賃金水準を追求する闘争を強化/連合中央委員会

2018年12月5日 調査部

[労使]

連合(神津里季生会長)は11月30日、千葉県浦安市で中央委員会を開き、「2019春季生活闘争方針」を決めた。賃上げ要求水準は前年方針同様、「2%程度を基準(定期昇給相当分含め4%程度)」とし、中小組合や非正規労働者の賃金水準の引き上げを重視する取り組みに力を入れる。神津会長は、「中小企業で働く仲間・非正規と言われる形態で働く仲間の賃金を『働きの価値に見合った水準』へと引き上げていくことを、闘争のど真ん中に据えていく」姿勢を強調した。

中小・非正規労働者の水準引き上げを重視

連合が春季生活闘争方針で賃上げ要求水準を掲げるのは、6年連続。定昇相当分を含めて賃上げ水準4%程度とする要求基準は、4年続けてのこととなる。また、今回の方針では、「『水準追求』の闘争をより強化する」(神津会長)ことで、中小・非正規労働者の水準引き上げを重視しているのが特徴となっている。

2019春季生活闘争の基本的な考え方について方針は、「底上げ・底支え」「格差是正」の取り組みの継続に向けて、「企業収益は過去最高を更新している。一方、労働分配率は低下を続け、実質賃金も横ばいとなっており、個人消費については上向き感は見られるものの、回復に向けた勢いは依然として見られない」などと指摘。「働く者のモチベーションを維持・向上させていくためには、『人への投資』が不可欠であり、すべての企業労使は日本経済の一端を担うという社会的役割と責任を意識し、すべての働く者の労働条件の改善をはからなければならない」と強調し、「2019春季生活闘争においても、月例賃金の引き上げにこだわり、賃金引き上げの流れを継続・定着させる」とした。

そのうえで、「とりわけ、未だ届いていない中小組合や非正規労働者の賃金の『底上げ・底支え』『格差是正』の取り組みの実効性を高めるためにも、働きの価値に見合った賃金の絶対額にこだわり、名目賃金の到達目標の実現と最低到達水準の確保、すなわち『賃金水準の追求』に取り組んでいく」ことを明記。こうした観点を踏まえ、賃上げ要求水準は、「2%程度を基準とし、定期昇給相当分(賃金カーブ維持相当分)を含め4%程度とする」とした。

より多くの組合が根拠を明確にして要求する

また、中小組合や非正規労働者の格差是正を実現していくためには、「賃金実態の把握と賃金制度の確立が不可欠だ」と強調。「取り組みの実効性を担保していくには、より多くの組合が要求根拠を明確にして要求することが肝要であると同時に、『大手追従・大手準拠などの構造を転換する運動』の継続と定着が必要であることに留意する」必要があるとした。

取引の適正化の推進についても「中小企業の賃上げ原資の確保に不可欠だ」として、「『サプライチェーン全体で生み出した付加価値の適正分配』が必要であることを、職場労使、経営者団体とともに社会全体に訴えていく」との姿勢を示している。

人手不足が深刻さを増し、働き方改革関連法が成立したなかでの働き方の取り組みに関しても、「個別企業労使にとって『人材の確保・定着』と『人材育成』に職場の基盤整備が従来以上に重要課題となる」として、長時間労働の是正や同一労働同一賃金を「産業全体として実現したい姿を共有したうえで進めることが重要だ」とした。

中小労組・非正規労働者の社会横断的水準確保に向けた指標を提示

具体的には、2019闘争では取り組みを強化する社会横断的な「賃金水準」の確保に向けて、「定期昇給分(賃金カーブ維持分)を確保したうえで、名目賃金の到達目標の実現と最低到達水準の確保、すなわち『賃金水準の追求』にこだわる内容」とし、構成組織が参考にできる複数の金額基準を用意した。

中小組合が社会横断的な水準を確保するための指標について、例示では、仮に賃金カーブ維持分が4,500円で平均賃金は20万円の組合が、「2018『地域ミニマム運動』集計データ」(39.6歳、勤続14.2年)の300人未満平均(25万4,847円)まで引き上げたい場合、現状では一人平均で5万円超の格差があるため、到達には自組合の賃金と目指す賃金水準の差額(定昇分含め5万4,500円超)が必要になる。単年で到達を目指すなら、その分の要求が必要になるし、それが難しい場合は、目標達成年次を決めて複数年で格差を縮小させていくイメージになる。

