2014春闘以降の継続した賃上げ獲得を評価/基幹労連中間大会

2018年9月12日 調査部

[労使]

鉄鋼、造船重機、非鉄関連などの労働組合で組織する基幹労連(神田健一委員長、約26万4,000人)は6、7の両日、広島県広島市で定期中間大会を開き、向こう1年間の活動方針を決めた。大会では今春闘の最終総括である「AP18春季取り組みの評価と課題」も確認。「AP2014春季取り組みから継続して賃上げを獲得したことは評価でき、働く者全ての労働条件の底上げ・底支えに対して、一定の社会的役割を発揮した」などと総括する一方で、要求額に対する規模間での回答額の乖離や業況の違いによる獲得水準に開きがあった点などを指摘。中小組合の支援等を通じて格差改善に取り組むAP2019では、「賃金改善に取り組む加盟組合に対し、積極的にフォローを行なっていく」姿勢を強調した。

基幹労連は、「働く人への投資で魅力ある労働条件をつくり上げることで、産業・企業の競争力強化との好循環を生み出す」との考え方の下、2006年の労使交渉から2年サイクルの労働条件改善(AP:アクションプラン)で統一要求を掲げる形をとっている。

2018春闘は2018年度と19年度の2年分について賃上げ交渉する「総合改善年度」。昨夏の大会で確認した「産業・労働政策中期ビジョン」を踏まえ、賃金や一時金、退職金、労働時間・休日・年休付与、割増率関連、労災通災付加補償、65歳現役社会の実現、ワーク・ライフ・バランス等の労働条件全般の改善に取り組んだ。

取り組み方針は賃金改善について、「産別一体となって、2018年度・2019年度の中で2年分の要求を行う」とし、要求額は「2018年度3,500円、2019年度3,500円以上を基本」とした。そのうえで、「具体的には部門・部会のまとまりを重視して要求を行う」ことも明記することで、2019年度の個別年度で「時々の環境や産業・企業の状況を踏まえ、部門・部会の判断ができるよう」柔軟性を持たせた。その結果、2年分の交渉を行った鉄鋼総合等の組合では、18年度3,500円、19年度3,500円の賃金改善要求を行い、18年度1,500円、19年度1,500円で決着。総合重工等の2018年度のみの単年度で交渉した組合は、18年度の単年度で3,500円を中心に要求し、その多くが1,500円の賃金改善で妥結した。

AP18では回答を引き出した得た組合の8割が前進

こうした状況について「AP18春季取り組みの評価と課題」は、「(大手の)総合組合の多くが2018年度1,500円という世間動向に遜色ない水準を引き出し、2019年度分を要求した組合においても2018年度と同水準の1,500円の回答を引き出した」と報告。さらに、大手以外の業種別組合においても、「総合組合と同水準となる1,500円の回答を引き出した組合や、1,500円には届かないものの昨年を上回る回答を引き出した組合が多数あり、全体としては昨年を上回る回答を引き出している」などと評価した。具体的には、AP18春季取り組みで回答を引き出した302組合の8割強に当たる245組合が前進回答を獲得している。「評価と課題」は、「総じてみれば、AP14春季取り組みから継続して賃上げを獲得したことは評価でき、働く者全ての労働条件の底上げ・底支えに対して、一定の社会的役割を発揮した」と総括している。

中・長期的視点での格差改善や業況による獲得水準の差が課題に

ただし、ゼロ回答の組合も含めると、2018年度の獲得額は単純平均で1,098円。企業規模別では、300人未満は985円、300~1,000人未満で1,153円、1,000人以上が1,527円と、規模間での水準差が見られる。「評価と課題」はこうした点にも触れ、「規模別による水準差の傾向は過去と比べ大きくは変わっていない」として、中・長期的な視点での格差改善の取り組みを今後の課題に挙げた。また、「業種別で見ると、業況の違いにより獲得水準に差が付いていることから、基幹労連一体となりうる主導性発揮による水準の引き上げも課題」だとしている。

2年サイクルの後半年にあたるAP19の「個別改善年度」では、中小組合の支援などを通じて格差改善に取り組むことになる。「評価と課題」は、「今次取り組みにおいて、(14春闘以降の)5年目にして初めて賃金改善要求を行った組合や、有額回答を引き出した組合もあり、賃金改善の取り組みの裾野は広がってきた」と評価する一方で、「2018年度の回答について『別途協議』『見送り』となった組合に対し、個別改善年度での取り組みも含めてフォローしていく必要がある」ことを強く訴えている。

65歳現役社会の基盤の整備が

また、AP18では産別重点項目として「65歳現役社会」の実現に向けた労働環境の構築を求めることとし、方針策定に当たっては、「新たな制度の導入」や「労使話し合いの場の設置」、「現行制度の改善」を具体要求内容とした。275組合が要求もしくは要求によらない取り組みを行い、「新たな労使検討の場の設置や、既存の労使話し合いの場で引き続き議論を深めていきたいといった回答(166組合)に加え、60歳以降者の賃金改善をはじめとした現行制度の改善(93組合)」等の回答が示された。

「評価と課題」は、「経営側が組合の主張を一定程度理解した結果であり、具体的な取り組みを進めるにあたり、その基盤が整備された」と受け止めたうえで、今後の協議に備えて、「具体的な留意点や他産別の動向等、労働環境の構築に資する対応や情報の発信を進めていく」ことを明記。その一方で、18春闘で労使の話し合いの場が確認できなかった組合に対しては、「AP19春季取り組みにおいて確実に労使で議論する場を確立するよう取り組まなければならない」と総括している。

こうしたAP18の結果について神田委員長は、「2014年から5年、6年連続の賃金改善をはじめ、65歳現役社会の実現に向けた取り組み等に一定の成果を上げた。互いの横展開と心合わせ、知恵出しと行動が実を結んだものだ」と強調した。

政党・政治勢力との関係の見直しも

大会では、政治方針の見直しも行なった。「政党・政治勢力との関係」について、「支持・支援政党を民主党とする」とする従来の方針が「実態にそぐわない状況となっている」として、「基幹労連の政策実現を推進する観点から、支持・支援政党は都度決定していく」ことにした。そのうえで、来年の参院選ではJAMとの政策協定に基づき、JAMの組織内候補である田中ひさや(久弥)氏を基幹労連推薦候補予定者として支援することも決めた。