正社員、短時間組合員ともに2%基準の引き上げ方針を決定/UAゼンセン中央委員会

2019年2月1日 調査部

[労使]

国内最大の産別労組で、パートタイマーの組合員が半数以上を占めるUAゼンセン(松浦昭彦会長、約176万7,000人)は1月30日、大阪府大阪市で中央委員会を開き、昨年と同様に、賃金体系維持分に加え2%基準で賃金を引き上げることを基本とする2019労働条件闘争方針を決定した。短時間(パートタイム)組合員の要求基準についても2%基準を掲げ、格差是正が必要な場合は正社員以上の要求を行うとした。

実質生産性向上に見合う実質賃上げを

方針は、今次闘争を取り巻く環境について、「2016年後半から続く消費者物価の上昇により、2017年度の実質賃金は前年比マイナスとなった。そのため、勤労者家計の消費支出は伸びておらず、日本経済は自律的成長の循環を生み出せていない」と指摘。「日本経済全体の実質生産性向上にみあう実質賃金の引き上げを行うことが、公正な配分であり、内外需のバランスのとれた経済成長、デフレ脱却、そして、生産性向上へのインセンティブを生み出すことになる」と強調し、要求の考え方の柱として、 ① 生産性向上に見合った継続的な実質賃金の引き上げを進める ② 雇用形態間の均等・均衡処遇、企業規模間、産業間格差是正に取り組む ③ 企業内最低賃金の引き上げ、協定化を必須の取り組みとする――の3本を掲げた。

あいさつした松浦会長は「今年の賃金闘争をめぐる諸環境は、物価をみても、生産性向上分を示すGDPをみても、マクロ的には昨年以上の賃上げを後押しする材料に事欠かない。先般の国会でも議論されたように労働人口減少に伴う人材不足も継続している。今年10月には消費税の増税、中身的には複数税率の導入や複雑極まりないポイント還元など大いに問題ありと言わざるを得ないが、いずれにせよ消費を下支えする賃上げの実施は不可欠だ」と強調。「UAゼンセンの要求基準案は昨年同様だが、しっかり要求し、必ず前年以上の賃上げを獲得し、社会水準との格差是正と実質賃金の維持向上を通じた組合員の生活改善を実現しよう」と呼びかけた。

絶対水準のミニマム水準は24万円

具体的な要求内容を正社員(フルタイム)組合員からみると、要求設定ではまず、底上げと格差是正に取り組むため、「賃金水準に応じた要求を設定する」とした。めざすべき賃金水準の指標として、「高卒35歳勤続17年」と「大卒30歳勤続8年」の2銘柄でそれぞれ、【ミニマム水準】【到達水準】【目標水準】の3段階の指標を設定。具体額は【ミニマム水準】は高卒銘柄、大卒銘柄ともに24万円に設定し、【到達水準】と【目標水準】については、製造産業部門(化繊、紡績、化学、製薬など)、流通部門(百貨店やスーパーマーケット、専門店など)、総合サービス部門(外食・内食、サービス業など)と3つある部門が独自に設定する内容とした。要求設定ではまた、「賃金体系維持分を明確にした要求を行う」とし、到達水準以上にすでに達している組合については、要求の一定部分を賃金以外の労働条件改善に振り向けることができるようにした。

正社員との格差があれば正社員以上を要求

要求基準をみると、平均賃金の引き上げでは、「『賃金体系維持分に加え、2%基準で賃金を引き上げる』ことを基本に、賃金水準別に要求基準を設定する」とし、昨年方針と同じ内容とした。企業内での最低賃金(18歳以上)の協定化については、「月額16万1,000円を基準に、生計費の地域差を勘案して都道府県ごとに算出した金額以上とする」などとした。

短時間(パートタイム)組合員に関する要求基準については、平均賃金の引き上げでは「制度昇給分に加え、2%程度基準で賃金を引き上げる。制度昇給分が明確でない場合は、正社員(フルタイム)組合員の要求に準じる」とし、正社員との格差が大きく格差是正が必要な場合は「正社員(フルタイム)組合員以上の要求を行う」。

最低賃金額については、正社員の18歳最低賃金額の時間換算額または地域別最低賃金の110%の水準とし、UAゼンセンが都道府県ごとに示した金額以上の水準で協定化する。

一時金については、正社員(フルタイム)組合員の要求基準は「年間5.0カ月を基準に各部門で決定する」。短時間(パートタイム)組合員については、一時金制度がない組合は「必ず制度化を要求する」ことを前提に、要求月数については「企業業績等への貢献に応じて、正社員と均衡ある月数を要求する。最低でも年間2カ月を要求する。正社員と同視すべき短時間組合員は正社員と同じ要求とする」とした。

デジタル技術導入を見据え労使確認を求める

賃金闘争以外では、労働時間の短縮・改善や定年制度改定、均等・均衡処遇の取り組みなどを柱に据えた。労働時間の短縮・改善では、所定労働時間の短縮について、【到達基準】として「年間所定労働時間 2,000時間未満、年間休日、115日以上」、【目標基準】として「年間所定労働時間 1,900時間未満、年間休日、120日以上」を掲げた。特別条項付の36協定については、「特別条項付き時間外・休日労働協定は、締結しないことを原則とする」としている。

その他の労働条件では、デジタル技術革新が今後進むと思われることから、デジタル技術導入を見据えた労使での生産性3原則の再確認を行うよう求めている。また、自然災害で組合員が被災するケースも増えていることから、自然災害で出退勤が適当でないと認められる場合に使用できる有給の災害休暇(年5日以上)の創設を盛り込んだ。

流通部門は2%以上を要求

これらのUAゼンセン本部の方針決定をうけ、製造産業部門、流通部門、総合サービス部門はそれぞれ、1月31日に部門方針を決定した。

製造産業部門は、賃上げ要求基準を「賃金体系(カーブ)維持分に加え、1%以上の賃金引き上げ、到達水準との格差是正を含め2%基準の要求を行う」とし、65歳への定年延長や退職金改定闘争などにも取り組む。

流通部門は、他産業との賃金格差があるとの認識に立ち、正社員については、ミニマム水準を下回っている組合の場合、「賃金体系維持分とベースアップを含む賃金引き上げ、一人平均9,500円以上」を要求基準とし、ミニマム水準は上回っているが部門到達水準を下回っている組合については(定昇制度がある場合)「賃金体系維持分に加え、ベースアップを含む賃金引き上げ、一人平均4,500円以上、または2%以上で賃金引き上げを要求する」。短時間組合員については正社員と同等かそれ以上の賃金引き上げを要求し、一時金については、正社員と職務が異なる場合は年間2カ月基準、職務が同じ場合は年間3カ月基準を求める。

総合サービス部門は、ミニマム水準に到達していない組合の要求基準は「4,500円(賃金体系維持相当分)に加え賃金引き上げ2.0%以上、または一人平均9,500円を基準に要求する」とした。部会ごとに統一的に取り組む項目を設定。食品製造などで構成する「フード部会」は定年制度の改定など、外食などで構成する「フードサービス部会」は失効年次有給休暇の積立制度の導入・運用、ホテル・レジャー部会は勤務間インターバル規制の導入に取り組む。