JR連合、JR総連が前年と同水準の賃上げ要求を決定

2018年2月7日 調査部

[労使]

JRグループの主力労組であるJR連合とJR総連は、それぞれ2月上旬に中央委員会を開き、2018年の春闘方針を決定した。JR連合は、月例賃金総額6,000円以上の引き上げを求め、そのうち3,000円については「純ベア統一要求」とする。一方、JR総連は、定期昇給の確保を前提に「6,000円」を統一ベア要求するとした。ともに要求額は前年と同水準となっている。

JR連合は月例賃金総額6,000円以上、うち純ベア3,000円を統一要求

JR連合(松岡裕次会長、8万1,000人)は5日、和歌山市で中央委員会を開き、「2018春季生活闘争方針」を決定した。JR東海ユニオン、JR西労組などJR各単組は、「中期労働政策ビジョン」(2014年から18年の方針)に基づき、定期昇給相当分(賃金カーブ維持分)の完全実施を求めたうえで、諸手当を含む月例賃金総額6,000円以上の引き上げを要求する。そのうち、純ベア統一要求として3,000円を求めるとしている。

純ベア統一要求以外の諸手当を含む賃金要求項目については、「総合生活改善や格差是正の観点に立って各単組において判断する」としている。また、JR各社労組のほかにJR連合が組織する93のグループ会社の単組について、定期昇給制度のある単組はJR各社と同様の月例賃金総額6,000円以上(純ベア統一要求として3,000円を目安)、定期昇給制度がない場合は月例賃金総額の1万500円以上の引き上げを目安(うち4,500円を定期昇給相当分、3,000円を目安に純ベア統一要求分)とするとした。

JR連合が毎年実施している賃金実態調査によると、今春闘でベースとなるJR各社の賃金水準は、個別賃金引上げ方式の場合、平均基準内賃金が29万7,500円(35歳、男子・高卒・標準労働者層・回帰値)。平均賃金引上げ方式の場合は、平均基準内賃金が30万3,004円(36.6歳、定昇相当分込み) となっている。

非正規労働者に関しては、時間給について「誰もが時給1,000円」の実現を目指すとともに、「40円を目安に引き上げを求める」としている。このほか、「働き方の総点検・見直し」を掲げ「加盟各単組は自社の現行制度・運用や業務実態等を改めて点検する」とし、労働時間法制の見直しに対して労使協議などを通じて対応することを打ち出している。

日程は、JR各単組の要求提出期限を2月13日とし、グループ労組も可能な限り同月28日に要求書を一斉提出する。JR各社の交渉のヤマ場は、連合が設定する3月12~16日の先行組合回答ゾーンを念頭に置きつつ、JR連合執行委員会で決定する。グループ労組については、連合の3月24~31日の月内決着集中回答ゾーンを念頭に取り組む。

JR総連は統一ベア要求として月額「6,000円」を求める

JR総連(榎本一夫委員長、7万3,000人)は2日、都内で定期中央委員会を開催し、2016春季生活闘争方針を決定した。

賃上げ要求は、前年と同様、統一ベア要求とした。JR東労組など定期昇給分(賃金カーブ維持分)の算定が可能な組合は、定昇分を確保し、社会保障費の負担増および生活維持・改善分として、6,000円を統一ベア要求する。定期昇給分の算定が困難な組合は、定昇・賃金カーブ維持分を含めて1万500円を要求する。ともに「格差是正・実損回復分」は必要に応じ各単組で設定するとしている。

JR総連は春闘方針で、基本的な考え方として「労働者の格差・分断を許さず、一律の賃金引上げと労働諸条件の改善を求める」と述べている。主力組合のJR東労組は、2017春闘で「格差ベア反対方針」に基づいて交渉し、ベアを一律1,000円とする回答を得ている。しかし会社側が「将来にわたって『定額ベア』を実施することは確認できない」などとしていることから、今春闘でも「全組合員一律の定額ベアを実施すること」を会社側に申し入れている。

非正規労働者については、前年に掲げた方針と同様に、JRグループ内外までを視野に入れた組織化を打ち出している。連合方針を踏まえ「誰もが時給1,000円」を目指し、「劣悪な雇用・労働条件の抜本的な改善」に取組む。さらに5年を超えて反復更新される有期契約労働者について「無期転換権が18年4月から発生することを踏まえ、正社員登用に向けた労使協議を行う」などとしている。

労働時間に関する取り組みでは、① 36協定違反の根絶、法令・労働協約遵守に向けた職場実態の総点検 ② 年間所定労働時間2,000時間を上回る組合をなくす ③ 時間外労働を1カ月45時間以下に抑えることを基本とし過労死ラインを超える長時間労働を根絶する ④ 特別条項付36協定の適切な上限設定・適用にあたっての事前労使協議と原則11時間の勤務間インターバル規制の導入――などを掲げている。

要求提出日は、原則として2月中とし、回答指定日は連合方針を踏まえて、最大のヤマ場を3月14日に設定した。JR各単組が対象となる「第1先行組合回答ゾーン」は、同月14~18日としている。