賃金改善額は平均6,350円(2.17%)で前年並みに/サービス連合大会

2018年7月25日 調査部

[労使]

ホテル・旅館業、旅行業などの労働組合でつくるサービス連合(後藤常康会長、約4万5,000人)は7月19日、都内で定期大会を開き、「2018春季生活闘争のまとめ」を確認した。「まとめ」によると、2018春闘の賃金カーブ維持分を含めた賃金改善額は、平均で6,350円(2.17%)と前年とほぼ同水準。後藤会長は、「この5年間で6割近い加盟組合が実質的な賃金改善の回答を引き出した」と述べたうえで、賃上げの取り組みを定着させる必要性を訴えた。

加盟組合の約6割がベア等の実質的な賃金改善を要求

サービス連合では、中期的な賃金目標として「35歳年収550万円」を設定。2014春闘以降はその実現に向けて、賃金カーブを維持したうえで0.5%以上のベースアップ等の「実質的な賃金改善」の要求を掲げている。

「2018春季生活闘争のまとめ」によると、2018春闘で要求書を提出したのは、6月19日時点で136組合。そのうち、97組合が実質的な賃金改善を求めた。サービス連合によると、18春闘で実質的な賃金改善を求めた加盟組合は、約6割になるという。

交渉の結果、6月19日までに合意に至った組合は111。賃金制度の維持や賃金カーブ維持分の確保については91組合、実質的な賃金改善では61組合が回答を引き出している。

賃金カーブ維持分等も含む賃金改善額を見ると、数値の報告があった26組合の平均は6月19日現在で6,350円(2.17%)と、前年同日の6,424円(2.25%)とほぼ同水準となっている。業種別では、ホテル・レジャー(6組合)が5,433円(2.22%)で前年同日(4,788円、1.94%)より額で645円、率で0.28ポイント高かったのに対し、ツーリズム・航空貨物(20組合)は6,894円(2.14%)で前年同日(7,460円、2.41%)を566円、0.27ポイント下回った。ベア等の実質的な賃金改善分については、報告のあった10組合の平均が3,084円(1.08%)と、こちらも前年同日(3,192円、1.08%)と同水準だった。

また、年間一時金については合意・妥結した33組合の平均が3.12カ月となり、前年同日(33組合の平均3.15カ月)をやや下回った。このほか、22組合が総実労働時間短縮に向けた回答を、3組合が60歳以降の雇用確保に関連する回答をそれぞれ得ている。

一方、契約社員やパートタイマー等の待遇改善に向けた取り組みでは、賃金改善について64組合が要求し43組合が合意。一時金についても57組合が要求し、49組合で合意した。そのほか、無期労働契約への転換に関しても7組合が取り組み、5組合で合意している。

「実質的な賃金改善を基軸とした年収改善の取り組みの継続を」(後藤会長)

後藤会長はこうした18春闘の結果について、「実質的な賃金改善を要求した組合は全体の約6割。交渉中は先行きの不透明感や人件費上昇が経営に与える影響が大きいこと、過去4年間の賃上げもあり賃金水準が相応な水準になっていることなどを理由に、回答に慎重となる企業側と組合側の主張との間に隔たりがあり難しい交渉が続いたが、粘り強く交渉した結果、この5年間で6割近い加盟組合が実質的な賃金改善の回答を引き出している」などと評価したうえで、「これまで継続してきた賃金改善への取り組みが浸透しつつある」と総括した。その一方で、「全体としては、底上げを意識した実質的な賃金改善の要求の徹底までには至らず、依然として課題が残った」などと述べ、実質的な賃金改善を基軸とした年収改善の取り組みを継続していく考えを強調した。