2%程度の賃上げを意識したうえで『賃金水準の追及』にこだわる/JEC連合闘争方針

2019年1月23日 調査部

[労使]

化学・エネルギー関連産業の労組でつくるJEC連合(約10万4,000人、平川純二会長)は1月17日、都内で中央委員会を開き、2019春季生活闘争方針を決めた。闘争方針は、「賃金カーブの歪みや加盟組合が重点的に取り組むべき項目を含む『賃金引き上げ』に向け、連合方針である2%程度を意識したうえで、『賃金水準の追及』にこだわる」として、水準重視の取り組みを進める姿勢を示している。

「『月例賃金の引き上げ』の流れを社会全体へ波及させる」(平川会長)

平川会長はあいさつで、「2018闘争ではJEC連合としても『底上げ・底支え、格差是正』『絶対額での水準重視』の方針の基、賃金引き上げでは要求した組合の67.4%が賃金改善を獲得し、改善額の加重平均も昨年を上回った」などと昨年の春闘を振り返ったうえで、「19闘争では、連合の『賃金の引き上げ幅』のみならず『賃金の絶対水準』を追及する方針を基にし、仲間への波及はもちろんのこと、関連する仲間への働きかけが重要だ」と強調。「景気の実感もわかない現状を打開していくためにも『月例賃金の引き上げ』の流れを社会全体へ波及させよう」などと訴えた。

方針に沿った要求・交渉の実現に向けて最大限努力し取り組む

闘争方針は冒頭、連合が求める春季生活闘争での構成組織の役割について、「賃上げの流れを継続・定着・社会全体への波及を方針の基軸と捉え、マクロの観点で必要な水準と中小・非正規の『底上げ・底支え』『格差是正』に資する社会横断的な水準を設定し方針として掲げること」と説明。そのうえで、「こうした役割を認識したうえで、すべての加盟組合が、その目的や意味合いをしっかりと理解し、共闘の精神に基づいて、方針に沿った要求ならびに交渉の実現に向けて、最大限努力し取り組む」こととしている。

「基準内賃金16万円以上」のミニマム基準を初めて設定

賃金引き上げの要求は、「賃金カーブの歪みや加盟組合が重点的に取り組むべき項目を含む『賃金引き上げ』(いわゆるベースアップの取り組み)に向け、連合方針である2%程度を意識したうえで、『賃金水準の追求』にこだわる」方針を掲げた。

そのうえで、基準内賃金16万円以上のミニマム基準を設定し、これを「下回る組合員をなくすよう全加盟組合が取り組む」とした。再雇用契約も含めた非正規労働者の時給についても時給換算し、「1,067円以上の設定になるよう、協定化も視野に入れ取り組む」こととしている。

方針はあわせて、25~55歳までの5歳刻みでの基本給の年齢別ポイント基準も提示。「各企業における賃金が、ポイント基準に到達するよう賃金引き上げ要求を検討し取り組む」考えも示した。具体的な基本給額として、25歳:21万円、30歳:24万円、35歳:27万円、40歳:30万円、45歳:33万円、50歳:36万円、55歳:38万円――を明記。ミニマム基準と年齢別ポイント基準に到達している組合は、それぞれ目指すべき賃金に向けた要求を前向きに検討する。その際、具体的には、ベースアップ6,000円以上を要求する。定期昇給制度がなく賃金改善を図る組合は、先述の賃上げ6,000円に定昇相当分として5,000円を加え、合計1万1,000円の要求に取り組む。

このほか、雇用問題を抱える組合に関しては、経営再建に向けた労使協議を最優先することとし、連合リビングウェイジ・標準生計費などを交渉材料に、現行賃金カーブの維持ならびに生活保障を軸とした要求を行う。

生産性向上で創出した原資の働く者への還元を

一方、働きやすい職場づくりの実現に向けて、労働時間短縮の取り組みも重視。目指す姿を「年間所定内労働時間1,800時間(月150時間×12カ月)の実現」とし、この目標を計画的に実現できるよう、方向性を検討・協議・要求する。

また、年間総実労働時間が2,000時間を超える組合は、「早急な対応が必要」との見解を企業に示したうえで、「罰則付き時間外労働の上限規制」の観点から、年間総実労働時間の削減に取り組む。36協定についても点検を行うとともに、適正な労働時間管理がなされているかを確認。みなし労働時間制を導入する事業所では、事業場外労働および裁量労働制の適正運用に向けた点検も行っていく。

さらに、時間外労働の割増率の引き上げも求める。企業規模にかかわらず、すべての組合で、① 1カ月45時間未満の時間外割増率35% ② 特別条項付き協定の締結を前提に45時間超の時間外割増率50% ③ 深夜および休日労働の割増率50%――の実現に努める。

年次有給休暇に関しても、一人当たり平均取得日数10日未満の組合は是正に向けて取り組み、「取得日数5日未満の組合員をなくすよう必ず確認する」。時間外労働の削減や所定内労働の効率運用によって創出される生産性向上分の原資について、「労使で深く議論し、働く者に必ず還元されることを確認する」ことを強調している。

法を上回る取り組みが労組の役割

いわゆる働き方改革に関して、平川会長は「法律を守ることは当たり前だが、法が施行されれば働き方の問題が解決されるものではない」と指摘。「現場や職場の実態に即し、これまでの業務のやり方や人の配置を変える知恵が必要。そうした知恵は、職場の声を丁寧に拾い上げ、会社と繰り返し協議して出てくるものだ」などと強調し、「法を上回る取り組みが労働組合の役割であることも共通認識にしよう」と呼び掛けた。

なお、方針は、職場におけるハラスメントの対応や両立支援の拡充などについても、重点取り組みとして提起している。

初任給や諸手当、一時金の点検・検討を

方針は、今次闘争で各加盟組合がそれぞれ点検・検討すべき取り組みとして、① 初任給 ② 諸手当 ③ 一時金 ④ 退職金 ⑤ 60歳以降の雇用――などについても列記している。

初任給は、各社の人事賃金制度における基準が、① 高校(18歳):17万円 ② 大学(22歳):21万円 ③ 修士(24歳):23万円――になるよう点検する。

諸手当は、特殊勤務手当や特殊作業手当などの労働の対価としての手当について、「職種や職場の声を十分反映し労働の対価に見合った制度になるよう再点検も含め取り組む」とともに、住宅手当や家族手当などの生活形成のための手当も、「企業労使が手当としてどのような考えを持っているのかの方向性を確認・検討したうえで維持・向上に取り組む」。

一時金については、「年収水準に大きく影響を与える」観点から、生活保障と年収水準の底上げを目的に、ミニマム基準を年間4カ月に設定。一時金の固定部分を持つ加盟組合は、固定部分を4カ月以上に引き上げることを目指して取り組む。業績連動型一時金制度を導入している企業では、「同業他社ならびに内部留保や地域間格差等、十分比較検討したうえで、制度が適正な設定になっているか検証する」。

60歳以降の再雇用者の賃金引き上げも

定年退職金は、ミニマム基準を1,200万円、平均支払総額水準を2,100万円として取り組むほか、60歳以降の雇用についても、希望者全員の雇用延長が実施されることを確認したうえで、「2019闘争にて60歳以降の再雇用者の賃金引き上げに取り組む」考えも示している。

要求書は原則、2月22日までに提出。連合・共闘連絡会議の方針に基づき、3月第3週(3月11日~15日)を解決に向けた回答ゾーン(第1先行組合回答ゾーン)とし、3月13日を集中回答日とする。これに続く組合は3月18日~22日を回答ゾーン(第2回答ゾーン)とし、遅くとも4月内での決着をめざす。