賃上げ要求は3年連続で「2%程度を基準」/連合の中央委員会

2017年12月6日 調査部

[労使]

連合(神津里季生会長)は5日、都内で中央委員会を開催し、賃上げ要求水準について「2%程度を基準とし、定期昇給相当分(賃金カーブ維持相当分)を含め4%程度」とする「2018春季生活闘争方針」を決定した。賃上げ要求水準は2017年方針と同じ内容だが、賃上げの拡がりに向けた取り組みに前回以上に注力する構えだ。

「賃金の底上げ・底支え」と「格差是正」の取り組みを継続

連合が春季生活闘争方針の中で賃上げ要求水準を掲げるのは、これで5年連続。賃上げ要求水準を「2%程度を基準」とするのは3年連続だ。今回の方針は、賃金の「底上げ・底支え」「格差是正」の取り組みや「大手追従・大手準拠などの構造を転換する運動」の継続を掲げるとともに、すべての労働者の働き方の改善についても同レベルの取り組みの柱として掲げているのが特徴。

「底上げ・底支え」「格差是正」の取り組みの継続に向けては、「企業収益が過去最高を記録する中、労働分配率は低下を続け、実質賃金も横ばいとなっており、個人消費については若干の上向き感は見られるものの、回復に向けた勢いはみられない」「個人消費が回復しなければ「労使でめざしてきた『経済の自律的成長』『経済好循環の実現』という社会的目標は達成され得ない」などと指摘し、「働く者のモチベーションを維持・向上させていくには、『人への投資』が不可欠であり、すべての労使が社会的役割と責任を意識して労働諸条件の改善をはかることが必要」と強調。「したがって、2018春季生活闘争においても、月例賃金の引き上げにこだわり、賃金引き上げの流れを継続・定着させる」と明記した。

賃上げ要求水準は、「引き続き、名目賃金の到達目標の実現、ミニマム基準の確保に取り組む必要がある」としながら、「それぞれの産業全体の『底上げ・底支え』『格差是正』に寄与する取り組みを強化する観点から、2%程度を基準とし、定期昇給相当分(賃金カーブ維持相当分)を含め4%程度とする」とした。

「大手追従・大手準拠などの構造を転換する運動」の継続については、前回の2017闘争で、賃上げ分(いわゆるベア分)が明確に分かる組合での集計において中小組合(300人未満)の賃上げ分の獲得実績が率にして0.56%と、大手組合(1,000人以上)の実績(0.48%)を上回るという過去にない成果を得たが、「これを今後も継続・定着させるとともに、さらに前進させていくことが重要」と強調。企業間の取引の適正化についても「職場労使、経営者団体とともに社会全体に訴えていく」とした。今回、初めて前面に押し出した働き方の取り組みでは、企業規模や雇用形態間などを問わず、個々人のニーズにあった多様な働き方ができる仕組みを整えるとしている。

働き方改革では「労働組合が労使関係の枠組みのなかで改善を図っていく」(神津会長)

中央委員会であいさつした神津会長は2018春季生活闘争について「なんといっても『底上げ・底支え』『格差是正』に継続して取り組む、さらに強める・拡げるということ」と強調。「労使関係を構築している我々こそが春季生活闘争の先頭に立ち、『底上げ・底支え』『格差是正』の実現に向けてあらゆる手段を用いて取り組みを進め、『大手追従・大手準拠などの構造を転換する運動』の流れの継続・定着・前進をはかり、『賃金は上がるもの』という常識を取り戻していくことが重要だ」と訴えた。

取引の適正化(「サプライチェーン全体で生み出した付加価値の適正分配」)については「連合として、より多くの関係者が参加できるプラットフォームをつくり、産業横断・社会横断の取り組みとして、社会的認知から公正さの実践・実行のフェーズに以降していく必要がある」と述べるとともに、2018闘争からは、取引条件や価格などのほかに、長時間労働など働き方とのつながりにも目を向ける重要性を訴えた。働き方改革では、「我々労働組合が労使関係の枠組みのなかで改善を図っていくことこそが雇用社会における根っこの『エンジン』の力を形成する」とし、「『魂を入れ込む』環境整備を行い、『すべての労働者の立場に立った働き方の実現』に向けて、連合が先頭を切って進まなければならない」と述べた。

方針は中小などの「規模間格差の是正」や「雇用形態間格差の是正」を重視

今回の方針では、賃上げ要求項目の構成について、「あらゆる格差の是正に取り組む」姿勢を強調するため、①月例賃金、②規模間格差の是正(中小組合の要求)、③雇用形態間格差の是正(時給等の引き上げ)、④男女間賃金格差の是正――それぞれについての要求内容を並列に明記した。中小組合の要求については、2017闘争と同様に、「総額で1万500円以上を目安に賃金引き上げを求める」(賃金カーブ維持分4,500円含む)などとした。時給引き上げでは、①「誰もが時給1,000円」を実現する、②すでに時給1,000円超の場合は、37円を目安に引き上げを要求する――などのいずれかの取り組みを展開するとした。なお、2017闘争まではすべての構成組織が参加する「非正規共闘」を構え、非正規共闘方針を掲げて非正規労働者の処遇改善などに取り組んだが、雇用形態を問わず処遇改善に取り組むという趣旨から、今回から「共闘」として括り出すことをやめた。

神津会長は「非正規共闘を通じて、いわゆる非正規労働者の雇用環境や処遇の状況などを社会に知らしめてきた役割と意義は大きいものがあった」とこれまでの実績を評価しながら、「一方で、個別労使交渉の中で、正規労働者と同様に非正規労働者の処遇をはかる取り組みが進んできたのか、このことを今一度振り返る必要もある」と指摘。「(同一労働同一賃金や有期契約労働者の無期転換など)これまで以上に労働組合としての対応力が求められる中、正規労働者の処遇改善と同様に、いわゆる非正規労働者の処遇改善を個別労使、産業労使の交渉のど真ん中におく必要がある」「2018春季生活闘争ではこれまで非正規共闘が果たしてきた役割を個々の労使協議に埋め込み、そして必ず結果につなげ、そのことを社会に発信することで、非正規労働者の処遇改善の実効性を高めていかなければならない」とその狙いを説明した。

第1先行組合の回答ゾーンは3月12日~16日、うちヤマ場を14日に設定

中央委員会ではこのほか、「連合運動強化特別委員会」の設置について確認した。地方会費や地方交付金、会費納入などをめぐる課題や、運動の重点化・「選択と集中」などについて議論し、2019年の定期大会に委員会報告を踏まえた方針を提起するとしている。委員長には逢見直人会長代行が就いた。

政治関連では、神津会長があいさつのなかで、組織内国会議員や推薦議員を中心とした政策論議のプラットフォームとなる「連合フォーラム」(仮称)の設立をめざすと表明。今後、内部議論を重ね、年内に機関確認したい意向を示した。

なお、中央委員会終了後、ただちに「2018春季生活闘争共闘連絡会議・第1回全体代表者会議」が開かれ、回答ゾーンを決めた。第1先行組合回答ゾーンは3月12日~16日で、ヤマ場は3月14日水曜日とした。第2先行組合回答ゾーンは3月19日~23日で、3月月内決着集中回答ゾーンは3月24日~31日となっている。