中小の賃上げ回答額が大手を上回る/金属労協集計

2017年4月5日 調査部

[労使]

自動車総連、電機連合、JAM、基幹労連、全電線の5産別労組でつくる金属労協(JCM、相原康伸議長、約201万人)は4日、3月末までの賃上げ集計結果を公表するとともに、本部で各産別のトップが会見した。2014年から復活したベア春闘で初めて、中小の賃上げ回答額が大手を上回った。

「中堅・中小労組の健闘が光る」(相原議長)

JCMがまとめた3月31日現在の集計によると、賃金要求を提出したのは2,634組合で、そのうち、ベアや賃金改善などの賃上げを要求したのは2,102組合となっている。賃上げ要求額の平均は3,636円で、前年同期比91円増とほぼ前年並みだった。

要求提出組合のうち、回答を引き出しているのは1,370組合で、そのうち1,184組合が、定期昇給相当分の賃金構造維持分を確保。そのうち賃上げを獲得したのは850組合で、回答引き出し組合に占める割合は62.0%とほぼ前年並みだった(前年同時期は64.1%)。

回答額の平均は1,195円で、前年同時期の1,249円を若干下回った。組合規模別にみると、1,000人以上が1,126円、300~999人が1,107円、299人以下が1,268円となっており、2014年以降ではじめて、300人未満の組合が1,000人以上の大手組合の回答額を上回る結果となった。

こうした回答状況をうけ、JCMはこの日開いた第7回戦術委員会で、「中小労組の賃上げ額が大手労組を上回ることにより、規模間の賃金格差是正の流れにつながることが期待される」などとする確認事項をまとめた。JCM議長の立場としてコメントした相原康伸・自動車総連会長は「中堅・中小労組の健闘が光る」などと述べた。

自動車、賃金改善分の平均は1,195円で前年比93円増

それぞれの産別トップが、3月末時点での回答状況について報告・コメントした。自動車総連の相原会長は、総連内でも中堅・中小組合が引き出した賃上げ額が大手を超える水準で交渉が進んでいると報告。「人手不足や、各労組が自らが抱えるそれぞれの賃金課題に真正面から取り組んだ成果だ」と強調した。

なお、自動車総連は同日、JCMの会見後に本部(都内)でも会見を開き、4日午前9時現在の回答状況を発表した。それによると、集計対象となる1,101組合のうち、1,088組合が賃金改善分を要求し、527組合で解決している。冨田珠代・副事務局長によると、前年同時期の解決組合が508組合だったことから、「昨年より解決のスピードは速い」としている。賃金改善分の回答を受けたのは440組合で、改善分の平均は1,195円。前年同時期と比べると93円増となっており、解決組合に占める改善分獲得組合の割合も83.5%と前年同時期(81.3%)を上回った。

賃金改善分の回答額の平均を業種別にみると、完成車メーカー(13組合)は1,223円、車体・部品(269組合)が949円、販売(112組合)が1,741円、輸送(9組合)が1,209円、一般(37組合)が1,319円となっている。

規模別にみると、3,000人以上(32組合)が1,253円、1,000~2,999人(51組合)が1,054円、500~999人(75組合)が1,115組合、300~499人(71組合)が1,120円、300人未満(211組合)が1,274円で、300人未満の回答額が最も高くなっている。また、前年最終実績を100円以上上回っているのは、300~499人と300人未満だけとなっている。総連での会見で相原会長はあらためて、「中小の頑張りが光る結果であり、評価したい」と前向きにコメントした。

JAMで中小が大手を上回り、電機、基幹、全電線も回答状況を評価

電機連合の野中孝泰委員長は、個別加盟単組だけでなく、大手のグループ組織に属する単組も含む570組合のうち、401組合が4月3日時点で要求提出を終えており、358組合で集約したと報告。賃金水準の改善を獲得したのはうち301組合で、中闘組合が統一要求の基準とした「開発設計職基幹労働者」(30歳相当)で水準改善を獲得した224組合の平均額が1,010円となっていることから(中闘組合は1,000円で妥結)、「賃上げのすそ野が広がった」と評価した。

JAMの宮本礼一会長は、3月30日現在で、1,563単位組合のうち71.4%にあたる1,116組合で要求提出しており、回答を受けた、または妥結した組合が675組合で、妥結組合は480組合だと報告。ベア分を峻別できる組合で、ベアを獲得したのは313組合で、平均額は1,252円となっていると述べた。回答額の平均を規模別にみると、1,000円以上が1,027円、300人未満が1,326円、100人未満が1,343円と中小が大手を上回る結果となっており、100人未満で2,000円以上のベアを獲得した組合が65組織あると報告した。現時点の回答状況について宮本会長は「ここまではしっかり闘っており、評価したい」とし、中小が大手を上回る賃金改善を要求していく力強さを今後も継続させていきたいと強調した。

基幹労連の工藤智司委員長は、3月30日時点で、303単位組合のうち287組合が要求提出しており、180組合が回答を受けていると報告した。多くが有額回答をうけており、「先行組合の回答も追い風にして、水準は1,000円が中心になっている」と述べた。4月以降も、本部、県本部、総合組合の委員長が業種別組合の交渉のサポートにあたる。

全電線の岩本潮委員長は、要求した34組合のすべてが個別賃上げまたは平均賃上げを求め、3月24日までにすべてで終結したと報告。23組合が賃上げを獲得したという。賃上げ額を規模別にみると、1,000人以上が1,167円、299人以下が747円と中小が大手を下回ったものの、2014年以降で初めて賃上げを獲得した組合が299人以下で2組織あり、「継続した賃上げの取り組みの重みを再認識した」と述べた。