有期雇用社員を含めた「サポート手当」創設など労働条件改善を評価/NTT労組定期大会

2017年7月14日 調査部

[労使]

NTT東西やドコモ、データなど、NTTグループ企業の約270労組で構成するNTT労働組合(野田三七生委員長、約17万人)は11、12の両日、都内で第20回定期大会を開催した。1年間の活動を振り返る一般経過報告では、2017春季生活闘争について、主要8社で正社員の月例賃金改善を獲得するとともに、有期雇用の社員も支給対象に含めた4月からの「サポート手当」の創設を労使合意したこともあり、「到達点トータルで評価できる」と総括した。役員改選を行い、新委員長に喜井広明氏(西日本本部)を選んだ。

春闘結果は「月例賃金および特別手当等トータルで妥結・決着に値する内容」

2017春季生活闘争では、グループ各社に対して、①有期雇用者②60歳超え雇用者③正社員――の雇用形態にかかわらず同額の4,000円(平均)の月例賃金改善を要求した。交渉経過を振り返ると、連合がヤマ場に設定した3月15日の前週である10日に行われた中央本部と各企業本部による統一交渉では、正社員の月例賃金については会社側から改善の意思を引き出したものの(最終的に1,400円の回答)、60歳超え雇用者と有期雇用者の賃金改善について会社側は「すでに役割や働き方に応じた処遇を整備している」と主張。また、春闘前段に、正社員だけに支給されていた食事手当を廃止し、有期雇用と60歳超え雇用も対象に含めた「サポート手当」(月額一律3,500円)を4月から創設することで労使合意していたことから、「実質的賃金改善を行った」として「一律的改善要求等には応じられない」と主張し、交渉は難航した。

局面の打開を図るため、NTT労組は13日終業時から、全組織・全職場での「一斉時間外労働拒否闘争」を展開。その結果、60歳超え雇用者(月給制)では「対象者一人あたり950円」の賃金改善を引き出すとともに、特別手当(一時金)において昨年実績を上回る回答を引き出したことなどから、「月例賃金および特別手当等トータルで妥結・決着に値する内容を引き出し得た」と判断して妥結・決着を決断した。なお、有期雇用については月例賃金の改善は獲得できなかった。

時給制雇用組合員を中心に処遇改善につながっていない点も指摘

経過報告を行った平田雅則・事務局長は、こうした結果について「一部の雇用形態で要求の獲得に至らなかったが、月例賃金改善、特別手当および制度改善として有期雇用・60歳超え雇用を含めたサポート手当の創設等、到達点トータルで評価できるものと認識する」と述べるとともに、正社員では2年連続で賃金項目の1つである「資格賃金」の改定につながったことから、「特別手当への反映も含めた生涯賃金に大きく影響するものであり、評価できる」と総括。有期雇用に対する結果については、「最終局面において、会社が主張した制度改善として創設したサポート手当の3,500円を実質的な処遇改善としてトータルで受け止め、判断したもの」と説明した。

今後の検討課題として平田事務局長は、サポート手当の創設を含めて決着したものの、処遇改善につながらなかった組合員が約8,000人いると明かし、時給制雇用を中心に処遇改善に至っていないことを「組織的検討課題として受け止める」と述べた。

大会の冒頭であいさつした野田委員長は、月例賃金の改善に取り組んだ2014年からの春闘を振り返り、「逐年での月例賃金の改善を含む労働条件の改善が図られてきたことについては評価したい」と述べるとともに、各年の決着内容について「原要求との間でかい離が存在することはその通りだが、『基準内賃金の改善』を含む月例賃金の改善や、好調な業績を踏まえた特別手当の上積み決着など、NTT労使が置かれた状況のなかでギリギリの交渉を積み重ねた上での『評価に値する決着内容』だった」と話した。

NTTグループで「正社員化を含む無期雇用者」の拡大数が1万3,000人超

一般経過報告ではこのほか、NTTグループにおける有期雇用から正社員への登用者が、2014年度以降、毎年2,000人前後で推移し、NTTグループトータルでは正社員化を含む無期雇用者の拡大数が2017年4月時点で1万3,000人を超えているとの報告があった。NTT労組では、昨年2月の中央委員会で、雇用の原則は「期間の定めのない直接雇用を基本」とする政策を組織決定している。

新設されたサポート手当がフルタイム以外の社員を対象としていないことへの対応については、「政府レベルでの同一労働同一賃金の論議動向等を見据えた対応が必要と認識している」として、引き続き各企業本部と連携して対応していくと報告した。

向こう2年間の運動方針を決定/喜井広明氏(NTT西日本)を新委員長に選出

大会では、向こう2年間の運動方針である「2017~2018年中期運動方針」を決定した。IoT/ビッグデータ・AI時代を展望したNTTグループ事業運営への対応などを重点に据えた。運動方針に関する討議では、NTTグループ関連工事での死亡事故が昨年の大会以降で5件発生するなど、重大事故が増加する状況にあることから、災害の未然防止に向けた対応を求める意見(持株本部)などが出された。

役員改選を行い、西日本本部執行委員長だった喜井広明氏が委員長に選ばれ、副委員長に本部中央執行委員だった安藤京一氏(東日本本部)が就いた。平田事務局長(ドコモ本部)は再任された。