賃金引き上げは経営者自らが判断を/金属労協の2018闘争推進集会

2018年1月24日 調査部

[労使]

金属労協(JCM、髙倉明議長)は23日、都内で「2018年闘争推進集会」を開き、約180人が参加した。あいさつした髙倉議長は賃金引き上げに関する経労委報告の記載内容について、「報告では、『個人消費の活性化に向けた3%の賃上げとの社会的期待を意識する』としているが、経営者自らがしっかり判断して欲しい」と強調した。また、集会では5つの加盟産別労組が2018春闘に向けた要求内容などを説明した。

金属労協は、日本経済団体連合会(榊原定征会長)が16日に発表した、2018年春季労使交渉の経営側の指針となる『2018年版経営労働政策特別委員会報告』(経労委報告)の内容に対し、翌17日に見解を公表している。髙倉議長は集会冒頭のあいさつで、① 賃金引き上げ ② 底上げ・格差是正 ③ 非正規労働者 ④ 特定最低賃金――の4つのポイントについて、見解の内容を紹介する形で経労委報告に反論した。

「惰性ではなく、信念を持った賃金引き上げを」(髙倉議長)

髙倉議長は経労委報告が、「賃金引き上げのモメンタムの一層の強化に努め、デフレからの完全な脱却と経済の好循環のさらなる拡大に貢献していく」などと主張していることについて、「主張はわれわれの基本的な考え方と何ら変わりないと思っているが、その一方で年収ベースの賃金引き上げを基本と相変わらず言っている。別に賃上げでなくても(賞与や諸手当など)その他のものでもよく、月例賃金の引き上げは収益が拡大あるいは高水準で推移している企業、中長期的に収益体質が改善した企業と主張している」などと批判。「『生産性三原則』では、生産性向上の諸成果は、国民経済の実情に応じて公正に分配するとしており、働く者全体にマクロ経済レベルでの一斉の成果配分を実践することが基本だ」として、「将来にわたる生活の安心・安定の観点、それによる消費拡大の効果からすれば、基本賃金の引き上げが不可欠。要するに賃金が一番働く者にとって安心感につながる」と指摘した。

また、同報告が「賃金引き上げのモメンタムの強化」としていることに対しても、「『モメンタム』は『勢い』という意味で使っているはずだが、辞書を引くと『惰性』という意味もある」と述べたうえで、「(23日朝に開かれた)連合と経団連の懇談会の場でも、『惰性でやってもらっては困る。ちゃんと信念をもってやって欲しい』と話した」ことを紹介した。

賃金実態を直視して格差に焦点を当てた取り組みが不可欠

底上げ・格差是正の観点では、同報告が連合の示した大手を上回る賃上げ額の目安を「実態から大きく乖離した金額」と明記していることについて、「大手企業に働く者も中小企業に働く者も日本の経済力にふさわしい賃金の社会的水準が確保されなければならない」と反論。「拡大を続けてきた賃金格差を是正するためには、賃金実態を直視し、格差に焦点を当てた取り組みが不可欠だ」と強調した。

非正規労働者の処遇改善や特定最低賃金への対応も

一方、非正規労働者に関して、同報告では「不合理な処遇格差の解消」など法改正への対応とともに、処遇改善について労使で前向きに協議すべきことについて言及している。

髙倉議長は、2017年闘争で非正規労働者の賃金・労働諸条件の引き上げを実現した金属労協傘下の組合は、取り組み組合の3分の1程度に止まっていることを紹介したうえで、「同じ職場で働く仲間として非正規労働者の賃金・労働諸条件の引き上げに取り組んでいくことは労働組合のみならず経営側の使命であり、労使の社会的責任でもある」と強調し、2018闘争での実効性のある対応を呼び掛けた。

また、職種の件数で約4分の3、対象人数では9割近くを金属産業が占める「特定最低賃金」への対応についても、「地域別最賃との差が急激に縮まっていることや下回るケースが増加していることを理由に、(同報告は)廃止に向けた検討をすべきだと主張している」と強い危機感を示したうえで、「そもそも使用者側が企業内最賃の状況を反映した特定最賃の引き上げに応じてこなかったことが原因だ」と主張。「特定最賃の取り組みは春季生活闘争における企業内最賃協定の締結拡大と水準の引き上げがスタートになる。企業内最低賃金協定の水準をしっかりと引き上げて行くことが重要だ」と説明した。

労使自治の下で積極的な働き方の見直しを

さらに、働き方の見直しについても触れて、「政府の施策を待つのではなく、産業・企業の労使自治の下で積極的に働き方の見直しを行い、良質な雇用を実現していかなければならない」と述べたほか、政府が経済界に対して3%の賃上げの実現を要請していることに対し、「経労委報告では、『個人消費の活性化に向けた3%の賃上げとの社会的期待を意識する』としているが、他人事ではない。経営者自らがしっかり判断して欲しい」などと訴えた。

集会では、自動車総連、電機連合、JAM、基幹労連、全電線の5つの加盟産別の各書記長・事務局長によるパネルディスカッションを行い、各産別が産業の状況と要求内容について情報交換した。

経団連「2018年版経営労働政策特別委員会報告」に対する見解/金属労協(2018年1月17日)新しいウィンドウ