国際活動と国内活動の連携など活動内容を絞り込み/金属労協(JCM)の定期大会

2018年9月5日 調査部

[労使]

自動車総連、電機連合、JAM、基幹労連、全電線の5産別でつくる金属労協(JCM、髙倉明議長、199万人)は4日、都内で定期大会を開催し、向こう2年間の新運動方針を決定した。金属労協の強みを活かすため、活動の主軸を3つに絞り、運動する具体的な項目を15に絞り込んだ。国際活動と国内活動の相互連携などを目指す。

インダストリー4.0の議論をフォロー

金属労協では、一般会計の支出実績の5割近くを、国際産別組織である「インダストリオール」への加盟費が占めるなか、単年度収支は2013年度以降、赤字が続いている。そのため、組織の効率的な運営とともに、活動内容を「選択と集中」に向けさせるための検討を行ってきた。今回の方針は、これまでの検討結果を踏まえ、金属労協として活動を継続していく項目と強化していく項目、また、連合などに移管したり縮小させていく項目を整理。活動の主軸について、① 国際活動と国内活動の相互連携 ② 産別を越える「場」の提供 ③ 産別共通課題への取り組み――とするとし、具体的な運動項目を15に絞り込んだ。

①の「国際活動と国内活動の相互連携」では、インダストリオールに加盟していることなどによる国際的なネットワークを活かした活動を展開する。インダストリオールには積極的に中核的組織として積極的に参画、意見具申していくとし、特に貿易やインダストリー4.0などの議論について個別にフォローし、国内における議論との連動を図るとしている。

※インダストリオール インダストリオール・グローバルユニオン。2012年に国際金属労連(IMF)、国際化学エネルギー鉱山一般労連(ICEM)、国際繊維被服皮革労働組合同盟(ITGLWF)が統合。

※インダストリー4.0 元の意は、ドイツ政府が推進する製造業のデジタル化・コンピューター化を目指すコンセプト、国家的戦略的プロジェクト。

② の「産別を越える『場』の提供」では、産別を越えて人が集まり相互交流できる場をつくり、労働運動を担う人材を育成する「労働リーダーシップコース」を引き続き行うほか、地方ブロック代表者会議を年2回開催して、地方ブロックとの情報交換・共有化を図るほか、地方からの意見を本部の取り組みに反映させるなどとしている。

③「産別共通課題への取り組み」では、社会的波及効果を目指した賃金・労働諸条件の改善などを盛り込んだ。雇用の安定と多様な人材の活躍や、同一価値労働同一賃金などを基本とする「第3次賃金・労働政策」(2016年に確立)の実現を目指し、春季生活闘争などを展開する。春季生活闘争では、向こう2年間もJCMとしての春闘方針を策定するほか、「引き続き賃金を重視し、賃上げの社会的相場形成に向けたJC共闘強化に努めていく」と記述した。

特定最賃の目標水準設定の可能性を検討

また、金属産業にふさわしい特定最低賃金(産業別最低賃金)の実現のため、企業内最賃協定の締結拡大と水準引き上げのための共闘を強化するほか、特定最賃の目標水準の設定の可能性について検討することを掲げた。特定最賃については、地域別最低賃金(地賃)の引き上げに追いつかず、無効となる事例も出てきており、金属労協が2018年1月に開いた「2018年最低賃金連絡会議」では、各産別から「特定最低賃金の中期的なあり方について、早期に検討すべき」との意見が本部に対して出された。

そのため金属労協本部では、全産別を交えた意見交換会を立ち上げて同年4月から検討をスタート。地方組織から「特定最賃の中期的にめざす水準を金属労協として掲げていくことが、特定最賃の金額改正に力になる」との要望もあり、意見交換会では特定最賃の当面めざす水準の設定について検討したが、特定最賃は最も低い企業内最賃協定額を上回れない性質もあることなどから、その前に、現在の金属労協の企業内最賃協定額の目標基準である「月額16万4,000円」を迅速に実現する必要性を強調。そのうえで、その先のめざすべき水準をさらに検討していくことを提案した。なお、16万4,000円を時間給に換算すると1,019円となる。報告は東京、神奈川の地賃が2020年頃にはこの水準を超え、さらに2022年頃には1,100円程度程度に達することが想定されるとして、「当面、少なくともこれに抵触しない水準(月額17万7,000円程度、時間あたり1,100円程度)を念頭に置いておく必要がある」としている。

賃上げの裾野は大きく広がる

大会ではまた、春季生活闘争の最終総括である「2018闘争評価と課題」を確認した。評価と課題は賃上げの取り組みについて「賃上げ獲得組合の割合が回答組合の約7割となり、299人以下の組合でも約6割となった」などとし、「賃上げの裾野が大きく広がった」と評価した。ただ、全体の3割、中小の4割では賃上げを獲得できなかったことなどから、「賃上げが定着したとまでは判断できない」とも述べた。

今回の闘争では、トヨタの賃上げ交渉において、経営側から賃上げ額が公表されない異例の動きがあったが、これに関連して評価と課題は、「今次闘争では、経営側が賃上げ額を公表しない動きもみられたが、未組織労働者を含めた社会全体に対して、賃上げの相場形成と波及を果たしていくことが労使の社会的責任である」とし、「産別交渉において直接的な賃金決定を行わないわが国では、社会的相場形成の中で、大手の賃上げ額がマクロレベルの成果配分の重要なものさしとなっていることを共通の認識としていく必要がある」とした。

あいさつした髙倉議長は、これから方針案策定に向けた議論が本格化する2019闘争について「特に、格差是正・底上げのさらなる推進、賃金水準重視の取り組み強化、社会的な相場形成のあり方、人への投資の考え方など、取り組み課題を整理して論議に臨みたい」と述べた。

役員改選を行い、髙倉議長をはじめ副議長、事務局長の3役は全員留任となった。