主要組合の賃金改善分は1,300~3,000円と昨年を上回る/自動車総連

2018年3月16日 調査部

[労使]

トヨタ自動車や日産自動車など自動車大手メーカーなどで構成する自動車総連(髙倉明会長、約77万人)の拡大戦術会議登録組合は14日、ほとんどの組合において昨年を上回る賃金改善分を獲得して交渉を終えた。日産は組合側が満額の賃金改善分を獲得。一方、トヨタは昨年実績(1,300円)を上回ったものの、具体的な金額が公表されない異例な形での決着となった。

日産が満額の賃金改善分を獲得

12ある拡大戦術会議登録組合のうち、大手メーカー11組合に対する賃上げ回答結果(平均賃上げ)をみると、日産が要求満額の「平均賃金改定原資9,000円」(賃金改善分としては3,000円)、本田技研が「1,700円」(前年比100円増)の賃金改善、マツダが「賃金引き上げ1,400円」(同300円増)、三菱自動車工業が「賃金改善分1,500円」(同500円増)、スズキが「賃金改善分組合員一人平均2,400円」(同900円増)、スバルが「賃金改善分1,300円」(同200円増)+「直接部門の担当および間接部門の係長・担当に1万円/月の役職給を支給」などとなっている。

トヨタは、公式的には「一般組合員の賃金改善分は昨年を上回る」との回答となった(金額は未公表、昨年1,300円)。拡大戦術会議登録組合に部品労連を代表して登録され、大手メーカーが3,000円の賃金改善を要求するなかで3,500円の賃金改善を要求していた日本特殊陶業は、1,600円で決着した。

拡大戦術会議登録組合が獲得した賃金改善分は、昨年は1,000円~1,600円だったが、今年は1,300円~3,000円の幅となっており、昨年以上に賃金改善が進んだ。

一時金はほとんどが要求満額

一時金をみると、拡大戦術会議登録組合すべてで要求に対する満額を獲得。トヨタが243万円〈6.63カ月相当〉、日産(222万4,100円〈5.8カ月〉)、本田技研(6.2カ月〈235万5,000円〉)、マツダが5.3カ月+0.1カ月、三菱自工が5.5カ月などで、組合要求どおりの満額回答となっている。

非正規労働者の取り組みでは、すべての拡大戦術会議登録組合で時給引き上げなどの回答を引き出した。

14日、会見した髙倉会長は賃金にかかわる交渉経過について「産業の大転換期に向けた人への投資はどうあるべきか、将来の競争力への影響に対して組合・組合員の覚悟を見極めるべく経営側は慎重かつ厳しい態度を崩さず、交渉終盤になっても水準論議が進まない異例の状況となった」と振り返り、結果的に昨年を上回る賃金改善を獲得したことから「産業の大きな転換期のなか、現場組合員の労働の質の向上とともに、難局を乗り越えるための人への投資の必要性、何より将来の競争力強化に向けた組合員の決意と覚悟を強く訴えてきたことが結実した価値ある成果と受け止める」と評価した。今年の交渉では、拡大戦術会議登録組合のほぼ半数の組合において、14日の朝まで労使の折衝が続く異例の展開となった。なお、トヨタの会社側の公式回答において、明確な賃金改善額が示されなかったことについて、髙倉会長は、「共闘による相乗効果を引き上げていくという意味では、数字が出てこないことは問題を残した」との見方を示した。

2018年総合生活改善の取り組み 【拡大戦術会議登録組合(12組合)】