臨時、非常勤の処遇改善進める/自治労の春闘方針決定

2017年2月1日 調査部

[労使]

地方自治体の職員などを組織する自治労(川本淳委員長、約80万人)は1月26、27の両日、都内で中央委員会を開催し、「2017自治労春闘方針」を決定した。公務員賃金について、給与制度見直しによって過去に引き下げられた賃金水準の引き下げ分も考慮に入れ、4%程度の賃上げを目指す。自治体に勤務する臨時・非常勤等職員の雇用安定や処遇向上に取り組むことも柱としている。

年齢ポイントを勘案しつつ4%程度の賃上げを目指す

春闘方針は、 ① 公務員賃金の改善、 ② 地方財政の確立、 ③ よりよい地域医療・福祉にむけた春闘の取り組み、④格差是正と公正なワークルールを確立する取り組み――の4項目を重点課題に設定した。

重点課題ごとに具体的な取り組み内容をみると、【公務員賃金の改善】では、賃金や労働条件について労使で自主決着することなどを求める「労使関係ルールに関する基本要求書」の全単組での提出を徹底。そのうえで、賃金の到達目標を示した本部作成の「自治体単組の要求モデル」を参考に、各単組が到達すべき賃金にむけた独自の要求基準を設定し、要求書を提出する。

要求モデルでは、30歳、35歳、40歳の3つの年齢ポイントで具体的な額を設定。30歳を24万3,599円、35歳を29万5,740円、40歳を34万5,348円とした。方針によると、これらの額は「2006年地域給与・給与制度見直しによって引き下げられた4.8%と2010年の独自カット全国平均1.2%を足した6.0%の回復に必要な数値を、2015年度賃金実態調査における実在者中央値に応じて算出」したものだという。

3つの年齢ポイントにおける賃金の到達状況を勘案しながら、今次闘争では「少なくとも2015年給与制度の総合的見直しにより生じたマイナス2%の回復分に加え、連合の掲げる『底上げ・底支え』『格差是正』分の2%程度を加えた4%程度の賃上げをめざす」としている。なお、2015年の総合的見直しでは、国家公務員の給与について、本給を一律2%削減すると同時に、地域手当の支給率が地域ごとに見直された(引き上げおよび引き下げ)。この影響をうけ、多くの地方自治体で、職員の賃金総額が引き下げられる結果となった。

地方財政、地域医療・福祉などの政策制度要求を掲げる

【地方財政の確立】では、交付税算定に行政効率の高い自治体をモデルとして単位費用に反映させる、いわゆる「トップランナー方式」について、「計上されている業務が、いかようにも委託すべき業務と見せている」「そもそも、地方交付税をこのような行革の手段として利用すべきではない」と主張し、廃止に向けて取り組みを強めるとした。

【よりよい地域医療・福祉にむけた春闘の取り組み】では、医療・介護・福祉の現場でサービスの需要が急増しているにもかかわらず、従事する労働者の賃金が低い状況にあるとして、人材確保策と処遇改善に取り組む。具体的には、本部において政党・省庁への要請を実施。また、地域医療構想によって公立病院の統合や再編などが懸念されるとして、統合や再編等に関する情報を県本部や病院単組と共有することに努める。県本部・単組は自治体などに対して、安心できる地域医療・福祉を確保することを目的とした要求書を提出する。

臨時、非常勤の抜本的な制度改善を求める

【格差是正と公正なワークルールを確立する取り組み】では、自治体に勤務する臨時・非常勤等職員の雇用や処遇について取り組むことなどが柱。臨時・非常勤等職員については、昨年12月、総務省が「地方公務員の臨時・非常勤職員及び任期付き職員の任用等の在り方に関する研究会」の報告書をとりまとめた。地方公務員の臨時・非常勤等職員は、地方財政が厳しい状況にあるなか、教育や子育ての行政需要が増えていることを背景に職員数が増加傾向にある。報告によると、「特別職非常勤職員」(22万人)、「臨時的任用職員」(26万人)、「一般職非常勤職員」(17万人)の3つのタイプの職員がおり、総職員数は60万人を超える。

「特別職非常勤職員」はもともと、特定の学識・経験を必要とする職に、それらを有する者が非専従的に参画することが想定されており、労働者性が低いことが想定されたこともあって地方公務員法の適用から除外されている。しかし、近年は単なる事務補助員も同形態で任用されることがあるという。「臨時的任用職員」は本来、緊急やむを得ない事情がある場合に特例的に任用されており、任用が濫用されることは想定されていない。しかし現状では、3つのタイプのなかで最も多い職員の種類となっている。「一般職非常勤職員」は、特別職と違い、労働者性の高い職員であるが、民間で同一労働同一賃金が議論されているなか、ボーナスに相当する期末手当などの手当の支給ができないことになっている。また、採用方法などが明確に定められていないために、3つのタイプのなかで任用が最も進んでいない。

こうした課題を踏まえ総務省の報告は、 ① 「特別職非常勤職員」については「専門性の高い者等(委員・顧問等)に限定すべき ② 「臨時的任用職員」は国の場合と同様に、任用の目的を「常勤職員(フルタイム)の代替」に限定する ③ 「一般職非常勤職員」は採用方法などを明確化し、労働者性の高い非常勤職員は一般職非常勤職員とし任用すべき――と提言。また、一般職非常勤職員について期末手当などの手当が支給できる制度に見直すことを求めた。

これに対し自治労は、報告書の内容について「賃金水準や休暇等の労働条件の改善につながる」という点では評価するものの、臨時・非常勤職員の任期が従来どおり最長1年となっていることなど、雇用安定の観点からは「不満の残る内容」と評価している。

自治労が、加盟単組がある自治体の臨時・非常勤等職員に対してアンケート調査を実施したところ、多くの職員が、年間賃金が200万円程度で、昇給制度がない自治体が7~8割を占めるという。自治労では今後、独自の研究会を設置して報告書をまとめ、自治労としての考え方を整理する予定。また、賃金面など抜本的な制度改善に向けて、国会・政府・世論対策を実施する。

民間のヤマ場に合わせて闘争日程を設定

闘争全体の進め方については、民間のヤマ場に合わせて、自治労も3月13~17日を統一交渉ゾーンとして当局回答を迫るとしている。ストライキ批准投票を全単組が実施し、一波につき2時間を上限とするストライキを含む闘争指令権を中央闘争委員会に委譲する。要求提出ゾーンは2月8~15日で、3月17日に全単組による全国統一行動を展開する。

中央委員会では、一般経過報告の討議で、地方組織から「賃金水準の回復に向けた具体的な取り組みの実行が必要」(大分)、「2016年度の人事院勧告に沿って引き下げられた扶養手当についても、水準を回復させる取り組みが必要」(鹿児島)などの意見が出た。