賃上げ要求を「マクロ観点」と「格差是正観点」の二本立てに/連合の2019春闘基本構想

2018年10月19日 調査部

[労使]

連合(神津里季生会長)は18日に開いた中央執行委員会で、2019春季生活闘争方針の検討のたたき台となる「2019春季生活闘争基本構想」を確認した。基本構想は、賃上げ要求の組み立てについて、「社会全体に賃上げを促す観点での要求」と「中小組合・非正規労働者の社会的横断的な水準確保に向けた要求」の二本立てとすることを提起。賃上げ幅だけでなく、絶対額での水準改善の波及強化を狙う。

春闘の形の「再構築」を提起

基本構想は、これまでの春季生活闘争の取り組みにより、賃上げ獲得組合が増加するとともに、「大手追従・大手準拠などの構造を転換する運動」が「一定程度浸透するなど成果を上げてきた」と評価。一方、「しかしながら社会全体を俯瞰した時、この成果の社会的波及機能が十分に働かなかったこともあり、企業規模間・雇用形態間などの格差は依然として縮まっていない」として、労働組合がない企業で働く労働者への波及効果や、大手と中小との間や正社員とパートタイム労働者などの間における賃金格差の解消においては成果が依然として不十分である点を課題としてあげた。

そのため、基本構想は、春季生活闘争の「けん引役」としての「実行力、すなわち、現存する課題と変化への対応力に磨きをかけていく」として、春闘の形を「再構築していく」と強調。再構築の具体策として、「生産性三原則に基づく労使の様々な取り組みを未だ届いていない組織内外に広く波及させていく構造を補強するとともに、労働組合の有無にかかわらず、一人ひとりの働き方の価値が重視され、その価値に見合った処遇が担保される社会の実現をめざしていく」との考えを示し、2019闘争を「その足がかりを築いていく年」に位置づけるとしている。

中小組合・非正規労働者の賃上げに「社会的横断的な水準を設定」

例年は、基本構想のなかで具体的な賃上げ要求水準を示しており、2018闘争では「定期昇給相当分(賃金カーブ維持相当分)を含め 4%程度」という上げ幅での具体的な要求水準を掲げた。

しかし、今年は、「社会全体に賃上げを促すためにマクロの観点で必要な賃上げと、中小組合・非正規労働者の『底上げ・底支え』『格差是正』に資する社会的横断的な水準を設定する」方向での内容を提起。また、基本構想のなかでは具体的な要求水準を示さなかった。

連合が基本構想とともに公表した「連合方針における要求水準の考え方」によると、社会全体に賃上げを促す観点での要求の組み立ては、「定期昇給相当分(○%)」+「個人消費を促し『経済の自律的成長』に寄与する観点と、構成組織の『底上げ・底支え』『格差是正』に寄与する観点=○○○○○○」(原文ママ)とするとしている。定昇相当分にプラスする賃上げ要求水準については、連合総研が近く公表する「経済情勢報告」に盛り込まれる経済成長に必要な賃上げ率の推計を参考にすることが案としてあがっている。

一方、中小組合の社会的横断的な水準確保に向けた要求の組み立てでは、「賃金カーブ維持相当分」+「自組合の賃金と社会的横断的水準を比較し、その水準の到達に必要な額」とする案を示す。社会的横断的水準の銘柄をどう定めるかについては、「2019闘争では、これまで『中小共闘方針』などで示した銘柄と水準を指標として提示し、2020闘争以降に向けては、構成組織等参画のもとで銘柄の検討を進める」とした。また、非正規労働者の社会的横断的な水準確保に向けた要求の組み立てに関しては、同一労働・同一賃金の実現を視野に入れるとともに、すでに「誰もが時給1,000円」を地域別最低賃金の到達目標としていることもあり、初職に就く際の基準として「高卒初任給の参考値を時給換算する」方法を提案している。

「賃金の絶対額における格差の現状」に力点

18日会見した神津会長は、要求の組み立てを変更することについて「上げ幅の数字だけが目立つのはいかがなものか」などと述べ、賃金の絶対額における格差の現状にも世の中の目を向けていきたいとする狙いを強調した。なお、2018闘争で具体的な賃金改善額を明示しなかったトヨタ自動車の回答の影響については「まったく次元の違う話」と否定した。

連合は11月1日に開催する2019春季生活闘争中央討論集会で、基本構想の内容について加盟産別、地方連合会と意見交換する。それらを踏まえ、11月中旬の中央執行委員会で具体的な要求水準も盛り込まれた方針案を提示し、同30日の中央委員会で最終方針を決定する予定。