大手自動車メーカー労組、3,000円の改善要求で足並み揃える/自動車総連の要求動向

2017年2月17日 調査部

[労使]

自動車総連(相原康伸会長、約77万人)に加盟する大手自動車メーカーの11労組は15日、今季の賃上げ交渉に向けた要求書を会社側に一斉に提出した。トヨタ労組をはじめ、すべての労組が前年と同水準の3,000円の賃金改善を求めた。一時金では、トヨタ労組(年間6.3カ月)や日産労組(同6.0カ月)など、4つのメーカー労組で6カ月台の要求となっている。

この日に一斉に要求書を提出したのは自動車総連の「拡大戦術会議登録組合」。トヨタや日産など大手自動車メーカーの11労組と、部品メーカー労組が集まる部品労連を代表する1労組の計12労組で構成し、部品労連からは昨年に引き続き、日本特殊陶業労組が登録された。交渉の牽引役が期待される拡大戦術会議登録組合は、要求提出日、交渉日(毎週水曜日)、回答日を揃えて会社側との交渉に臨む。今年は、金属労協が設定した集中回答日である3月15日(水曜日)の午前中に回答引き出しを目指す。

ほとんどの組合がメーカー労組と同等かそれ以上の賃金改善要求

各登録組合の要求内容をみると、賃金引き上げでは、平均賃上げ方式でトヨタが「1万300円(内、賃金制度維持分7,300円)」、日産が「平均賃金改定原資(9,000円)」、本田技研が「3,000円」(賃上げ分のみの表示)、マツダが「賃金改善分3,000円」、三菱自工が「賃金改善分3,000円」など、表記の仕方は労組によって異なるものの、12の登録組合すべてが自動車総連の産別要求基準に基づき前年と同じ3,000円の賃金改善を要求した。

なお、昨年の賃上げ交渉では、大手自動車メーカー労組と同等かそれ以上の賃金改善を要求した組合は、全加盟組合(約1,100組合)のうち約95%で、メーカー労組を超える要求をした組合が約24%あった。相原会長によると、今年は100%近い組合がメーカー労組と同等かそれ以上の賃金改善を要求し、メーカーを超える要求を行う組合も「少なくとも昨年並み」となる見込みだという。

主要組合の一時金要求月数は平均5.88カ月、昨年を0.20カ月下回る

一時金(年間)の要求内容をみると、昨年は7.1カ月を要求したトヨタ労組は6.3カ月と0.8カ月分少ない要求月数となった。日産労組は昨年要求より0.1カ月多い6.0カ月を求め、本田労組も「5.0+0.9カ月」と、0.1カ月分昨年の要求月数を上回った。

トヨタ、日産労組のほかに6カ月台の要求となったのは、富士重工労組(5.0+1.0+0.2カ月)、いすゞ労組(5.0+1.0カ月)と日本特殊陶業労組(6.5カ月)。12組合の要求月数を平均にすると5.88カ月で、昨年の6.08カ月を0.20カ月下回った。大手メーカー11労組だけで要求月数を平均すると5.82カ月となっている。

すべての登録組合が非正規労働者の処遇改善要求を掲げる

今年は非正規労働者の処遇改善も取り組みの柱となっており、自動車総連は賃上げの産別要求基準のなかで、昨年に続き「直接雇用の非正規労働者の賃金についても、原則として賃金改善分を設定する」と定めた。これを受け、登録組合のすべてが、期間従業員、パートタイム労働者、定年後の再雇用者について何らかの処遇改善要求を掲げている。

トヨタ労組では、定年後再雇用者であるスキルド・パートナー会員とパートタイマー会員について、「一般組合員の交渉結果に連動した賃金を要求する」とし、期間従業員の組合員であるシニア期間従業員会員については「現行の日給を150円引き上げる」ことを要求した。スキルド・パートナー会員とパートタイマー会員については一時金についても一般組合員の結果に連動した一時金を求めていく。日産労組、本田労組も再雇用者について、一般組合員に準じた年収改善(日産労組)・賃上げ(本田労組)を求める。本田労組では、組織化していない直接雇用の非正規労働者に対しても賃上げなどの検討を行うよう、労使議論の場を通じて会社に要望する。

15日に会見した相原会長は「経済をプラスサイドに置き続けることの必要性を日本全体で確認しあえるか否か、社会、労使全体で認め合うことができるか。また、中堅・中小が伸び伸びと要求を掲げ、着実に成果を勝ち取ることができるか。さらには、非正規労働者、ともに職場で働く仲間に向けて、働きに見合った処遇の改革ができるか。たいへん大きな課題を抱えている。挑戦的な課題も少なくないが、自動車総連の総力をあげて取り組みたい」と交渉の本格化に受けて抱負を語った。