「多くの300人未満の中小労組が2年連続で大手を上回る妥結額」/JAMの春闘中間総括

2017年5月31日 調査部

[労使]

金属、機械関連の中小労組を多く抱える産別労働組合、JAM(宮本礼一会長、35万人)は26日、都内で中央委員会を開き、今春闘の中間総括を確認した。総括では、中小労組の賃金改善額が全体平均を上回った点や、個別賃金水準の開示が飛躍的に進んだ点などを前向きに評価した。

300人未満組合の賃金改善分獲得額は1,367円で全体平均額を上回る

中間総括によると、今春闘の交渉単位数は1,563組合で、直近の集計では、その76.3%にあたる1,192組合が要求を提出。このうち回答を受けた、または妥結した組合は、交渉単位数の65.4%にあたる1,022組合となっている。

賃金構造維持分を明示できる805組合のうち、賃金改善分を要求したのは726組合。改善分の要求平均額は4,185円で、昨年平均(4,529円)を下回った。

交渉の結果、賃金改善分を獲得した473組合の賃金改善分の平均額は1,303円となっており、昨年平均(1,385円)は下回ったものの、1,300円台は維持した。規模別にみると、JAMが中小労組として位置付けている300人未満の組合(346組合)では、改善分の平均回答額が1,367円で、全体平均額を上回った。なお、100人未満の組合(192組合)をみても、平均額は1,415円で全体平均を上回っている。

賃金改善分の平均回答額の今春闘の推移をみると、300人未満の組合が300人以上の組合の水準を上回って推移してきたことが特徴で、中央委員会で中間総括案を提案した安河内賢弘・副会長(労働政策委員長)は「300人未満の組合が本当に粘り強く交渉した結果だ」とコメントした。

一方、平均賃上げでの集計結果でみても中小労組の健闘ぶりがあらわれており、妥結額の同一単組での前年比をみると、全体計は71円増(妥結額は5,030円)となっているのに対し、300人未満は114円増(妥結額は4,824円)と全体計よりも増加幅が大きくなっている。

個別賃金の水準を開示できる組合数、昨年を「飛躍的に」上回る

また、今次闘争から個別賃金要求への移行を本格的に開始したが、結果的に、個別賃金の水準を開示できる組合数(30歳ポイント、35歳ポイントとも)が、現行水準、要求水準、回答・確定水準のいずれについても昨年を「飛躍的に」上回り、かつ2001年以降で最多となった。具体的には、30歳現行水準を開示できる組合数が518(昨年最終集計:379)、30歳要求水準が278(同:182)、30歳確定水準が157(同:126)、35歳現行水準が509(同:363)、35歳要求水準が265(同:172)、35歳確定水準が151(同:116)。

ただ、その一方で、個別賃金水準の状況をみると、30歳ではJAMが「一人前ミニマム」と設定している24万円に到達していない組合が全体で62.7%、300人未満では74.7%にのぼっており、水準の面では課題が残る状況となっている。

全体的に賃上げ要求が復活した2014年から2017年までの4年間の賃金改善の状況をみると、4年とも賃金構造維持分を明示し、データがすべて揃う518組合での平均賃金改善獲得回数は2.8回で、4年間で一度も改善分を獲得できない組合は43組合あった。

中間総括は、こうした結果から、賃金改善については「物価上昇のない中、賃金改善額は前年に及ばなかったものの、賃金改善の流れを継続することができた」と評価。そのうえで、中小企業が賃上げしやすい環境をつくるための公正な取引の実現など「価値を認め合う社会の実現に向けた環境整備」に関しては、「単組から使用者への要請、省庁、業界団体への要請を実施した。他産別、政府などの取り組みもあり、いまだ不十分ではあるが社会的な環境整備は進んでいる」と総括した。

中央委員会であいさつした宮本会長は、今春闘について、「多くの300人未満の中小労組が、2年連続で大手を上回る妥結額を獲得するなど、全体的に健闘した」と評価する一方、「大手と中小の間では賃金構造分を含めた水準の差はいまだ大きく、今次春闘の流れを2018年以降の春季生活闘争につなげていくことが重要だ」と述べ、格差是正の取り組みを来年以降も継続していくことの必要性を強調した。