一方、非正規労働者の時給引き上げについては、これまで同様、地域別最低賃金の改善に向けて「『誰もが時給1,000円』の実現をはかること」を掲げつつ、「高卒初任給等との均等待遇を重視し、時給1,050円を確保する」考えを示した。この額は、連合集計の主要組合の高卒初任給の平均値に2%分を上乗せした額(17万2,500円)を、厚生労働省「賃金構造基本統計調査」の所定内実労働時間数の全国平均(165時間)で除して時給換算したもの。

「これまでと同じことをしていても壁は乗り越えていけない」(神津会長)

神津会長はあいさつで、2014春季生活闘争以降の賃上げを振り返り、「成果は、それまでの20年近くの傾向とははっきりと異なるものであることが連合集計にも表れているが、2014と2015の2年間はいかんせん格差が拡大してしまった。その克服を目指し『底上げ』を標榜してからの2016以降の3年間で、中小のベアが大手を上回る、そして非正規と言われる形態の賃金アップ率が正規のそれを上回るという姿を定着させてきた」と説明。「そのこと自体は大きな成果だ」と評価する一方、「それは連合集計における状況であり、社会全体に波及できているかについて、問題意識をよりいっそう強めていかなければならない」とも述べ、「企業規模間、雇用形態間などの格差は依然として大きなものがある。これまでと同じことをしていても、壁は乗り越えていけない」と訴えた。

そのうえで、「今次闘争は、『水準追求』の闘争をより強化し、壁を乗り越えるための足がかりとしていく。とりわけ『賃上げ』に向けた考え方を今一度再構築し、中小企業で働く仲間・非正規と言われる形態で働く仲間の賃金を『働きの価値に見合った水準』へと引き上げていくことを、闘争のど真ん中に据えていきたい」と意欲を示した。

「36(サブロク)の日」が記念日に認定

活動報告では、直近6カ月の組織拡大実績を報告。2018年4月1日から9月30日までの組織拡大実績は、構成組織・地方連合会あわせて12万7,410人。この1年間(2017年10月1日~2018年9月30日)で見ると、17万3,647人になっている。2年タームで過去を振り返ると、前々回(2013年10月1日~2015年9月30日)、前回(2015年10月1日~2017年9月30日)とも30万人超の組織化を果たしており、今回も「概ね、同じペースで組織化が進んでいる」(山根木晴久・総合組織局長)。こうした状況について連合は、「関係組織が力を合わせて取り組みを進めた成果だ」としている。

また、今回は構成組織や地方連合会に求めている組織拡大目標の調査結果も公表した。2018年11月13日現在、2020年10月までの目標数は約50万人。それ以降の中期的な目標も加えた目標数は、約120万人になっている。連合は、「この数字を必達目標と捉え、本部、地方連合会、構成組織が全力で取り組む」としている。

なお、中央委員会では、「36(サブロク)の日」記念日登録証授与式も行われた。連合は36協定の浸透と締結促進に向けて、「Action!36」キャンペーンを展開している。その取り組みの一環として、3月6日を「36(サブロク)の日」として一般社団法人日本記念日協会に登録申請していた。同日、正式に認定され、日本記念日協会から登録証が授与された。

連合運動強化特別委員会の中間報告も確認

このほか、昨年、設置を確認した「連合運動強化特別委員会」の「中間報告」も確認した。同委員会は、持続可能性を高め得る運動・組織・財政等のあり方について、より具体的な対応方法を提起することが役割。中間報告では、① すべての働く仲間に向けた「連合の運動メッセージ」の発信 ② 連合の力を結集し得る「共通の運動目標」の定義 ③ 700万組織として総力を発揮するための「組織力の強化」 ④ すべての働く仲間から「頼りにされる連合」へ ⑤ 将来の連合運動を支える「持続可能な財政」への改革――について、現状の課題や今後の検討の方向性などを示している。今後、組織討議を経て来年4月の中央執行委員会で「最終報告」を示し、10月の定期大会に委員会報告を踏まえた運動方針を提起するとしている。

なお、連合は同日、立憲民主党、国民民主党それぞれと、第25回参議院選挙に向けた政策協定を締結した。