個別賃金方式で35歳標準労働者30万5,000円の要求水準を決定/JAM中央委員会

2017年1月25日 調査部

[労使]

金属、機械関連の中小労組を多く抱えるJAM(宮本礼一会長、約36万人)は20日、都内で中央委員会を開き、個別賃金要求方式への移行を前面に掲げる2017年春季生活闘争方針を決定した。全単組が到達すべき水準である到達基準として、高卒直入者の所定内賃金で30歳は26万円、35歳は30万5,000円と設定した。個別方式への移行を進めることで、大手との賃金格差の是正に従来以上に力を注ぐ構えだ。

大手に比べ賃金水準が低い中小の格差是正を図る

JAMでは構成単組の8割以上を300人未満の中小労組が占めている。大手に比べ賃金水準が低い中小が大手との格差を是正し、賃金水準の底上げを図っていくには、大手の賃上げ額を参考にする賃金交渉を展開するだけでなく、自社の組合員の実際の賃金水準や賃金カーブの状況を把握したうえで、その課題を指摘しながら賃金の絶対水準の引き上げの必要性を経営側に迫っていくことが有効とされる。

方針は今回の闘争の基本的なスタンスとして、「『賃金の底上げ・底支え』、『格差是正』の取り組みを継続し、すべての単組が月例賃金の引き上げを中心とした『人への投資』の取り組みを行う。とりわけ、ひっ迫した雇用情勢により、人材の採用難となっている中堅、中小企業は、企業と産業の持続性の観点から中期的な賃金政策を持って賃金水準の引き上げを行う」と強調している。

「賃上げ原資の配分春闘」ではなく「賃上げ原資を産み出す春闘」への転換を(宮本会長)

あいさつした宮本会長は、「JAMの2017年春季生活闘争の基本は、企業規模や性別・雇用形態などに関係なく、すべての労働者の賃金水準を、労働の価値にふさわしい社会的水準に到達させる取り組みだ。社会的な賃金水準に比べて、不合理な賃金格差が生じていたり、個々の賃金水準が社会的に低すぎるのであれば、産業別労働組合の責任において、その是正に全力を傾注しなければならない。そのためには、すべての単組が賃金制度を確立したうえで、労使が個々の賃金情報をもとに、賃金カーブの高さや歪みについて、団体交渉の場でお互いの考えをぶつけ合い、労使相互に納得性の高い結果を導き出す努力が求められる」と、個別賃金要求方式の下での労使交渉の重要性を強調した。

また、「2017年春季生活闘争は、これまでのような『賃上げ原資の配分春闘』ではなく、『賃上げ原資を産み出す春闘』へと転換させていく。そのためには『サプライチェーン全体での付加価値の適正配分』を産業界全体で確立することによって、『価値を認め合う社会』へ転換させていかなければならない」と述べて、公正取引ルール確立の取り組みの重要性も訴えた。

個別賃金の要求基準は「到達水準」と「目標水準」の二本立て

具体的な要求基準は、平均方式を基本としていた2016闘争までと違い、最初に個別賃金での要求基準を示し、その後に平均方式での要求基準を記述している。個別賃金の要求基準では、まず、所定内賃金で18歳:15万9,000円、20歳:17万2,500円、25歳:20万6,250円、30歳:24万円、35歳:27万円、40歳:29万5,000円、45歳:31万5,000円、50歳:33万5,000円とする「JAM一人前ミニマム基準」を設定。このミニマム基準を、最低限クリアすべき水準に設定し、地方JAM・地域において当面の目標を設定する。

標準労働者の要求基準としては、全単組がクリアすべき水準である「到達基準」と、到達基準をクリアしている単組が目標とすべき水準である「目標基準」を示した。それぞれ、高卒直入者の所定内賃金における30歳と35歳で具体額を設定し、「到達基準」が30歳:26万円、35歳:30万5,000円、「目標基準」が30歳:28万円、35歳:32万円となっている。目標水準にすでに達している組合は、金属労協が掲げる目標基準(基本賃金で33万8,000円以上)の到達を目指す。

中途採用者や無期転換された有期雇用労働者の採用時の最低賃金規制も設ける意味で、「年齢別最低賃金基準」を新設した。35歳まで、「JAM一人前ミニマム基準」の各年齢ポイントの水準の80%を原則とするとし、具体的な水準は、18歳:15万9,000円、25歳:16万5,000円、30歳:19万2,000円、35歳:21万6,000円。各単組で、これらの金額での協定化を目指す。

一方、個別賃金要求方式に移行するとはいえ、実際にはまだ、平均方式でしか、賃上げ要求を組み立てることができない単組も少なくないと想定。平均方式での要求基準について方針は、「連合中小共闘の賃金引き上げ目安を踏まえ、未組織労働者も含めた春闘相場の波及を目指し、平均賃上げ要求基準をJAMの賃金構造維持分平均4,500円に6,000円を加え、1万500円以上とする」とした。

一時金の要求は年間5カ月(または半期2.5カ月)基準

このほかの項目では、企業内最低賃金協定について、18歳以上の企業内最賃協定の未締結単組はその協定化を目指す。地賃等法定最賃との差が50円に満たない協定額となっている単組では、ただちに協定額の引き上げを要求する。

一時金要求は、「年間5カ月基準または半期2.5カ月基準」とし、最低到達基準は「年間4カ月または半期2カ月」とした。ワークバランスに関する取り組みでは、所定労働時間の短縮のほか、インターバル規制の導入にも取り組む。

闘争日程は、統一要求日を2月21日とし、全単組が回答の引き出しに全力をあげる統一回答指定日は、3月14、15の両日とした。共闘体制を強化するため、2017闘争では「地方JAMリーディング単組」として、① 統一要求日に提出できる ② 要求内容がJAM方針に準拠している ③3月内決着できる――の要件を満たし、地方での相場の牽引役となる単組(各地方で5~20程度)を各地方JAMで選んでもらう。地方JAMリーディング単組の高い回答水準を3月末に開示して、4月以降の各地方での交渉につなげる。

政策課題の柱である公正取引ルールの確立に向けては、各単組が経営側に対し、自社の製品価格を適正価格とするよう、価格引き上げの申し入れを取引先に対して行うことを経営者に要請する。