中小賃上げ率のプラス幅が全体・大手を上回る/連合の春闘まとめ

2018年7月25日 調査部

[労使]

連合(神津里季生会長)は7月20日に開いた中央執行委員会で、「2018春季生活闘争まとめ」を確認した。同月4日時点で集約した賃上げ回答(平均賃金方式)は、金額で前年比222円増の5,934円、率も前年より0.09ポイント高い2.07%となった。賃上げ率では、300人未満の中小組合が1.99%で、前年を0.12ポイント上回る高水準になっている。こうしたデータを踏まえ、「まとめ」は「『大手追従・大手準拠などの構造を転換する運動』が定着・前進している」などと総括している。

賃上げ額は5,934円(2.07%)

連合が7月4日午前10時時点でまとめた最終集計結果によると、平均賃金方式で回答を引き出した5,575組合の回答(集計組合員数による加重平均)は、額で5,934円、率で2.07%となった。前年に比べると、額で222円増、率でも0.09ポイント上回った。

これを規模別に見ると、組合員数300人以上の大手組合(1,502組合)の回答は、額で前年比202円増の6,111円、率も同0.09ポイント増の2.08%となった。他方、組合員数300人未満の中小組合(4,073組合)の回答は、額で4,840円、率で1.99%。こちらも額で前年より350円増、率も0.12ポイント上がっているうえ、賃上げ率では全体集計および300人以上組合に比べプラス幅が大きくなっている。

定昇相当分除く賃上げ分は1,605円、0.54%に

ベースアップに相当する賃上げ分が明確にわかる2,619組合の集計結果を見ると、定期昇給相当分込みの賃上げ額は6,409円(うち賃上げ分1,605円)、率は2.20%(同0.54%)。賃上げ分は前年に比べ、額で210円増、率で0.06ポイント上昇した。

規模別で見ると、組合員数300人以上の大手組合(980組合)の定期昇給相当分込みの賃上げ額は6,516円(うち賃上げ分1,614円)、率は2.20%(同0.52%)で、賃上げ分は前年に比べ、額で208円増、率で0.05ポイント上昇した。組合員数300人未満の中小組合(1,639組合)の定期昇給相当分込みの賃上げ額は5,579円(うち賃上げ分1,534円)、率は2.25%(同0.63%)で、こちらも賃上げ分は額(239円増)、率(0.07ポイント上昇)ともに前年より高い。

なお、年間一時金は、2,599組合の回答(組合員数による加重平均)で月数4.92カ月となり、前年を0.11カ月上回った。

非正規労働者の賃上げは時給・月給とも前年比増

非正規労働者の賃上げは、時給が358組合の回答(組合員数加重平均)で24.70円となり、前年比3.41円増(平均時給は970.62円)。月給は145組合の回答(同)で前年より640円高い4,146円となっている。

「大手追従・大手準拠などの構造を展開する運動」が定着・前進

「まとめ」は、こうした最終集計結果の詳細分析を踏まえ、「昨年を上回る組合(昨年同時期比710組合増)が賃上げを獲得しており、『賃上げ』の流れは力強く前進している」などと評価。そのうえで、300人未満の中小組合の定昇相当分を除く賃上げ率が昨年同時期および全体集計を上回っている点に着目し、「『大手追従・大手準拠などの構造を展開する運動』が定着・前進している」と総括した。

非正規労働者の賃上げが時給・月給ともに昨年を上回ったことなどにも触れ、「職場の生産性向上には雇用形態にかかわらず同じ職場で働くすべての労働者の処遇改善が必要との労使の認識が深まったもの」と指摘し、今後も「非正規労働者の賃金のさらなる引き上げに向けて、個別労使での協議・交渉の充実をさらに求めていく必要がある」とした。

その一方で、賃金格差是正の取り組みをより実効あるものにしていくためには、「働き方も含めた『サプライチェーン全体で生み出した付加価値の適正分配』の運動をさらに進めるとともに、賃金の上げ幅だけでなく、賃金の絶対額にこだわった取り組みが不可欠だ」として、「個別賃金要求に向けて、賃金データの収集と情報開示および賃金制度の確立をさらに進めていく」必要性を強調している。

目立つ法改正事項の先行的な取り組み

一方、2018春闘では、「すべての労働者の立場にたった『働き方』」の見直しについても、前進が見られている。

「長時間労働の是正」に関する要求では、延べ7,348件。そのうち2,801件で回答を引き出した。具体的には、「36協定の点検や見直し」(要求1,477件、回答・妥結707件)や「インターバル規制の導入に向けた取り組み」(同327件、186件)、「年次有給休暇の取得促進に向けた取り組み」(同1,509件、778件)など、働き方改革関連法案に関係した先行的な取り組みが目立つ。

「職場における均等待遇実現に向けた取り組み」に関する要求も延べ5,606件となり、そのうち1,988件で回答を引き出した。なかでも雇用の安定に向けて「無期労働契約への転換促進および無期転換ルール回避目的の雇い止め防止と当該労働者への周知徹底」で1,231件の要求に対し702件の回答・妥結が示されたほか、「派遣労働者の受け入れ時および期間制限到来時における交渉・協議の協約化、ルール化の取り組み」についても、238件の回答・妥結が引き出された(要求は329件)。

処遇改善については「同一労働同一賃金の実現に向けた労働条件の点検もしくは改善」のうち、「一時金支給の取り組み」「福利厚生全般および安全管理に関する取り組み(点検、分析・検討、是正等の取り組み)」「社会保険の加入状況の確認・徹底と加入希望者への対応」などの取り組みで、昨年の要求・回答件数を大きく上回っている。

職場を熟知する労使で働きがいある職場づくりを

「まとめ」は、こうした「働き方」の見直しについても、「長時間労働の是正や職場における均等待遇の実現など、法改正に先行した職場の基盤づくりが大きく前進した」ことを評価しつつ、「今後も法令遵守はもちろんのこと、職場を熟知する労使によって、健全で安全で働きがいのある職場をつくっていくことが重要だ」と訴えている。