医薬化粧品産業の労組が産別結成大会を開催/UAゼンセンは「遺憾」のコメント

2018年10月12日 調査部

[労使]

第一三共やアステラス製薬などの医薬品業界の12労組は10日、都内で新たな産業別労働組合の結成大会を開いたことを公表した。名称は「医薬化粧品産業労働組合連合会(総称:薬粧連合)」で、組合員数は約2万7,000人。大会では、綱領や規約・諸規定・細則を制定したほか、2019年度の運動方針と予算も確認した。初代会長は浅野剛志氏(第一三共グループ労働組合連合会)、事務局長には小西達也氏(アステラス労働組合)を選んだ。一方、12労組のうち9労組が加盟し、現在、脱退届が提出されているUAゼンセンは11日に記者会見を開き、「大変、残念な行動であり、遺憾だ」(木暮書記長)などとするコメントを発表した。UAゼンセンによると、当該組織から脱退届は出されているものの、承認はされていないという。

12労組が結成大会に参加

薬粧連合によると、結成大会に参加した組合は、第一三共グループ労働組合連合会、中外製薬労組連合会、シオノギグループ労働組合連合会、エーザイユニオン、大日本住友製薬労働組合、Meiji Seika ファルマ労働組合、三和化学研究所労働組合、アステラス労働組合、ツムラ労働組合、ジャパンワクチンユニオン、阪大微生物病研究会労働組合。このうち、産別未加盟の阪大微生物病研究会労働組合を除く10労組が上部団体(Meiji Seika ファルマ労働組合のみフード連合、他9労組はUAゼンセン)に脱退届けを提出した。参加した組合は、この他に名称等非公表の組織が一つあるという。

大会では、「産業政策の立案と実現に努め、医療・化粧品関連産業の健全な発展を追求し、働く仲間の暮らしと人々の生活向上に貢献する」などとする綱領をはじめ、規約や諸規定、細則を制定。産業政策や労働政策等の実現や組織体制の構築・強化等を柱とする向こう1年間の運動方針も確認した。

連合やインダストリオールJAFへの加盟も視野に

医薬品業界は、昨今の社会保障費抑制の動きのなかで行なわれる診療報酬改定や薬価制度の抜本改革の環境変化の影響等で、企業の生産・研究拠点の統廃合や事業譲渡、分社化などの動きが見られ、それが雇用にも影響を及ぼしている。こうしたなか、方針は「医薬化粧品産業は、国の政策・制度・方針に大きく影響される」としたうえで、「産業の健全な発展は、組合員の雇用の確保や労働条件の改善には必要不可欠だ」と指摘。産業政策の立案と実現に向けて取り組む考えや、そのために必要な政治活動を進める姿勢を示している。

また、労働政策では、医薬化粧品産業全体の水準・維持向上に向けた政策を策定するほか、労働環境を巡る変化や労働関連法制の改正への対応指針の作成や、経営・合理化対策の強化も提示。春闘時には「加盟単組が主体的に取り組むことができる方針」をつくる。

さらに、社会政策については、連合や国際労働組合との連携を掲げている。大会では上部団体への加盟も確認。今後、ナショナルセンターである「連合」と、ものづくり産業の国際産業別組織であるインダストリオール・グローバルユニオンの日本加盟組織「インダストリオール日本化学エネルギー労働組合協議会(インダストリオールJAF)」への加盟を目指し、必要な手続きを取っていく考えだ。

浅野会長、小西事務局長らを選出

組織運営に関しては、綱領に掲げた目的を実現するために「効率的・高質的な運営・体制」を進める構え。また、全ての医薬化粧品関連労組の結集を目指して、① 未組織労働者の組織化 ② 加盟労組間の連携推進 ③ 未加盟労組の加盟推進 ④ UAゼンセンとJEC連合との連携 ⑤ 他労働団体との連携――を明記している。

大会では、会長に浅野剛志氏(第一三共グループ労働組合連合会、専従)副会長に佐藤秀樹氏(中外製薬労組連絡会、専従)、斉藤和之氏(シオノギグループ労働組合連合会、非専従)、玉井光男氏(ツムラ労働組合、非専従)事務局長に小西達也氏(アステラス労働組合、専従)などの役員体制も決めた。

「産別が果たすべき方向とは違う」(UAゼンセン 南澤製造産業部門長)

一方、小売・流通業界や、繊維や医薬品などの製造業、外食産業などの幅広い業種をカバーするUAゼンセン(松浦昭彦会長、約178万人)は11日、一部マスコミに製薬労組の脱退が報じられたことを受けて、製造産業部門に所属する製薬系の9労組(約2万1,000人)が脱退届を提出して薬粧連合に参加したことに関して、都内で記者会見した。

会見で木暮弘書記長は、「新組織の発足は、かえって医薬品関連労組の分断を助長することとなり、産業を代表する機能を果たせられない」「何より、全国に分布する組合員へのケアがなされないこととなり、労働組合の本分が果たせ得るとは思えない」などと批判。製造産業部門の部門長を務める南澤宏樹副会長も、「当該労組の行動は、医薬関連労組がまとまって産業別機能を発揮していこうとする方向とは全く違い、かつ、UAゼンセンや製造産業部門の機能である中小労組を含めた業種全体の連携ではなく、一部の大手労組のみの行動で産別が果たすべき方向とは違う」との見解を示した。

医薬労組が結集する産業・労働政策推進のプラットホームを

会見での説明によると、医薬化粧品産業には、UAゼンセンやJEC連合、フード連合に加盟する労組や産別未加盟労組をあわせて、12万人強の組合員がいる。昨年来、UAゼンセンとJEC連合の間で、こうした医薬品業種に関わる組合が「医薬・化粧品産業政策・労働政策推進プラットホーム(仮称)」という形で集う「医薬労組の産業機能発揮のための連携・結集」の検討を進めてきているという。

会見では、篠原正人武田薬品労働組合委員長が製造産業部門 医薬・化粧品部会長の立場で、「それぞれの産別に分散している労働組合をいかに一つのプラットホームに集めるかを検討してきた。注意したのが、今の産業構造にも対応できるようなものであること。より幅広い他業種の労働組合を網羅できるようなプラットホームをつくる必要がある。それぞれの産別に加盟したまま理解を得ながら横串を通すようなプラットホームを考えており、これをすることで兼業メーカーやチェーンドラッグとも連携できるし、規模としても労組としての力を発揮できる」などと説明した。今後、年内あたりを目途に大枠の政策を詰めたうえで、詳細について両組織では話し合いを続けていく考えだ。

木暮書記長は、こうしたなかでの脱退行動について、「大変残念な行動であり、遺憾だ」と指摘したうえで、(報じられた)11労組に対し、「再考を促したい」と訴えた。

なお、9組織からUAゼンセンに脱退届が提出されたのは9月中旬で、まだ承認はされていない。