2年後の結成20周年に向けて組織基盤を強化/機械・金属産別JAMの定期大会

2017年9月6日 調査部

[労使]

機械、金属関連の中小労組を多く抱える産別労働組合、JAM(宮本礼一会長、約35万人)は8月31日から2日間、岐阜県岐阜市で定期大会を開催し、向こう2年間の新運動方針を決定するとともに、役員改選を行った。宮本会長が退任し、井関農機労組出身の安河内賢弘副会長が新会長に選ばれた。

最重要課題は地協活動を通じた単組の強化

JAMは1999年9月に、当時の金属機械とゼンキン連合が組織統合して誕生。2019年に結成20周年を迎えることもあり、「産業別労働組合としての新たな機能と体制づくり」、「職場活動の強化」や「組織の強化と拡大」など10項目の柱からなり、20周年に向けた運動の指標である『JAMのめざすべきもの』を2013年8月の定期大会で確認し、それ以来、この指標にもとづいた運動を展開している。ただ、組織拡大については、「50万人産業別組織をめざす」として、『アタック50』と称する組織化方針を4年前に策定したものの、この2年間での組織拡大実績は23組合、2,369人にとどまるなど、目標を大きく下回る状況が続いている。さらに、中小労組が多いだけに、組合員数の減少やそれを理由とした組合運営の困難さなどから解散・離脱組合も毎年発生しており(2016年度が計19組合、17年度が計29組合)、組織基盤の強化が喫緊の課題となっている。

昨年10月から今年2月にかけて実施した「第3回単組活動実態ヒアリング調査結果」(1,744単組について集約)では、定期大会を開催していない組合が103組合(5.9%)あり、JAMの機関紙を配布していない単組が23単組(33.3%)で3割以上に及ぶなど、規模の小さい組合を中心に、職場での活動がおろそかになっている一面も浮き彫りとなった。

今回決定した運動方針は、こうした現場における単組活動の停滞の現状などを踏まえ、組織に関する取り組みでは、地協活動を通じた単組の強化を最重要課題と位置付け、組織拡大と並行して取り組む考えを示した。具体的には、「組織活動の低下した単組を放置することなく、専従者や地協役員も協力しつつ、単組活動の強化・活性化をめざす」として、例えば、地方JAMの活動を具体的に推進する組織である地協会議(地区協幹事会)の開催回数を少なくとも年6回とし、年間日程として方針化する。地協会議への参加率が低い場合は、個別単組について参加できない原因を明らかにし、単組と協議しながら参加率の向上を図る、などを盛り込んだ。

地協会議への欠席が常態化している単組には、地協担当オルグだけでなく、地協役員などとも連携して、訪問活動などを通じて参加を呼びかける。オルガナイザーの力量向上に向けては、具体的・実践的な活動、経験を積み重ねることに加え、書記局OBやベテランの役員にも協力を仰ぎながら能力向上を図るなどとした。

運動方針の討議でも、現場活動の弱体化を危惧する声が聞かれた。JAM大阪は「規模の小さい組合ほど現場活動が弱体化している。(方針のなかで打ち出されている)ヒアリング調査結果に基づく活動の強化や地協役員とオルグが連携した地協・単組活動の強化については、もっと強い活動とすべき。オルグの育成では、現場のなかに入っていって、現場の悩みや弱音を聞いて、バックアップしていくところから進めないといけない。現場と手をたずさえる雰囲気が必要だ」と発言。JAM東京・千葉からは「組合の解散や脱退は、今日の労働運動の弱体化の表れだ。春闘でストライキや時間外拒否などを行っている組合もあり、そうした活動に学ぶことも必要なのではないか」といった提案があった。JAM京滋は、現場の状況はJAM大阪が発言したとおりだと述べ、今期以降は「本部が一枚岩となった活動をお願いする」と要望した。

春闘総括では「賃金水準を重視した相場形成に切り替えていく」

大会ではまた、2017年春季生活闘争総括を確認した。賃上げでは、300人未満の組合での妥結額が、300人以上の組合の妥結額を2年連続で上回る結果となった。総括は「今後の課題」について、賃金の格差是正に向けては、賃金実態と賃金構造の把握、同業種・地域の賃金水準との比較などのプロセスを取る一方、地方JAMにおける個別賃金の取り組みや単組のサポートの推進、個別賃金データの開示の拡大など取り組みの充実を図る必要があると整理した。

共闘体制の強化については、「単年度の上げ幅だけでなく賃金水準を重視した相場形成に切り替えていくことが必要」と主張し、共闘登録単組や地方リーディング単組の取り組みなど相場形成や地域共闘の体制強化について検討する必要があるなどと記述した。

大会の冒頭にあいさつした宮本会長は、「2018春季生活闘争では、『大手追従・大手準拠からの脱却』を継続させ、資本関係や取引関係による制約を受けず、中小労使が主体的に交渉できる環境を整備していく必要がさらに強まっている。そのうえで、賃金制度が整備されていないなど、賃金構造維持分が不明確で賃金データの把握が十分にできない組合に対する地方JAMによるオルグ強化や、地協単位での賃金学習会を開催するなどして、中小労組での労使交渉能力を高めていく」と強調した。

役員改選で新会長に副会長の安河内賢弘氏、新書記長にJAM大阪の中井寛哉氏

役員改選では、宮本会長(本部)、河野書記長(本部)がともに退任し、井関農機労組委員長、JAM四国委員長とJAM本部副会長を兼務していた安河内氏が今季から本部専従となって新会長に就任した。書記長には、JAM大阪の中井寛哉氏が就いた(今季から本部専従)。中央執行委員の女性枠は前期まで4人だったが、今季から7人に拡大した。

大会ではこのほか、組織内の第25回参議院議員選挙立候補予定者を報告するとともに、改正が予定される労働基準法に反対する特別決議などを行った。