平均要求方式での賃上げ要求基準は「1万500円以上」/JAMの中央委員会

2018年1月24日 調査部

[労使]

金属、機械関連の中小労組を多く抱えるJAM(安河内賢弘会長、約37万人)は19日、都内で中央委員会を開き、2018年春季生活闘争方針を決定した。方針は「賃金の底上げ・底支え」「格差是正」の取り組みを継続するとし、個別賃金要求によって賃金水準の引き上げに取り組むと強調する。平均要求方式での要求基準は、賃金構造維持分と「人への投資」の要求分(6,000円)と合わせ1万500円以上と設定した。

中小企業は労働条件の改善なしには「働き手を確保できない時代」(安河内会長)

JAMでは構成単組の8割以上を300人未満の中小労組が占めており、大手と比べて低い水準に置かれている賃金水準の底上げ・格差是正が喫緊の課題となっている。そのため、賃金の絶対額を構成組織により強く意識させるため、2017春闘から個別賃金要求の取り組みを前面に押し出している。

方針は、今年の労使交渉に向けた基本スタンスとして、「『賃金の底上げ・底支え』『格差是正』の取り組みを継続し、情勢も踏まえ、すべての単組が、月例賃金の引き上げを中心とした『人への投資』の取り組みを行う」と明記。さらに、「ひっ迫した雇用情勢により、人材の採用難に加え、人材流出が深刻化するなかで、中堅、中小企業は、企業と産業の持続性の観点から中期的な賃金政策を持って賃金水準の引き上げを行う」と強調している。

中央委員会であいさつした安河内会長は、「空前の人手不足となっており、昨年、企業存続のためにも賃金を上げざるを得ないと述べたが、実際にそうなっている」と中小企業を取り巻く賃金の現状を分析するとともに、「中小企業は賃金をはじめとする労働条件を改善していかないと、働き手を確保できない時代が来た」と強調。景気の回復基調や為替の安定、物価の動向などについて触れたうえで「ベア春闘を闘う外的要因は整った。千載一遇のチャンスだ」と呼びかけた。

「JAM一人前ミニマム基準」で個別賃金の達成目標を引き上げ

賃金要求の具体的な内容をみると、「すべての単組は、賃金の『賃金の底上げ・底支え』『格差是正』に向け、賃金の絶対額を重視した取り組みを追求する」とし、「自らの賃金水準のポジションを確認した上で、JAM一人前ミニマム基準・標準労働者要求基準に基づき、あるべき水準を設定し要求する」としている。JAM一人前ミニマム基準とは、各社で技能レベルが一人前と見なされる労働者の賃金の達成目標を示したもの。今回の方針では、所定内賃金で18歳:16万2,000円、20歳:17万5,000円、25歳:20万7,500円、30歳:24万円、35歳:27万円、40歳:29万5,000円、45歳:31万5,000円、50歳:33万5,000円と設定。初任給相場が上がっている現状を踏まえ、18歳~30歳まで金額を前年よりも引き上げた。

標準労働者の要求基準には、①到達基準と②目標基準――の二つの指標がある。到達基準とは「全単組が到達すべき水準」で、目標基準とは「到達基準に達している単組が目標とすべき水準」。到達基準については高卒直入者所定内賃金で30歳:26万円、35歳:30万5,000円と設定し、目標基準は同30歳:28万円、35歳:32万円とした。

すべての単組で有期雇用者・中途採用者なども含めてクリアすることを目指すとともに、協定化をめざす「年齢別最低賃金基準」は、18歳:16万2,000円、25歳:16万6,000円、30歳:19万2,000円、35歳:21万6,000円とした。

法定最低賃金と企業内最賃の差が50円に満たない場合は「直ちに引き上げを要求」

平均賃上げ要求基準については、連合中小共闘の賃金引き上げ目安も踏まえ、「JAMの賃金構造維持分平均4,500円に6,000円を加え、1万500円以上とする」とした。JAMでは6,000円の根拠について、構成組織向けの説明資料のなかで「産別共闘の目標として、マクロ経済に対する連合の考え方を踏まえて『6,000円基準』とした」と説明。また「6,000円基準の中身は、賃金改善であり、その産別目標額だ」などと述べている。企業内最低賃金協定では、18歳以上企業内最低賃金協定を締結していない単組では締結に取り組む。法定最低賃金が毎年引き上げられている状況を踏まえ、法定最低賃金と企業内最賃の差が50円に満たない場合は「直ちに引き上げを要求する」。

一時金は、年間5カ月基準または半期2.5カ月基準の要求とするとし、最低到達基準を年間4カ月または半期2カ月と定めた。

日程に関しては、全単組が要求を提出するよう求める統一要求日を2月20日(火)に設定。各地域での共闘体制を強化するための「地方JAMリーディング単組」の選定は今年も行うとしている。

雇用と賃金の確保を重視した「高年齢者雇用に関する考え方」を提示

このほかの主な取り組み項目として、2021年4月2日以降に60歳を迎える人は65歳まで無年金となることなどを踏まえ、「高年齢者雇用に関する考え方」を示した。それによると、60歳以降の雇用についていずれの方法でも希望者全員の雇用を確保するとともに、継続雇用者の組合員化を図る。賃金については、60歳までの賃金カーブの見直しは行わないとし、60歳以前と同一の働き方の場合は連続した処遇制度とし、一時金も含めて同一の処遇とするよう求める。具体的な賃金水準の目安については、2013年に作成した指針(年収ベースで月あたり28万円以上など)を参考にして、今後見直しを行うとしている。