200万組織に向け、運動改革の検討に着手/UAゼンセンの新運動方針

2018年9月21日 調査部

[労使]

UAゼンセン(松浦昭彦会長、約169万人)は19、20の両日、神奈川県横浜市で定期大会を開催し、向こう2年間にわたる新運動方針を決定した。200万組織に向け、引き続き組織化に重点的に取り組む一方、200万組織の達成を見据えた運動の改革についても検討をスタートさせる。

運動・活動が前年踏襲の延長線上になるなどの課題も

UAゼンセンは2012年11月に、UIゼンセン同盟とサービス・流通連合(JSD)が組織統合し、結成された。結成当時の組合員数は、UAゼンセン公表ベースで141万人だったが、直近の同ベースの数字では178万人にまで拡大している。そうしたなか、運動については綱領や2016年に策定した「中期ビジョン」に基づいて運動・活動を展開しているものの、「それぞれの活動に参加するメンバーが交代していくことにより運動・活動が前年踏襲の延長線上になる傾向がある」などの課題も見え始めつつある。

方針は、「巨大化・複合化・多様化により発生するさまざまな課題や広がる可能性に対してUAゼンセンの社会的影響力が増大するなかで、組合員のためのUAゼンセン運動をさらに発展させるための不断の改革が求められている」と現状を分析。運動・活動そのものの理由を共有するなどの「原点共有による運動」に加え、2022年には結成10周年を迎えることから、現在抱える課題を解決するとともに運動をさらに発展させるための改革案である「UAゼンセン改革2.0」(仮称)の検討に着手することを打ち出した。具体的には、200万組織を展望した新たな運動を提起しながら、組織構造のあり方についての方向性も示す。2019年9月から本格的な検討に入るとしている。

「どう組織強化機能を高めていくか。検討する意味がある」(松浦会長)

あいさつした松浦会長は組織拡大と組織・運営の見直しについて「このペースでいけば、あと数年でUAゼンセンは200万人近い組織になる。しかし、それでもなお、私たちの産業・業種には未組織企業が多くある。組合のない企業で働き、意見を経営者に伝えられない労働者を組織し、ともに働く環境や処遇改善を進める組織化はまだまだ進めなくてはならない。もちろん、組合はつくっただけで何かが起きるわけではなく、民主的な運営と活発な活動、それを裏づける団結力があって初めて意味をなすものだ。今回、各都道府県支部での定期大会フォーラムにおいて参加者から『200万人への組織拡大はよいが、組織強化が追いついていないのではないか』との意見をもらった。あらためて理解してもらいたいのは、今次運動方針案の趣旨は200万人組織をめざすということではなく、そのような産別規模が見通されるなかで私たちはどのように組織強化機能を高めていくべきなのか、そのことを検討していく意味がある」と説明した。

3年連続で短時間組合員の賃上げ率が正社員を上回る

活動報告では、2018労働条件闘争のまとめや組織拡大の現状などを報告し、確認した。今次闘争では、UAゼンセンは賃金について「賃金体系維持分に加え、2%基準で賃金を引き上げる」ことを要求内容とした。正社員組合員に関する妥結状況をみると(7月27日時点)、全体では1,873ある参加組合のうち1,567組合が妥結し、「体系維持原資」と「賃金引上分」を合わせた賃上げ全体の妥結額の単純平均は4,631円(1.86%)、賃金体系維持分を確立している組合(394組合)だけでみた「賃金引上分」の単純平均は1,276円(0.47%)となっている。加重平均ではそれぞれ6,056円(2.12%)、1,776円(0.61%)となっており、単純平均でみても、加重平均でみても昨年同時期を上回った。

製造産業、流通、総合サービスの各部門別をみても、賃上げ全体、「賃金引上分」それぞれの妥結額の平均は昨年同時期を上回った(単純平均、加重平均とも)。

一方、短時間組合員(パートタイマー)の妥結状況をみると、時給引上額は単純平均で20.8円(2.18%、376組合)、加重平均で23.3円(2.47%、77万3,150人)となっている。額で比較可能な319組合で前年と比べると、単純平均で1.3円プラス、加重平均で3.2円プラスとなった。加重平均の引上額を正社員組合員と比べると、3年連続で賃上げ率、妥結組合員数とも短時間組合員が正社員を上回った。

23組合がインターバル規制で前進

賃金闘争以外の取り組みをみると、労働時間短縮では、57組合が年間所定労働時間の短縮で合意し(昨年からほぼ倍増)、短縮時間の平均は19.8時間となっている。年間休日数では59組合が増加させることで合意し(昨年から倍増以上)、増加日数の平均は2.4日となっている。インターバル規制の導入・延長では、11時間の内容で9組合が合意し、10時間では8組合、8~9時間で6組合が合意した。65歳定年に向けた取り組みでは、7組合が65歳定年への移行で合意(65歳定年を要求した組合数は123組合)。このほか、61歳定年、62歳定年でそれぞれ1組合が合意した。

松浦会長は賃上げの妥結結果について「全部門、大手も中小(300人未満)も前年比アップの妥結となったが、その中でも一番中小組合が多く、賃上げ額の差も大きい製造産業部門において、300人未満組合の前年比アップ額が大手を上回る妥結を2年連続で実現できたことは特筆に値する成果だ」と評価した。

ハイディ日高など、この1年で約3万人を組織化

組織拡大では、この1年間での新加盟組合数が39組合・5分会で、3万1,197人が新たに組合員となったとの報告があった。報告では、2018年9月19日現在の組織現勢は昨年度より5万7,500人増加し、178万3,856人(うち、103万8,760人は短時間労働者)となったとしている。この1年で新規加盟した主な組合としては、ハイディ日高労働組合(9,000人)、ピーシーデポグループユニオン連合会ピーシーデポユニオン(2,030人)、日本介護クラフトユニオンSOMPOケアネクスト分会(7,012人)、ミリアルリゾートホテルズ・フレンドシップ・ソサエティー(2,247人)などがある。一方、報告した木暮弘書記長は、部門名や組合名などは明らかにしなかったが、現在、「組織脱退問題」が発生しており、中央執行委員会で報告を受けながら対応にあたっていることを明らかにし、「(こうした動きに)同調することなく、加盟組合は同じ仲間として引き留めにあたってほしい」と述べた。

大会ではこのほか、「国の基本問題に関する中央執行委員会見解」を特別報告した。報告は、「世界の現実を踏まえれば、平和と国家の独立を維持するためには、外交努力とともに、適切な防衛力が必要である」などと指摘し、憲法論議の必要性について「私たちは、変化する世界の状況の中で平和国家の理念を継承していくために、憲法の改正に向けて議論を進めなければならない。国民憲章を踏まえて、日本の主体的な判断により必要な場合に、武力行使を含めた平和維持のための行動ができるよう、国民的な合意を前提に、憲法と法律の必要な整備をおこなっていくべきである」などとしている。また、エネルギー政策では、原子力エネルギーについて、「エネルギー安全保障・安定供給、経済性、地球環境保全の各面で優れているが、福島第一原子力発電所事故のような甚大事故につながるリスクとともに、高レベル使用済核燃料の最終処分方法が未定という課題がある。安全確保とこれらの課題への対応を進めながら活用すべきである」との見解を示している。