3,000円以上の賃上げに取り組む2019闘争方針を決定/金属労協

2018年12月7日 調査部

[労使]

自動車総連、電機連合、JAM、基幹労連、全電線の金属関連5産別組織で構成する金属労協(JCM、議長:髙倉明・自動車総連会長)は5日、都内で協議委員会を開き、2019春闘の闘争方針となる「2019年闘争の推進」を確認した。髙倉議長はあいさつで、実質賃金維持や中小労組の底上げ・格差是正に力を注ぐと述べた。賃金引き上げの要求基準は2018闘争と同様、「定期昇給など賃金構造維持分を確保した上で、3,000円以上の賃上げに取り組む」とした。

「実質賃金の維持や中小労組の底上げ・格差是正に力を注ぐ」(髙倉議長)

髙倉議長はまた、日本経済の現状について、景気回復・拡大が続いているものの、「われわれ国民にとっては、実感なき経済成長が続いている」との見方を示したうえで、「わが国経済が安定的かつ持続的な成長を遂げていくためには、国内外の様々な変動要因に耐えうる『強固な日本経済』、すなわち個人消費が経済をリードし底支えする内需主導の経済体質を構築していくことが不可欠であり、そのためにも今次闘争の取り組みを、確実かつ強力に推進していかなければならない」と強調した。

2019闘争に向けては、「超少子高齢化による生産年齢人口の減少や、第4次産業革命の進展など、われわれを取り巻く環境が大きく変革する中にあって、『人への投資』の拡充によって『強固な現場』を確立し、一層の生産性向上、高付加価値を目指す『強固な金属産業』の構築を果たしていくために、『生産性運動三原則』を確実に実践し、マクロの実質生産性の向上に見合った実質生活・実質賃金の向上を図っていくことは、ますます重要となってきている」とし、「特に、消費者物価上昇率が1%程度で推移していることを踏まえた、実質賃金維持、賃上げ獲得組合の拡大、そして上げ幅とともに賃金水準での社会相場形成による中小労組の底上げ・格差是正に力を注いでいきたい」と述べた。

個別賃金要求に向けた全組合の賃金水準分布のデータを整備へ

闘争方針は、2019闘争に向けた基本的な考えとして、① 人への投資、② 生産性運動三原則の実践、③ バリューチェーンにおける『付加価値の適正循環』の構築、④ 底上げ・格差是正と『同一価値労働同一賃金』の実現、⑤ 働き方の見直し――の5項目を掲げた。

具体的な方針内容をみると、賃金では「定期昇給など賃金構造維持分を確保した上で、3,000円以上の賃上げに取り組む」とする一方、賃金の絶対水準での格差是正を図るため、35歳相当・技能職の個別賃金での到達基準を示した。なお、JCMが平均方式で3,000円以上の引き上げ方針を掲げるのはこれで4年連続のこと。

35歳相当・技能職の到達基準は「目標基準」(各産業をリードする企業の組合がめざすべき水準)、「到達基準」(全組合が到達すべき水準)、「最低基準」(全組合が最低確保すべき水準)――と3通りあり、目標基準は基本賃金(所定内賃金から各種手当を除いた賃金)で33万8,000円以上、到達基準は同31万円以上、最低基準は到達基準の80%程度(24万8,000円程度)と設定した。

髙倉議長は個別賃金の取り組みによる底上げ・格差是正をさらに推し進めるため、「各組合がJC共闘全体の中における賃金水準の位置づけを確認できるよう、金属労協全組合の賃金水準分布のデータ整備を目指していきたいと考えている。様々な業種、職種や賃金制度がある中で、底上げ・格差是正の向上につながる有効な指標のあり方などについて今後議論していきたい」と述べ、より単組にとって参考となる個別賃金の指標づくりに着手することを明らかにした。

働き方関連法では法以上の対応を実施

金属産業で働く者の賃金の底上げを図るため、例年と同様、「JCミニマム運動」、① 企業内最低賃金協定の全組合締結と水準の引き上げ ② 特定最低賃金の水準引き上げ ③ 35歳の基本賃金で21万円以下をなくする運動である「JCミニマム(35歳)」―に取り組む。

一時金は2018闘争と同様、「年間5カ月分以上を基本とする」とし、最低獲得水準を年間4カ月以上とした。

働き方の見直しでは、年間総実労働時間の全体平均が2,000時間を上回る状況となっていることから、2018闘争に引き続き、1,800時間の実現をめざす。働き方関連法への対応では、「法の求める以上の対応を迅速に実施していくよう取り組む」とした。高度プロフェッショナル制度については「導入しない」としている。60歳以降の雇用と賃金などの労働条件の改善については、「働くことを希望する者全員に、少なくとも65歳までの雇用を確保する」とし、処遇については「同一価値労働同一賃金」を基本とするなどとしている。

バリューチェーンにおける『付加価値の適正循環』の構築では、各業界団体の作成する自主行動計画や、経団連などの商慣行是正に向けた共同宣言に基づき、労組として納入側・購入側の双方の立場から職場レベルでのチェック活動を推進する。また、産別労使、大手企業労使がバリューチェーンを構成する中小企業の付加価値の拡大に向けて支援策の検討を進めることも盛り込んだ。

電機連合は「賃金改善に取り組む土壌は整っている」と表明

方針討議では、5産別それぞれが要望や意気込みなどを語った。JAMはバリューチェーンにおける「付加価値の適正循環」の構築について「(中小に対して)人材確保に加え、教育訓練、設備投資が可能になる付加価値の適正な配分がなされないと、中期的な事業の存続、ひいては産業の存続が危ぶまれかねない。これまで同様にJCMが先頭に立って取り組みを継続していくことを要望する」と発言。全電線は賃金の取り組みについて「電線産業にふさわしい水準を確保するとの考えに立って取り組む」と意気込みを語った。2019闘争が2年サイクルの個別改善年度(統一して賃金改善要求に取り組む年の翌年)にあたる基幹労連は「年間一時金を主要項目としながら、賃金改善や働く者すべての雇用確保と処遇改善、60歳以降の現役社会の実現に向けた労働環境の構築、WLBの実現に向けた各種労働条件の改善など積極的な人への投資に取り組む」と表明し、電機連合は「引き続き賃上げを通じた生活水準の維持向上を図ることが重要。今次闘争を取り巻く環境は、電機連合の賃金決定の3要素から判断すると賃金改善に取り組む土壌は整っている」と述べた。自動車総連は賃金の取り組みについて「自らの目指す賃金の実現に向け、上げ幅つまり賃金改善分だけではなく、賃金カーブや賃金制度、配分にかかる課題にも目を向けるなど、絶対額を重視した取り組みをこれまで以上に進めていくことが重要」と表明した。