神津会長、相原事務局長らを選出/連合定期大会

2017年10月6日調査部

[労使]

労働組合のナショナルセンターである連合(神津里季生会長、675万人)は10月4、5の両日、都内で第15回定期大会を開催した。新たに決定した向こう2年間の運動方針では、2年後に連合結成30周年を迎えることを意識し、連合運動の中長期の羅針盤と位置付ける「連合2035ビジョン」(仮称)の策定作業に取り組むことなどを盛り込んだ。役員改選では、神津会長と非専従の川本淳会長代行(自治労委員長)の再任を決定。逢見直人事務局長は新設される専従の会長代行に就き、後任の事務局長には前自動車総連会長の相原康伸氏が就任した。なお、大会終了後には臨時中央執行委員会を開き、10月22日に迫った第48回衆議院選挙に向けた対応方針(その2)を決めた。

「働くことを軸とする安心社会」に向けた流れを加速

2018~2019年度の運動期のスローガンは「次の飛躍へ 確かな一歩を」。運動方針は、今後2年間の位置付けについて、「連合結成から30年の節目を前に、役員はもとより職場の組合員に至るまで、より多くの仲間に運動への参画を呼びかけ、『力と政策』に磨きをかけるとともに、丁寧な合意形成に努め連合が一体感を持って運動を推進し、次の飛躍に向けた地力を強化する期間とする」と明記。「働くことを軸とする安心社会」に向けた流れを加速させるとして、(1)働く者、生活者の立場に立った政策を実現する力を磨く、(2)組織力を維持・強化し、運動の推進力を高める――の2点に重点的に取り組むとしている。

働く者などの立場に立った政策実現に向けては、人口減少や「第4次産業革命」など状況変化が進んでいることもあり、中長期を見据えた新たな社会ビジョンの策定を提起。来年10月に開催予定の中央委員会で、連合の中長期の羅針盤となる「連合2035ビジョン」(仮称)を確立するため、策定作業に入ることを打ち出した。検討は、今大会で報告した「連合『人口減少・超少子高齢社会ビジョン』検討委員会中間報告」をベースに行う。なお、同報告は、「雇用は期間の定めのない直接雇用が原則」「労働時間の短縮と『働き方』間の均等・均衡待遇の確保」「連合に集う労働組合全体が、めざすべき社会像実現のための『運動論』の共有」などを、取るべき進路のイメージとして打ち出している。2035ビジョンを踏まえ、方針はさらに、新たな税制改革方針である「第4次税制改革基本大綱」や、新たな「社会保障ビジョン」、「教育制度に関する中長期政策」(仮称)を策定していくとしている。

2020年までに1,000万人組織の実現を

組織力の強化では、現在の組織化戦略である「1,000万連合」において、1,000万人組織の実現目標に設定した年が2020年であることを踏まえ、「取り組みを加速する」と強調する。集団的労使関係の構築が働き方改革に不可欠であることを組織内外にアピールしながら、構成組織は、企業内の未組織労働者とグループ内の未組織企業などを組織化するよう指導する。一方、連合本部は、組織率の低い産業や業種などをターゲットに据えて、組織化戦略の立案と実践を行うとし、構成組織や地方連合会の実務担当者とも連携・連動をはかるとしている。

大会でこの2年間の組織拡大実績を報告した山根木晴久・総合組織局長は、組織拡大人数は33万3,426人(目標に対する到達率37.2%)で、組合数は428組合だったと述べ、「過去10年間の拡大実績としては最大」と述べた。一方で、拡大実績をあげた構成組織数でみると35組織にとどまったと報告するとともに、パート労働者の拡大実績をあげたのが19組織だけだったことについては「残念な結果」と総括した。なお、2010年から取り組んできたマスコミ関連産業の組織化関連では、構成組織のNHK労連と全映演が組織統合を果たし、10月2日に新たな産別組織である「メディア・広告・映画演劇労働組合連合会」(略称:メディア労連)を結成した。

労働条件の底上げ・底支えと格差是正を図る

このほか個別の運動内容では、労働相談への対応の強化を図る。連合では、これまでも電話やメールで労働者からの労働相談に応じてきたが、「労働相談センター」という部署があるわけではなかった。今期からは、正式に「労働相談センター」という部署を設置して、相談に対して一体的に取り組む。

