賃上げ要求は2%程度基準、「賃金水準」に重点/連合の2019春季生活闘争基本構想

2018年11月2日 調査部

[労使]

連合(神津里季生会長)は1日、都内で2019春季生活闘争に向けた中央討論集会を開き、闘争方針の基本構想を議論した。本部からの構想提起のなかで、要求の具体的な考え方が示され、賃上げ要求については、前年と同様に「2%程度を基準(定昇相当含め4%程度)」とした。ただし、「これまで以上に『賃金水準』に重きをおいた取り組みとする」(神津会長)ため、中小労組や非正規労働者の格差是正を重視。社会横断的な水準の確保に向けた具体的な指標を示した。このなかで、同一労働同一賃金の実現に向けて、高卒初任給から割り戻した時給の参考値として1,050円を提示した。

「上げ幅」のみならず「賃金水準」の追求へ

2019春季生活闘争方針策定に向けた検討課題として、構想は ① 賃金の「上げ幅」のみならず「賃金水準」を追求する闘争の強化、② 「すべての労働者の立場にたった働き方」実現への取り組み、③ 運動の両輪としての「政策・制度実現に向けた取り組み」、④ 社会に広がりのある春季生活闘争の実現に向けた取り組み――をあげた。

このうち、賃上げに関連して構想は、2019年闘争では、「月例賃金にこだわり、賃上げの流れを継続・定着させる。とりわけ、未だに届いていない中小労組や非正規労働者の賃金の『底上げ・底支え』『格差是正』の取り組みの実効性を高めるためにも、働き方の価値に見合った賃金の絶対額にこだわり、名目賃金の到達目標の実現と最低到達水準の確保、すなわち『賃金水準の追求』に取り組んでいく」としている。

そのためには、賃金実態の把握と賃金制度の確立が不可欠としたうえで、取引適正化の推進や最低賃金の取り組みを強化する。

中小労組・非正規労働者の社会横断的水準確保に向けた指標を示す

賃金要求について構想は、「社会全体に賃上げを促す観点」として、定期昇給相当分2%に加え、賃金改善・ベースアップに相当する賃上げ分の要求として、個人消費を促し「経済の自立的成長」に寄与する観点と構成組織の「底上げ・底支え」「格差是正」に寄与する観点から2%程度を基準に賃上げ要求を組み立てると提起。2%基準は連合総研がこのほど発表した2018~19年経済情勢報告の経済見通しを参考にしたとしている。

定昇相当と賃上げ分を合わせて4%程度とする組み立ては4年連続となる。

一方、来季闘争を第一歩として、取り組みを強化する社会横断的な「賃金水準」の確保に向けて、要求の組み立てとしては、賃金カーブ維持分を前提に「自組合の賃金と社会横断的水準を比較し、その水準到達に必要な額」とした。その社会的水準を確保するための指標として、例えば300人未満規模平均の2018「地域ミニマム運動集計データ」(39.6歳、勤続14.2年)25万4,847円など、複数のデータを示した。このデータをもとに例えば、自組合の月例賃金が20万円の場合、前年同様に賃金カーブ維持分(4,500円)に加え、一人平均で5万円の格差があることから、5万4,000円が必要になるとしているものの、単年での到達が困難な場合は、目標達成年次をきめて進める方法も示した。

また、賃金制度がなくカーブ維持分が峻別できない場合は、前年同様にカーブ維持相当分4,500円+中小労組の平均賃金25万円×2%+格差是正分=10,500円以上としている。

非正規の初職基準として時給1,050円を示す

非正規労働者の時給引き上げについては、これまで、「誰もが時給1,000円」を掲げてきたが、これは地域別最低賃金の到達目標であることから、同一労働同一賃金の実現を視野に、初職に就く際の基準として、連合集計の高卒初任給の参考値を時給換算した1,050円を提示した。

神津会長はあいさつで、中小組合や非正規労働者への対応について、「働き方の価値に見合った賃金水準への到達を目指す取り組みを特段に強化していきたい」と強調した。

闘争方針は構成組織での検討を経て、11月30日に開かれる中央委員会で決定される。