「業種や業態、働き方にこだわらず、すべての働く仲間の組織化にも全力」(安河内会長)/JAMの定期大会

2018年9月5日 調査部

[労使]

金属、機械関連の中小労組を多く抱える産別労働組合、JAM(安河内賢弘会長、36万6,000人)は8月30、31日の両日、岐阜県岐阜市で定期大会を開催し、昨年の定期大会で決定した2年間の運動方針を補強する「2019年度活動方針」を確認した。JAMは来年の結成20周年を目前に控え、新たな運動・活動や組織などの姿について内部で議論している。あいさつした安河内会長は、来年以降の組織化の取り組みについて、他業種やさまざまな働き方の労働者も組織化の対象とするなど、新たな発想を取り入れていく考えを表明した。

毎年、1万人増える組織をめざす

1999年の結成当初、50万人近かった組合員数も、現在は、労働組合基礎調査(厚生労働省)ベースで36万人台となっており、JAM自らが公表している数字では35万人にまで減少している。50万人への組織拡大を目標とする中期的な組織化戦略である「アタック50」(2019年大会までが活動期間)を5年前の定期大会で確立したものの、倒産や廃業などで解散する組合も少なくなく、この間、組合員数はほとんど増えていないのが現状だ。

あいさつした安河内会長は、JAMが結成時に確認した文書に「労働組合の力はより多くの組合員の団結と連帯にある」と書かれていることを紹介し、「JAMが理想とする中小労働運動をさらに推進するためにはより多くの仲間の結集が必要だ」と強調した。「中小労働運動を連合労働運動のど真ん中に据える」ためには、「理想は連合における組織人員の割合を世の中の割合と同等にすること。すなわち、大手企業労働者30%、中小企業労働者70%にすることだ」と述べた。アタック50での50万組織にするという目標について「いささか意欲的すぎる」とし、「当面の目標として、毎年1万人ずつ、当たり前のように組織人員が増えていくような組織に変革していきたい」と現実的な取り組み方を提起。その具体的な方法として、「組織拡大にタブ-はない」と強調しながら、製造業労働者に加え、「業種や業態、働き方にこだわらず、すべての働く仲間の組織化にも全力で取り組んでいく」と表明した。

なお、JAMにはすでに、マクドナルドやレンタルDVDのゲオなど製造業以外の業種の組合も加盟している。安河内会長は、組織的な議論は始めていないと断ったうえで、新たな組織化の対象となる労働者の例として、「学生アルバイト、課長クラスの管理職、雇用類似の労働者、外国人労働者、失業者など」をあげた。さらに安河内会長は、「産別直加盟の組合員を増やすことができないかとも考えている」とし、「課題を1つずつ克服しながら、運動を前進させていきたい」と呼びかけた。

来年の大会で新たな姿を決議

JAMは来年の定期大会で、2019年以降の運動・活動や組織体制、財政基盤など、JAMがめざすべき姿を示す「イニシアティブ決議」(仮称)を採択する。その内容は、内部において「JAM運動共創イニシアティブ・プロジェクト」として議論しており、また、本部三役が全国の地協、地方JAMと対話した内容なども反映させる方針。組織化については、ドイツの金属産業労組であるIGメタルの手法を直接学んでおり、安河内会長が提起した内容も含め、得られた知見を参考にして何らかの改革を行う方向だ。決議に盛り込まれた内容で、すぐに運動に反映できるものは来年からの新運動方針に盛り込む。

「来年の春闘を減速させる必要ない」(安河内会長)

大会ではまた、2018年春季生活闘争総括を確認した。回答の傾向や総括内容は、5月の中央委員会で確認した中間総括とほぼ変わらない。総括に盛り込まれた直近の回答状況をみると、賃金改善分の獲得額は1,597円(回答を受けた賃金構造維持分明示の824組合のうちの614組合)で、この5年間では2015年に次いで高い水準となっている。また、規模別にみると、300人未満だけで集計した獲得額(1,625円)も、100人未満だけで集計した獲得額(1,704円)も、全体平均を上回り、中小組合の健闘が目立った。

安河内会長はこうした結果について、「それぞれの単組が、JAM方針に従い、自らの賃金実態を詳細に分析し、職場組合員の声を明確に示しながら会社と粘り強く交渉した成果だ。この一連の取り組みこそが個別賃金要求の神髄であり、経団連の主張する支払い能力主義に対するアンチテーゼだ」と評価する一方、「JAMの個別賃金の取り組みはいまだ道半ばで、立ち止まることはできない」と強調。世界経済が順調に推移していること、個人消費が改善を続けていること、消費者物価指数が確実に上昇していることに加え、労働分配率が低迷を続けていることなどを理由にあげて、来春闘に向け、「マクロ経済が示す数値からは来年の春闘を減速させる必要はない」と言い切った。

定期大会ではこのほか、かねてから来年予定される参議院選挙の組織内候補に決定していた「田中ひさや」氏(田中久弥・JAM本部副会長)について、国民民主党から立候補することを正式決定した。