臨時・非常勤職員の制度改革に向けた統一対応方針を提起/自治労定期大会

2018年8月29日 調査部

[労使]

地方自治体の職員などを組織する自治労(川本淳委員長、約79万人)は8月23、24の両日、岐阜県岐阜市で定期大会を開催した。地方公務員の臨時・非常勤職員の制度改革により、2020年4月から新たな職員制度が開始されることから、各県本部や自治体単組が統一した姿勢で勤務条件などについて自治体当局との協議にあたれるよう、統一対応方針を確認した。

「会計年度任用職員」制度への対応を確認

総務省によると、地方公務員の臨時・非常勤職員は全国の自治体で64万人いる。現在の制度では、臨時・非常勤職員は専門性が高い業務を行う「特別職」と「一般職」の二つに分かれているが、通常の事務員が特別職で任用されたり、一般職の非常勤職員の任用ルールが明確でないなどの課題があることから、臨時・非常勤職員の制度改革を行うために昨年、改正地方公務員法などが成立。これにより、新たな一般職非常勤職員制度として「会計年度任用職員」制度が創設され、任用が厳格化されるとともに、任用ルールや勤務条件などが明確にされることとなった。「会計年度任用職員」制度は2020年4月から施行されることになっている。

各自治体は制度開始までに、臨時・非常勤職員の実態を把握することや、勤務条件も含めた制度整備を行う必要がある。制度スタートまで1年以上あるとはいえ、議会での条例改正や実際の募集・採用にかかる時間などを考慮すると、各自治体の単組はできるだけ早い時期から、本格的に人事当局との協議にあたる必要がある。そのため、自治労は今回の定期大会で、都道府県本部や各単組が統一的な対応を図れるよう、統一対応方針を提案し、確認した。

協議にあたっての妥結基準も示す

統一対応方針によると、2018春闘で非正規労働者の処遇改善・組織化と会計年度任用職員制度の構築に向けた本格的な交渉・協議を開始するとしたものの、春闘期に会計年度任用職員にかかわる要求書を提出した単組は約半数にとどまり、また、労使交渉を実施した単組は3割だったという。方針は、会計年度任用職員制度の開始に備えた取り組みは「大幅に遅れている」と問題視。そのため、夏以降の2018確定期において、「産別統一闘争として、すべての自治体単組で統一的に制度協議を進める」とした。さらに、各自治体で制度構築するにあたっては、労働条件が「低位平準化」しないよう、「本部の示す妥結基準を基本に、単組における妥結にあたっては県本部との事前協議を前提とする」と記述した。

具体的な取り組みの内容をみていくと、各自治体単組は、方針に示された「自治労要求モデル」を参考にして、対自治体要求書を作成し、提出する。すべての自治体単組が、9月18日~10月5日の日程(現業や公共企業体の単組が統一闘争する日程と同じ)を基準に要求書を提出する。集中・交渉ゾーンは10月と11月に設定した。

方針は事前協議にあたっての妥結基準を盛り込んだ。妥結基準は7項目からなり、具体的には、① 労働者性の高い臨時・非常勤等職員については、常勤職員、もしくは会計年度任用職員等に移行し、継続雇用とすること ② 会計年度任用職員の給料については、常勤職員(任期の定めのない常勤職員いわゆる「正規職員」)と同一基準での運用(給料表の適用、前歴換算)とし、職務内容を踏まえて均衡・権衡させること ③ 期末手当は、最低でも、常勤職員の支給月数(現行2.6月)を支給すること ④ 常勤職員との均衡を基本として、通勤手当、地域手当、特地勤務手当、へき地手当、特殊勤務手当、農林業普及指導手当、災害派遣手当、時間外勤務手当、休日勤務手当、夜間勤務手当、宿日直手当、管理職手当、管理職特別勤務手当を支給すること ⑤ 要件を満たす会計年度任用職員に対して退職手当を支給すること ⑥ 常勤職員との権衡に基づき、休暇等を制度化すること ⑦ 要件を満たす会計年度任用職員の共済、社会保障および労働保険の加入を確実に行うこと――となっている。

方針は、協議と並行して会計年度任用職員の組織化も早急に進めると明記。組織化の取り組みはすべての単組で進めるとしている。川本委員長はあいさつで「臨時・非常勤等職員の雇用の継続と正規職員との均衡をはかる『同一労働同一賃金』の実現に向けて、全単組が産別統一闘争として、処遇改善を図るとともに、『非正規労働者10万人組織化』を加速させていくことを強くお願いする」と組合員に呼びかけた。

定年は「国に遅れることなく引き上げを」

大会ではまた、夏以降の賃金確定闘争を柱とする当面の闘争方針を決定した。8月に出された人事院勧告は、国家公務員の月例給について655円(0.16%)、一時金について0.05月分引き上げる内容で、それぞれ5年連続での引き上げとなった。

川本委員長はあいさつで、「組合員の期待に一定程度応える勧告と言える」と評価。闘争方針は、この人事院勧告を踏まえ、自治体当局との確定闘争において、月例給の水準引き上げや一時金の支給月数の引き上げ、諸手当の改善などを柱に据えて取り組むとしている。人事院は勧告と同時に、国家公務員の定年について、段階的に65歳まで引き上げる報告を行ったが、闘争方針は、地方公務員の定年引き上げに向け、「総務省に対して自治労および地方自治体の意見を十分踏まえた上で、国に遅れることなく定年を引き上げるよう必要な対応を求める」と強調している。

方針討議では、会計年度任用職員制度の開始に向け、「制度について、正職員の給与が下がる、雇用の置き換えが進む、採用が抑制されるなど間違った受け止め方も見られる。制度の目的は総務省も言うように非正規職員の処遇改善であり、制度構築に向けて正職員と非正規職員がともに取り組んでいくという姿勢が必要だ。当事者の声も真摯に受け止めながらスピード感をもって取り組まなければならない」(大阪府)などの意見が出された。