すべての単組が絶対額を重視して取り組む/JAMの2019春闘方針

2019年1月18日 調査部

[労使]

金属、機械関連の中小労組を多く抱える産別労組のJAM(安河内賢弘会長、37万人)は16日、都内で中央委員会を開き、2019年春季生活闘争方針を決定した。個別賃金要求を軸とし、すべての単組が賃金の絶対額を重視した取り組みを追求するとした。平均賃上げ要求基準は2018春闘と同様、「賃金構造維持分平均4,500円に6,000円を加え、1万500円以上」と設定した。

若年の一人前ミニマム基準を引き上げ

個別賃金要求では、単組は「自らの賃金水準のポジションを確認した上で、JAM一人前ミニマム基準・標準労働者要求基準に基づき、あるべき水準を設定し要求する」。JAM一人前ミニマム基準とは、各年齢ポイントにおける「一人前労働者」の賃金の最低水準的意味合いの指標で、個別賃金要求する際に単組が参考にする。なお、JAMでは一人前労働者を「組立、部品加工、営業、開発など職種を問わず、一定のまとまった範囲の仕事について、緊急時対応や不具合チェックなど定型的仕事を除いた部分についても自分で判断し責任をもって行っている労働者」と定義している。

具体額は、所定内賃金で18歳:16万2,000円、20歳:17万5,000円、25歳:20万7,500円、30歳:24万円、35歳:27万円、40歳:29万5,000円、45歳:31万5,000円、50歳:33万5,000円と設定。初任給水準が上昇している実態などを踏まえ、18歳~25歳までのポイントについては昨年から額を引き上げた。

標準労働者の到達・目標基準も引き上げ

到達基準的意味合いの標準労働者の要求基準としては、高卒直入者の所定内賃金で30歳および35歳という2つの年齢ポイントを掲げ、「全単組が到達すべき水準」である【到達基準】では30歳を27万円、35歳31万円、「到達基準に達している単組が目標とすべき水準」である【目標水準】では30歳を29万円、35歳33万円と設定し、すべての基準額を昨年よりも引き上げた。

中途採用者や、無期転換された有期雇用労働者の採用時賃金の最低規制としての意味を持たせている「年齢別最低賃金基準」については、18歳ポイントを16万2,000円、25歳を16万6,000円、30歳を19万2,000円、35歳を21万6,000円とした。

平均賃上げは構造維持分4,500円に6,000円を加え1万500円以上

平均賃上げ要求基準は、昨年と同様、「JAMの賃金構造維持分平均4,500円に6,000円を加え、1万500円以上とする」とした。

企業内最低賃金協定は、18歳以上企業内最低賃金協定を締結していない単組では協定締結に取り組み、年齢別協定を締結していない単組では標準労働者(一人前労働者)の賃金カーブを基にした年齢別最低賃金協定を締結するとしている。これらが達成できている単組は非正規労働者も対象とした全従業員の協定締結を目指す。

一時金要求は例年どおり、「① 年間5カ月基準または半期2.5カ月基準の要求とする ② 最低到達基準として、年間4カ月または半期2カ月」とした。

統一要求日は2月19日(火曜日)に設定し、統一回答指定日は3月12日(火曜日)と同13日(水曜日)とした。

「一時金には社会的波及効果なし」(安河内会長)

あいさつした安河内会長は「報道によると経団連は『基本給のベースアップはあくまで選択肢の1つと位置づけ、子育てとの両立やスキルアップ支援の充実など多様な方法で従業員の処遇改善に取り組む方針』であり、利益の成果配分はあくまでも一時金でという姿勢を崩していない様に思える。われわれの基本姿勢はあくまでも基本給のベースアップが主軸であり、子育て支援や定年延長、時短や非正規労働者の処遇改善も重要な選択肢の1つだということだ。一時金には社会的波及効果はほとんどない。大手がこれ以上一時金を積み上げても中小はただうらやましいだけだ。リーマンショック以降、一時金は着実に回復しているが、個人消費の伸びを見れば一時金の増加が個人消費に与える影響は限定的だと言わざるを得ない。あくまでも個別賃金要求にこだわり、会社と強く交渉していってほしい」と強調した。

方針案を提案した中井寛哉書記長は、JAMの交渉単位組合約1,500単組のうち、2018闘争で個別賃金に取り組んだのはまだ286単組にすぎないと報告。「12月にはオルガナイザーを集めて研修会を開き、担当する単組のターゲットも決めた。この成果が2019春闘で出てくることを願う」と述べ、個別賃金に取り組む単組数の拡大に期待感を滲ませた。また、特定最低賃金の引き上げにつながる企業内最低賃金協定締結の取り組みについても触れ、「特定最低賃金は協約ケースの方が未組織労働者への波及効果があるものの、協約ケースとなっている件数の割合は鉄鋼業では85%、電気機械器具では66%、輸送用機械器具製造業では70%と高い割合となっているのに対し、JAMの単組が多い一般機械器具製造業は30%に過ぎない」と指摘し、単組レベルでの企業内最低賃金協定締結の取り組み強化を要請した。