今期交渉を「全体の底上げが進んだ」と総括/自動車総連定期大会

2018年9月12日 調査部

[労使]

自動車総連(髙倉明会長、77万人)は6、7の両日、福島県郡山市で定期大会を開催し、今春の交渉の最終総括である「2018年総合生活改善の取り組み総括」を確認した。賃金改善分を獲得した単組の数と割合、および賃金改善の平均獲得額も昨年実績を上回ったことから髙倉会長は、「全体の底上げが進んだ」と評価した。

賃金改善の平均は1,479円で昨年を245円上回る

今春の賃上げ交渉では、自動車総連は平均賃金要求で3,000円以上の賃金改善分を設定することを要求基準とした。回答状況の最終集計(9月6日現在)によると、集計単位となる1,095単組のすべてで解決しており、そのうち849単組(77.5%)が賃金改善分を獲得した。賃金改善分の単純平均は1,479円で、獲得した単組の割合も、また平均の改善額も昨年実績(72.6%、1,234円)を上回る結果となった。

賃金改善分の平均額を業種別にみると、「メーカー」が昨年比527円増の1,750円(13単組)、「車体・部品」が同193円増の1,133円(323単組)、「販売」が同267円増の1,724円(438単組)、「輸送」が同152円増の1,484円(17単組)、「一般」が同367円増の1,637円(58単組)と、すべての業種で昨年を上回り、獲得割合もすべての業種で増加した。

組合規模別にみると、「3,000人以上」が昨年比267円増の1,521円、「1,000~2,999人」が同181円増の1,233円、「500~999人」が同199円増の1,302円、「300~499人」が同205円増の1,317円、「300人未満」が同273円増の1,586円で、「300人未満」の賃金改善分が最も高い額となった。

トヨタ回答は「大手追従・準拠した春闘のあり方に対する問題意識の表れ」

髙倉会長はあいさつで、これらの結果について「全体の底上げが着実に進んだ」と評価した。ただ、取り組み総括を説明した中川義明・事務局次長は、22.4%の単組が賃金改善分を獲得できなかったことなどを紹介し、「(結果は)部門によるバラツキがある。特に中小単組や独立系企業の単組に対するサポートが必要だ」と課題もあげた。

今回の大手メーカーの賃上げ交渉では、トヨタの経営側が回答額について具体的な金額を公表しなかった。この点について取り組み総括は「大手追従・準拠した春闘のあり方に対する経営側の問題意識の表れ」との見方を示し、「取り組みの成果を共有できない状況は、『共闘』効果を損なうのと同時に、加盟単組にとっても組合員への説明や取り組み評価を困難にする」とその問題点を指摘するとともに、「こうした姿勢が無為に拡がっていくことはあってはならない」などと言及した。

非正規労働者の賃上げは昨年実績を大幅に上回る

このほかの回答項目の最終結果をみると、20円という具体的な時給の引き上げ基準を掲げて取り組んだ非正規労働者の賃上げでは、賃金について要求した516単組のうち、386単組が回答をうけ、有額換算が可能な単組の獲得平均額は16.1円で、昨年実績の9.3円を大幅に上回った。年間一時金については、全体平均月数が4.46カ月(昨年4.41カ月)で、13メーカー単組だけでみると5.78カ月(昨年5.60カ月)となっている。

来年の生活改善の取り組みに向けた検討について髙倉会長は「格差是正・底上げをさらに前進させるための具体的要求方針や闘争のあり方、また、上げ幅だけではなく、絶対額を重視した取り組みの強化など、課題を整理してのぞみたい」などと述べた。

『WIN-WIN最適循環運動』について特別報告

大会ではこのほか、自動車業界内での付加価値の適正な循環を目指す「付加価値の『WIN-WIN最適循環運動』の現時点での取り組み成果について特別報告した。この運動は2016年1月からスタートしており、2018年が活動の最終年となる。販売部門では、休日カレンダーの業界内での統一を図るため、三大連休(年末年始、ゴールデンウィーク、お盆)についてコア日(重点取り組み休業日)や連休日数確保の取り組みを進めることなどを検討。加盟単組における長期連休実態調査なども行って検討し、販売部門としてのコア日を設定することなどを決めたという。販売・輸送などにおける月間・年間における繁閑差の解消に向けた取り組みでは、業界団体との意見交換を行い、繁閑差を踏まえた事業運営の可能性を検討していることなどが報告された。