「地方自治体には、地域住民が安心して生活できるための、質の高い公共サービスを提供する義務がある」ことを前提に、子育て・医療・介護・福祉、公共交通などの地域で安心して生活するための地域共生社会の拡充・実現のために、自治体と連携しながら取り組むとしている。

政策実現に向けた政治活動の推進も

中央委員会では春闘方針とあわせて、当面の闘争方針も確認した。政策実現に向けた政治活動では、「自治労組織内・政策協力議員を中心とし、立憲民主党、国民民主党、社会民主党の議員、また自治労の政策を理解する無所属の議員との連携を強化する」ことを明記。今年7月の第25回参議院選挙に向け、「比例代表選挙が全国の自治労組合員の力を結集する取り組みであることを改めて確認する」として、すでに推薦を決定し立憲民主党から出馬予定の岸真紀子・特別中央執行委員の支持拡大に取り組む。