2017春季交渉が実質スタート/連合と経団連の懇談会

2017年2月3日 調査部

[労使]

連合(神津里季生会長)と経団連(榊原定征会長)は2日朝、都内でトップによる懇談会を開き、2017年の春季労使交渉が実質的にスタートした。経団連の榊原会長は「経済の好循環をしっかり回す観点から、これまで3年間続いてきた賃上げのモメンタムをしっかり継続していく」などと主張。これに対し、連合の神津会長は「世の中全体の波及効果や購買力の底上げにどう響くかを考えた場合、月例賃金の引き上げが極めて重要だ」などと述べ、月例賃金の引き上げにこだわる考えを改めて強調した。今後、3月15日の大手集中回答日に向けて労使交渉が本格化する。

3年間続いてきた賃上げのモメンタムを継続していく/榊原会長

冒頭、榊原会長はあいさつで、2017年春季労使交渉・協議での基本方針として、「賃金については、経済の好循環をしっかり回す観点から、これまで3年間続いてきた賃上げのモメンタムをしっかり継続していく」ことを表明。そのうえで、「具体的には収益が拡大した企業や、中期的なトレンドとして収益が改善した企業に対して、昨年に続いて年収ベースでの賃金引き上げに前向きな対応を求める」と述べ、定期昇給や賞与・一時金の増額、諸手当の見直し等も含めた年収ベースで検討する考えを強調した。

その一方で、「過去3年連続して高い水準の賃金引き上げがあったなかで、個人消費が上向いていない状況が続いている」と指摘。その背景に国民の間に将来不安や節約志向の考え方が根強く残っていることがあるとして、「政府、民間がそれぞれのなかで、しっかり対応していくことが大事だ」と訴えた。

物価が上がってなくても必要な賃上げの広がり/神津会長

これに対し、神津会長は、「賃上げのモメンタムを継続していくことについては、課題認識を共有していきたい」としたうえで、「だからこそ、リーダー的存在の各労使が、それをどのような形に表していけるかが問われている」と主張。「世の中全体の波及効果や購買力の底上げにどう響くかを考えた場合、月例賃金の引き上げが極めて重要だ」と述べ、あくまで月例賃金にこだわった交渉を進める姿勢を強調した。

さらに、神津会長は、春季労使交渉の重要性にも言及。「わが国は、ヨーロッパの先進諸国のような労働条約の拡大適用のような仕組みを持たず、実質的に春闘にその代替効果が求められている。だが、この約20年のデフレ局面において、その機能が働かず、格差の拡大が著しいものになってしまった」との認識を示したうえで、「ここ数年の交渉では、これをどう克服するかが問われている」と主張した。

さらに、「デフレ脱却局面の取り組みとして、これが成功すれば春闘の歴史上、初めてのこと。例え足下の物価が上がっていなくても、賃金を上げるべきだということが全体に広がらなくてはならない」と強調。「本当の意味でそれを実現できるのは労使関係だ」として、「労使のいい意味での緊張感と、それを基にしたバネ力、そのことがベースになる生産性向上が正のサイクルとして不可欠」との見解を示した。

両トップとも長時間労働の是正と同一労働同一賃金の重要性に言及

また、あいさつでは両会長とも「働き方改革」に言及。榊原会長は、「長時間労働の是正と、同一労働同一賃金の実現の2つのテーマがある」としたうえで、長時間労働の是正について、「(1日に開かれた)政府の『働き方改革実現会議』で、(36協定の特別条に)何らかの上限(規制)を付けることについてはコンセンサスを得た」ことに触れ、今後は「特殊な業種や繁忙期の対応についてしっかり議論していきたい」とした。また、同一労働同一賃金については、昨年12月に政府が発表したガイドライン案をベースに、各界の意見を聞き取りながら、労働法制の見直し等に対応していく考えを示した。

一方、神津会長は、「『働き方改革実現会議』で取り扱うテーマは多岐に渡っているが、なかでも長時間労働の是正と、同一労働同一賃金という形で言われているものが大きい」と指摘。今後、同会議の報告がまとめられ、それを受けて法改正等の作業が進められる流れにあることを踏まえ、「法律になれば問題が解決するというわけではない。個別労使間で労働協約や労使協定により、職場の中のワークルールとして形成され、順守されていかねばならない」と訴えた。

意見交換では公正取引、労働時間規制、若年人材などを議論

それぞれの副会長などを交えた意見交換では、連合側が連合白書、経団連側は経営労働政策特別委員会報告のポイントを説明。その後の自由討議では、公正取引の実現や労働時間規制のあり方、若年人材の確保・定着などの諸問題について意見交換した。