期間雇用社員の処遇改善や正社員の賃金水準改善を要求/JP労組中央委員会
2018年2月21日 調査部
単一労組で国内最大の日本郵政グループ労働組合(JP労組、増田光儀委員長、24万1,000人)は15、16の両日、都内で中央委員会を開き、2018春季生活闘争方針を確認した。JP労組は働き方改革への対応について、18春闘と19春闘の2年間で多様化する働く者のニーズ等に対応できるよう、要求を組み立てていく考え。18春闘では、正社員と期間雇用社員との「格差是正の取り組みに課題が多く残っている」(増田委員長)として、期間雇用社員の処遇の底上げを求めていく。また、正社員の労働条件改善では、基準内賃金の一人平均6,000円の引き上げと年間一時金4.3カ月を要求する。
「処遇の底上げによる不合理な処遇差の解消を目指していく」(増田委員長)
冒頭のあいさつで増田委員長は、現政権が「働き方改革」を最重要課題と位置付けていることについて、「『成長と分配の好循環目メカニズムが必要』との考えを打ち出し、特に政府の『同一労働同一賃金』ガイドライン案に関しては、『不合理な待遇差の是正を求める労働者が裁判で争える根拠となる法律を整備する』としており、各企業に、処遇体系全体について労使で話し合うよう促している」などと説明したうえで、「そこに至る目的意識は異なるものの、私たちが長年訴えてきた方向性となったことは前向きに受け止めることができる」と述べた。
そして、① 正社員登用に継続して取り組み、約3万人の登用実績を積み上げている ② 地域最低賃金を10円単位で切り上げたうえで、さらに20円加算した額を『郵政最低賃金』として適用する制度を確立・運用している ③ 無期労働契約への転換制度を法施行より前倒しして実現している――ことを挙げて、「正社員と非正規雇用社員との間の処遇差に問題意識を持ち、その是正を訴え、少しずつではあるものの、毎年の春闘で改善をはかってきた」と強調。「格差是正の取り組みは途上にあり、課題は多く残っている。同一労働同一賃金の実現に向けて、処遇の底上げによる不合理な処遇差の解消を目指していく」として、18春闘と19春闘の2年間で多様化する働く者のニーズ等に対応できる処遇の実現を求めていく決意を表明した。
その一方で、正社員の一時金についても触れ、「宅配便事業統合の混乱に伴う経営状況の悪化による正社員の一時金の引き下げなどとも向き合い、経営に対するチェック機能を強化するなかで、徐々に水準の回復を図ってきたが、混乱前の水準に戻っていない」などと指摘。「無限であるわけがない財源のなかで、優先順位や実現可能性等を見定めつつ、いかに着実に改善を進めていくか、労使の知恵出しが求められている」と述べ、ベースアップや一時金の引き上げなども含めた処遇全体で、底上げにつながる交渉を進めていく考えも示した。
客観的に合理性の乏しい手当・休暇制度の期間雇用社員への適用を
方針は、格差是正に向けた期間雇用社員等の処遇改善について、賃金改善や正社員登用の促進などを求めていくことを打ち出した。
JP労組は日本郵便グループ主要4社との間で、正社員と期間雇用社員の制度について、政府の同一労働同一賃金ガイドライン案を踏まえた処遇全般にわたる検証を行い、「見直しが必要」との共通認識を図っている。そのうえで今後の進め方として、JP労組側から社会や環境の変化等によって「客観的に合理性が乏しくなっていると思われる制度や手当等」を特定する形で底上げ要求を行い、それに会社側が回答を示す形で是正に取り組むことを確認している。今春闘では、そうした確認に沿って「非正規雇用社員に適用されておらず、客観的に合理性が乏しいと考えられる5つの手当と3つの休暇制度を対象に、その底上げ・拡大を追求する」(増田委員長)構え。それらの底上げを図ることで、非正規雇用社員の処遇の総合的な改善を目指す考えだ。
賃上げ要求は5年連続
一方、正社員の賃上げ要求について、「『賃金カーブ』の維持分としての定期昇給の確保と、連合方針を踏まえたベースアップに取り組む」とした。一時金は、「生活の底上げ・底支えの観点から、水準の引き上げに取り組む」。JP労組が正社員の賃上げを要求するのは5年連続。ベースアップ分は前年同様、正社員の基準内賃金を一人平均6,000円(2%)引き上げることを求める。一時金に関しても前年と同じ4.3カ月を要求する。
業務を見直して時間外労働の縮減を
また、労働力の確保・定着が困難な状況を踏まえ、必要な労働力の確保に向けて一般職の処遇改善等にも取り組むほか、ワーク・ライフ・バランスを追求した総労働時間の縮減や、法令遵守の徹底とワークルールの確立も求めていく方針。労働時間短縮に関しては、運輸・郵便業種で人手不足が深刻化の一途を辿っている状況も踏まえ、「オペレーションのあり方等についても検討し、『施策の棚卸』による業務を見直すことなども含めて効果的・効率的な働き方を追求することで、時間外労働の縮減につなげる」ことも掲げている。