労働条件にかかわる取り組みでは、前期と同様、春季生活闘争などを通じて、「すべての働く者の労働条件の底上げ・底支えと、企業規模間・雇用形態間・男女間などの格差是正をはかる」としている。2018春季生活闘争に向けては、今月に3役メンバーでの意見交換を行い、内部議論を開始し、来月初旬に構成組織と地方連合会を集めた中央討論集会を開催する。

専従の会長代行ポストを増設

役員改選では、神津里季生会長(基幹労連)は留任。会長代行は、前期は非専従の1枠だったが、専従のポストが増設され、専従代行に事務局長だった逢見直人氏(UAゼンセン)が就き、非専従の代行は川本淳・自治労委員長が再任された。新たな事務局長には、今年9月まで自動車総連会長を務めていた相原康伸氏が就任した。各役員の定数通りの立候補だったため、大会規約に基づき代議員の投票は行われず、全役員一括の挙手による信任決議が行われた。なお、今回の役員体制の刷新によって中央執行委員の女性比率が33.9%と30%を超えた。

臨時中央執行委員会で衆議院選挙の対応方針(その2)を確認

連合は大会終了後、衆院選に向けて希望の党、立憲民主党の結成など新たな政治状況が生まれていることを受けて、新執行部による臨時の中央執行委員会を開き、「第48回衆議院選挙の対応方針(その2)」を確認した。

対応方針は、連携をはかってきた民進党が9月28日の両院議員総会で希望の党に事実上合流する方針を決めたことを、「時間的制約がある中で、国会・国民軽視の姿勢がより顕著になった安倍一強政治に代わる、新たな選択肢をめざしたもの」との認識を示したうえで、そうした流れの中から立憲民主党が立ち上げられたことついても、「幅広い、多様な有権者の一つの受け皿として受け止める」とした。

また、希望の党が9月27日の結党会見で公表した綱領については、「内容は大枠的には理解できるものの、まだ細かい政策は明らかにされていない」として、今後、民進党の政策が盛り込められるか等の状況を「十分に見極める必要がある」と指摘した。その一方で、希望の党と日本維新の会の連携にも触れ、「東京と大阪の候補者すみ分けにまで至ったことは極めて遺憾だ」と批判している。

各党との政策協定締結は見送り

こうした検証を踏まえ、対応方針は上記の判断をした「民進党の決断は尊重する」としながらも、「連合組織内候補をはじめ、複数の連合推薦候補者が希望の党の公認とならない可能性があることは極めて残念だ」と非難。希望の党との政策協定については、「現時点で基本政策・理念をすり合わせるのは諸情勢を踏まえて困難と判断し、今次総選挙における締結は見送らざるを得ない」とした。ただし、民進党公認であった推薦候補者については、地方連合会で個別に政策協定を締結して、推薦候補者を通じて連合が掲げる政策・制度要求の実現をはかる考えも示した。なお、比例代表については、連合推薦候補者の当選可能性を最大化する観点で、「推薦候補者の当選を勝ち取るために必要な方策を、地域の状況等を踏まえて、柔軟な対応をはかる」などとしている。

対応方針を説明した相原事務局長は、「(対応方針に示しているひな形の内容で)民進党と政策協定を結ぶ段取りとしていたが、現在そうなっていない。一方、連合と民進党の間では、政策協定について調印までの具体的な形までには至っていないが、内々で合意している。地方連合会においても、この内容に沿って既に多くのところで個々人の推薦決定者と政策協定が進んでいる」と説明。総選挙に向けて、どの党とも政策協定を結ばないのは極めて異例のことだ。

働く者の思いを共有できる人たちを引き続き応援する/神津会長

連合は9月27日の中央執行委員会終了時点で、174人の推薦を確認している。対応方針は、既に推薦決定している候補者が、希望の党や立憲民主党の公認候補者になった場合や無所属となった場合等、すべて推薦を継続することも明記した。一方、9月27日の中央執行委員会では、先に民進党を離党した候補者数人の取り消しを決定しており、その点に関しては、「9月28日の両院議員総会における組織決定のもとで離党する人たちと、個人の思いでそれ以前に離党した人たちとを同列視することはできない。厳正に取り扱う必要がある」として、推薦の取り消しをそのままスライドさせることも定めた。

神津会長は会見で「働く者の政策、思いを共有できる人たちを引き続きしっかり応援して国会に送り出すことを当面の最大の課題として、力を振り絞っていきたい」と述べた。

「次の飛躍へ 確かな一歩を」第15回定期大会を開催(2017年10月6日)/連合HP新しいウィンドウ