労働基準法改正の動きに先行して36協定の改善に取り組む/自動車総連定期大会
2017年9月13日 調査部
自動車総連(相原康伸会長、約77万人)は7、8の両日、都内で定期大会を開催し、向こう2年間の新運動方針を決定するとともに、役員改選を行った。運動方針では、長時間労働を前提とした働き方の転換に向け、労働基準法改正の動きに先行して36協定の改善に取り組むとした。役員選挙では、10月に連合事務局長に就任する予定の相原会長に代わり、副会長の髙倉明・日産労連会長を新会長に選出した。
長時間労働の是正を労働政策の柱に
運動方針では、今回から新たに、長時間労働を前提とした働き方の転換に向けた取り組みを労働政策における課題の柱の1つに据えたのが特徴。総実労働時間の短縮では、メーカーや部品・車体、販売などすべての部門で年間総実労働時間1,800時間台の達成をめざす計画を前半の1年間は継続しながら、後半の1年間については、これまでの成果と課題や生産性向上の観点も踏まえて新たな取り組みを検討するとしている。
時間外労働規制では、現在、上限規制を盛り込んだ労働基準法の改正案が議論されているが、これに先行して2018年1月以降の36協定から法案を上回る内容での適用をめざし、運動方針では「より抑制的な36協定締結に向けた取り組みを継続的に行う」とのスタンスを示した。
また、勤務間インターバルの取り組みについて、4月に厚労省に設置された有識者検討会での論議内容も踏まえながら、「自動車産業における働き方の特徴・実態に即した実効性ある取り組みを2017年度内をめどに検討する」とした。
改正労働契約法にもとづく「無期転換ルール」の適用を受ける有期雇用労働者については、「無期契約への確実な転換を図る」とともに、労働条件向上に資する取り組みも継続して進める考え。無期転換した労働者や未組織の有期契約労働者については、今後3年間、組合員化を強力に推し進めると強調している。
自動車総連では今春の労使交渉で、36協定の改善についても取り組み、年間特別延長時間が720時間を超える協定を結んでいる組合を全体の1割弱にまで減らすことができたという。大会で挨拶した相原会長は、「36協定締結の協議を通じ、あくまでも、限度時間は、『罰則付の月45時間、年360時間』との認識を産業労使全体で深く刻み、個々の働き方を考える前提条件としなくてはならない。したがって、労働時間短縮の狙いと異なる動き、例えば、労働時間短縮の名のもとに、職場から職場へ、企業を超えて、安易に業務がシフトする姿を見逃してはならない」などと強調した。
最終集計では「300人未満」の賃金改善額が1,313円と規模別で最も高い額に
一般経過報告では、2017年総合生活改善の取り組み総括が報告された。賃金に関する最終集計結果をみると、1,100ある集計単組のうち、賃金改善分の回答を受けたのは799組合で、改善額の単純平均は1,234円。改善分を獲得した単組の割合は72.6%で、前年(68.6%)を上回るとともに、改善額も前年(1,134円)を上回った。改善額を組合規模別にみると、「3,000人以上」が1,254円、「1,000~2,999人」が1,052円、「500~999人」が1,103円、「300~499人」が1,112円、「300人未満」が1,313円で、「300人未満」が最も高い額となった。
大会当日に会見した相原会長は「2017年は大変成果が上がった」と評価する一方、「(賃上げの)すそ野の拡がりでいえば道半ばだ」とコメント。来春闘に向け、大会のあいさつのなかで「2017年で踏み出した賃上げの『継続』と総合生活改善の構造『転換』に向けた歩みをより力強いものとするための取り組みについて検討を深めたい」と述べた。
運動方針は総合生活改善の取り組みについて、「『働き方の改善』と、賃金引き上げをはじめとした労働の質や付加価値の向上に基づく『労働諸条件の改善』、並びに、通年で取り組む付加価値の『WIN-WIN最適循環運動』の3つが連動した取り組みとすることで、自動車産業全体の自力の向上を図ると同時に、全体の底上げ・格差是正の前進・定着を推し進める」としている。
新会長に髙倉明副会長、新事務局長には全トヨタ労連から金子晃浩氏
役員改選では、会長、事務局長ともに交代となった。会長には髙倉副会長が就任し、事務局長には、全トヨタ労連事務局長を務めていた金子晃浩氏が就いた。5人いる副会長は、桑原敬行氏(全本田労連)、久重道正氏(全国マツダ労連)、鶴岡光行氏(全トヨタ労連)、郡司典好氏(日産労連)、八角慎一氏(三菱自動車ふそう労連)という顔ぶれとなった。