2018年闘争の評価と課題を議論/電機連合の定期大会

2018年7月18日 調査部

[労使]

電機連合(野中孝泰委員長、58万人)は12、13の両日、神奈川県横浜市で定期大会を開催し、向こう2年間の新運動方針を決定するとともに、「2018年総合労働条件改善闘争の評価と課題」を確認した。評価と課題は、中闘組合の統一闘争で1,500円の水準改善を引き出した点について「電機産業労使の社会的役割と責任を果たすことができる回答」と評価する一方、今後の課題として「人への投資」のあり方に対する労使の考え方に隔たりがある点などをあげた。

賃金水準改善を獲得した組合は82.6%、平均額は1,521円

13の大手電機メーカー労組で構成する中闘組合は、今春の産別統一闘争において「開発・設計職基幹労働者賃金」(30歳相当)の個別ポイントで「3,000円以上」の賃金水準改善を統一要求基準に設定して交渉に臨んだ。交渉は最終的に、「水準改善額1,500円」で決着。評価と課題はこの結果について、「生活水準の維持・向上と経済の自律的な成長に向けて、電機産業労使の社会的役割と責任を果たすことができる回答」と評価した。

全体の回答状況をみると、大手の関連労組ではないために直接、電機連合に加盟している「直加盟組合」では、5月8日現在で、「開発・設計職基幹労働者賃金」について集約方向となった61組合のうち54組合で水準改善を獲得し、うち41組合が1,500円以上の改善を獲得した。大手のグループ労連を経由して電機連合に加盟している「一括加盟構成組合」も含めた全加盟組合でみると、集約方向の282組合のうち265組合が水準改善を獲得。そのうちの233組合が1,500円以上の改善を引き出した。

評価と課題はこうした電機連合全体の回答状況について「回答に至った各組合のねばり強い交渉努力はもちろんのこと、経営側の英断は評価できる」とした。大会で評価と課題を報告した神保政史書記長は、7月4日現在で水準改善を獲得した組合の割合は82.6%にのぼり、また、平均額は1,521円と中闘組合の獲得額を上回っていると最新の回答状況を紹介したうえで、「(産別内での賃上げの)一定の波及効果が出た」と強調した。

初めて取り組んだ「仕事と治療の両立支援」について制度面で前進も

月額16万4,000円への改善(引き上げ額としては3,000円)を求めた産業別最低賃金(18歳見合い)では、1,000円の引き上げで決着した。これについて評価と課題は「(法定特定最低賃金への影響もあることから)電機産業に働くすべての労働者の賃金の底上げ・底支えにつながるものであり、評価できる」とした。

また、高卒初任給が自動車業界などに見劣りする初任給引き上げの取り組みについては、高卒で1,500円、大卒で1,000円の引き上げを獲得できたことから「喫緊の課題となっている他産別との格差圧縮の観点から一定の評価ができる」と整理した。

今回の闘争で初めて取り組んだ「仕事と治療の両立支援」について、「治療を受けながら働き続けられる環境整備の必要性についての労使確認」と「治療との両立ができる環境整備」についてそれぞれ30組合、35組合が要求し、23組合、25組合で前進が図られたとして「現行導入している多目的休暇や短時間勤務、単日勤務を利用できるよう制度拡充を図ることができたことは、治療を受けながら安心して働き続けられる環境整備につながる」と評価した。

今後の課題は「人への投資」についての労使の考え方の隔たり

一方、今後の闘争の課題について評価と課題は、事業の先行き不透明感が増していることや、昨年までで過去4年間賃上げが続いたことなどを理由に経営側から「『人への投資』の選択肢は賃上げだけではない」との姿勢が示されたことをうけ、「企業によって事業環境や考え方に違いがあること、『人への投資』のあり方、とりわけ月例賃金の引き上げに対する労使の考え方には隔たりがあることを改めて認識した」と指摘し、「これらの課題や電機産業を取り巻く環境変化などを踏まえ、統一闘争強化に資する論議を深める必要がある」とまとめた。

あいさつした野中委員長は、今後の総合労働条件の改善について「『雇用に対する不安』『生活に対する不安』『将来に対する不安』の払拭が大事という考え方を継続して持ちたい」と述べながら、「この3つの不安の払拭をめざすためには、賃上げの継続性や、賃上げの拡がりと底上げは大きな課題であり、加えて電機産業に働くすべての労働者の雇用と処遇の改善についても、しっかりと取り組んでいかねばならない」と、引き続き賃上げに取り組む必要性を強調。さらに、生産性3原則の下では成果の公正分配に向けた社会相場の形成が重要だと述べて、「そういった意味においても(闘争の)『社会的責任型の闘争』としての位置づけが高まってくる」と闘争の意義を強調した。

来年の定期大会で新たな第7次賃金政策を確立

向こう2年間の新運動方針では、公正な労働条件の実現や、豊かな暮らしと職業生活の充実との両立に向けた働き方改革などが柱。公正な労働条件の実現では、来年の定期大会で新たな賃金政策(第7次賃金政策)を確立することなどを盛り込んだ。今大会では草案を提起。草案は、賃金決定の原則は「『同一価値労働同一賃金』の考え方をベースとした『公正な個別賃金決定』を原則とする」などとし、賃金制度・体系に関しては、「長期安定雇用を前提とし、かつ、労働移動にも対応できる『仕事基準』による公平性・透明性が担保された公正な賃金決定システムとする」などの基本的な考え方を示している。

運動方針の討議では、三菱電機労連が5年連続の賃上げを実現できた点について触れ、「改めて電機連合の統一闘争の意義、重要性を認識した」と述べるとともに、「賃金の引き上げもなかなか物価上昇につながりにくい中で、労働組合が賃上げをやらないで他に誰がやるのか」と強調し、来年以降の賃上げに期待感を滲ませた。東芝グループ連合は現行の個別賃金方式について、賃金制度のベースを「職能・職務」ではなく「役割」に置く企業が多くなってきているが、「役割」は賃金テーブルとの連続性がなく、個別ポイント以外の賃上げを検討する際に難しい面もあるとして、「こうした点も電機連合本部で分析したうえで、適宜加盟組合にアドバイスしてほしい」と要望した。このほかでは、時代に即した運動の見直しや働き方改革の取り組み、中堅・中小労組への支援や来年の参議院議員選挙などに対する意見・要望があった。

役員改選を行い、野中委員長(パナソニックグループ労連)、中澤清孝副委員長(日立グループ連合)、神保書記長(三菱電機労連)の3役は再選された。