対象事業所限定の介護人材の処遇改善に反対の声/NCCU緊急調査

2018年11月21日 調査部

[労使]

訪問介護ヘルパーや施設介護員など、介護業界で働く労働者を組織する、UAゼンセン傘下の「日本介護クラフトユニオン」(NCUU、久保芳信会長、組合員約8万人)は16日、「消費税引き上げに伴う介護人材の更なる処遇改善策についての緊急アンケート調査」の集計結果を公表した。現在検討が進められている介護職員の処遇改善策では、処遇改善の対象から訪問看護、福祉用具貸与、居宅介護支援の各事業所が外される懸念があること、介護福祉士資格を持つ介護支援専門員(ケアマネージャー)などにも改善が及ばない可能性があることなどから、組合員の意見を把握するために行ったもの。

訪問看護などの事業所が「対象外」となることに過半数が「反対」

社会保障審議会・介護給付費分科会では、処遇改善について「経験・技能のある介護職員に重点化」が基本で、「その趣旨を損なわない程度」での「柔軟な運用」を併せて提起している。具体的には「勤続10年以上の介護福祉士」を軸に改善を検討する方向だが、NCUUによると、介護職以外の職種で運営されている訪問看護、福祉用具貸与、居宅介護支援の各事業所が対象外になる模様だ。

このため実施された緊急アンケートでは、11月1~7日にNCUU組合員のいる3,569事業所に調査票を送り(複数の組合員に配布可)、2,737人の組合員から回答を得ている。設問は、「居宅介護支援事業所、訪問看護事業所、福祉用具事業所が新たな処遇改善の対象外になることについて」の賛否を問うもので、全体では「反対」(「反対」+「どちらかといえば反対」)が65.5%と半数を大きく上回り、「賛成」(「賛成」+「どちらかといえば賛成」)は14.5%に過ぎなかった。職種別に反対と答えた割合をみると、ケアマネージャー(居宅)が90.1%、福祉用具専門相談員が90.9%と9割を超え、訪問系看護職も74.6%と、対象外となることが懸念される職場に勤める人の反対の声が強かった。

介護福祉士資格を持つケアマネージャーなど介護職以外の職種の問題も

NCUUは介護福祉士の資格取得についても聞いている。職種別で「反対」の声が強かったケアマネージャー(居宅)のうち、82.5%が同資格を持っていた。施設勤務のケアマネージャー(「反対」と答えた割合は60.7%)の同資格取得者は95.1%に及ぶ。NCUUは処遇改善の主な対象が介護福祉士資格を持つ介護職とされることを踏まえ、「ケアマネージャーのように、現在活用していないが(同)資格を持っている人も多い。(処遇が改善されないと) ケアマネージャーが目指す職種でなくなる懸念も出てくる」と、介護分野のキャリア形成にも支障が出る可能性を指摘している。

このように、事業所の種類や職種に関する問題が明らかになる一方、それにとどまらない多くの介護従事者が「反対」としているのも調査結果の特徴だ。処遇改善の対象者が多く含まれるはずの介護福祉士資格取得者(全体の60%)のうち「反対」と答えた割合は67.4%に及び、同資格を持っていない人(全体の39.9%)の62.7%を上回った。調査回答者の意見(自由記述)でも、「同じ事務所内、お互いに助け合って仕事をしている」(介護職)、「介護と看護が協力することで在宅介護が進むはずなのに」(訪問系看護職)など、介護従事者のチームワークを重視する声が目立った。